アデル・ハードの忠告
アデルの忠告とはなんなのでしょうか?
では、どうぞ。
どうすれば坊ちゃんを守ることができるのか私はひたすら考えて考えて
考えて続けた・・でも日々だけは過ぎていく
過ぎ行く日常はすでにその日が来てしまうのが怖くて仕方が無かった
私の絶望感はどこまでも続いた
どうすれば、あの子を守ることができるのか
その時・・何かが私の頭の中に囁いた
”たった一つだけの賭け”を。
迷い続けていた・・それには重大な賭けになることを。
そして、その賭けの前に出会ったのだ
この世でもっとも素晴らしい人間
学者でありながらも謎に含まれていた
彼女に・・。
****
「私がここにいる過程はおそらくキトウや坊っちゃんの経緯で
恐らく分かっているでしょ?」
そう、この人はカズラという謎の少年に殺害されたのだ
「そうなる以前から私はあることをずっと調べていたのです」
「あること・・?」
「はい。坊ちゃんのその体質です。どうしても坊っちゃんには
その体質を失くす・・というわけにもいきませんが、抑える方法
はないかと私は私なりに調べた結果・・恐ろしいことが分かったのです」
ゴクリっと俺は唾を飲み込んだ
アデルは、キトウさんが言うにはかなり優秀な人物だったというのを
話では聞いていた
「坊ちゃんの先代・・それは、初代のことです。
彼は・・昔、”時”を使ってある神を封じ込めたのです。」
初代・・これは前に話はあったけど
詳しいことが明らかになっていなかったことを
この人は・・知っているのか!?
「封じ込めた・・・!?」
俺は、驚いた言葉に・・。
「神・・とはいえ、女神・・名は”ニル”と名乗っていた
女神です」
「・・・・!!」
女神ニル・・。
「初代は・・女神ニルを封じ込めたのです。」
「どこかで・・その名を聞いたことがある。」
そう、どこかでだ。
どこだ・・
どこでだ!!
俺は必死に頭を回転させながら
記憶を遡っていった
一つの絵が見えた
ハッ・・思い出した
ニルの絵だ!!
「思い出した・・王族の屋敷で見た”ニルの絵”」
そう、ニルの絵・・あの恐ろしい事件を引き起こした絵だ
「まぁ、絵を・・あなたは見たというのですか?」
「うん。あの絵で・・とんでもない事件が起きたんだ・・
思い出したくないけど」
「それなら、ニルについても話も大丈夫ですね。
女神ニルは謎の深い女神とも言われています。一部では芸術の神だとも
言われていますが・・私の長年の調べにより、彼女は芸術の神の名という
よりも”破壊を求める神”という・・考えにいたりました。」
「破壊・・神!?」
あの絵のせいで妙な事件に巻き込まれたのだ!!
絵が変わると人を襲う
その絵のせいで・・ジンの父親は・・!!
「話を進めて、私が戦慄したのはそれだけじゃありませんでした。
大戦です」
「・・大戦・・俺、知っているよ。”原因”も」
「・・・そうですか。それなら話は早い」
どうやら、アデルは話をすすめるようだ
俺としては気が進まない
「・・大戦は”人”・・というのもあなたもその顔では
ご存知のようですね。」
「・・・うん。ラミアが話てくれたから。でも、誰なのか
俺には分らない。」
「これは、重要機密事項ですからね・・知らなくて無理もありません。」
そう、”人”・・なのだ、引き金は
でも・・その原因の人は誰かは・・当然
ですが・・と低い声でアデルは話す
「私は、知ってしまったのです。」
「!!?」
「色んな究明を続けていくことにつれ私は知りすぎたということでしょうか。
知った時戦慄をという震えがあがりました・・。」
赤い瞳は、揺るがない意思が見える
でも・・どこか動揺しているのだ・・。
しかも、話すことがすべて真実を語っているのだ
「坊ちゃんたちのような”先祖返りの力”を持つもの・・そして、貴方達
”加護”を持つものが原因だったのです・・。」
「・・・!!」
先祖返り
加護・・
それが・・大戦の原因だというの!?
「珍しく、召喚士一族もその大戦に参戦しました。
なぜならば、召喚士一族はかって”加護を持つモノ”
たちを・・保護していたのですから・・。」
ハッとしたノエルが言っていたこと
昔・・俺と同じような異世界人がいた・・!!
そして、その後の消息について聞かなかった!!
ノエルはバラバラになったとい言っていた
その時・・俺の中で何かがカチンっとはまった瞬間だった
そう・・信じられないといいたい。
「まさか・・まさか・・。」
「私も震えましたよ。まさか、坊っちゃんたちが原因だと
信じられませんでした。でも、何度も来る刺客・・のことを
考えれば・・もう、それしか思わなかったのです。」
アデルの瞳は・・あの頃の絶望と悲壮感がひしひしと伝わってくる
「どうしようもないこと日々過ぎていき・・私も、どうすればいいのか
ひたすら悩みました。その時・・ある人物の訪問より・・すべて
始まったのです」
ある人物の訪問・・?
「カズラとか・・?」
「いいえ、違います。”学者”です。」
「学者!?」
集落に学者が訪れていた・・?
それは、俺でも初耳だった。
「ええ・・確か・・メノリ・カルディアと名乗っていましたね
彼女は・・大変素晴らしい学者でした。」
「・・・メノリ・カルディア!?」
まさか、ここで名を聞くとは思わなかった
彼女は・・メノリ・カルディアは・・!!
「有名な学者ですよ彼女。まぁ、素性不明な人でしたから
確か、王族の側室まで這い上がった方だと聞いています。
でも、彼女は気さくな方で、私や坊ちゃんに力を貸してくださいました
気づけば私はメノリと友になるほどでしたね。」
「・・友」
信じられないよね・・それを知ったらきっとジンでも驚くに違いない
「彼女は、馬があったのか・・この世界の謎について調べていたようです
同時に、メノリは坊ちゃんの存在について気になったこともあるようです」
果たしてそれは幸運と呼べるのか分らない
現に彼女も・・もう・・。
「彼女はニルと大戦のことでかなり調べていました
そして、集落の先祖に当たる初代の存在も。そして加護を持つものに
ついてもここで研究をし続けてくれましたね。その果てなき
頭脳と好奇心は私でも驚くばかりでした。」
「・・驚くような頭脳だね・・メノリって人は」
「メノリは、ああ見えても学者を目指すもの達に
とっては、とても有名でしたのよ」
「・・・なるほど。俺も会ってみたいな。」
「くすっ」
だけど、アデルはあの日を思っているのか
ふいに・・目を伏せた
「いつごろか、あるとき彼女は青ざめた顔でこういったのです。
”世界は終わる”と。」
「・・・。」
その時のことを思い出したのかアデルは苦痛そうに
顔を歪める
「とても信じられませんでしたが、彼女は必死でした。
そして、このあと起こることもとても恐怖でしたよ。
刺客が運悪く出会ったのです・・その時、メノリは確信したのです
坊ちゃんの存在こそ・・この世界を終わらせる鍵になることを」
「・・ヤドリが・・鍵」
確かに、ヤドリの力から見て
なんらかの因果があるのは俺でもわかっていた
でも・・それがこんなに大きなことだったとは・・。
アデルはそのまま刺客が消えたその後について話してきた
「運よく追い払うことに成功しましたが。メノリは私にいったのです
”坊をあいつらに渡すな”と。」
「とても強く口調だったのを覚えています・・。」
「・・。」
「私は何故と聞くと・・彼女はこういったのです」
青ざめた顔から必死になるメノリを
アデルはその時になって思い出す
(大戦後から、そこの坊主のような者の行方不明者が相次いでいる。
それと”加護”を持つものも・・いいか、アデル。私は、
いずれ、王の妃になりやらなければならないことを終わらせる。
お前は何が何でも”坊主を守れ”・・そして渡すな。)
(・・・!!)
(坊を守れるのは、近くにいるお前だけだ。坊主を渡せば
世界は滅亡の道へとたどる。そうならないために
お前ができるかぎりのことを・・!!)
あの時のメノリの顔をアデルは今も思い出しても
その必死さを忘れることはできない。
「世界は滅亡。もしくは・・支配される。」
支配される・・。
まさか、これが・・。
「大戦後には”加護””力”を持つものが行方不明になっていると
聞いています。メノリの考えが正しければすでに・・歯車は動きだしているのです」
すでに始まっていたということか・・。
「行方不明・・。」
一瞬だけ見えたのは・・千里だ。
アイツも・・加護を持っているのか?
「俺はなんの加護を持っているというの?」
そう、肝心の加護が分からなければ俺には何も伝わない
「残念ながら私にはその加護はわかりません。
でも、わかります。」
「・・・。」
「その加護はきっと、恐らく分るでしょう。良くも悪くも
すぐ近くに」
「・・・!!」
「だから貴方は導かれたはずです。」
「・・導かれた・・。」
そうだ・・俺はあの日
ゲーム帰りに聞こえたあの声・・。
あれは・・誰の声だっただろう・・?
そして、度々に俺を呼び寄せた声
愚者の声も聞こえた気がした。
温かい声も聞こえたきがした。
でも、それが誰の声なのか・・俺には分らない。
今は・・それを知ることができないのは・・俺でも分かっている
今は前に進むだけだ
でも・・この人には真実を言おうと思う
メノリ・カルディアのことを。
「アデルさん。メノリ・カルディアは・・もう」
すると、彼女はポッリと呟く
「・・・・知っていました。彼女はもうこの世にいないことも」
俺は・・驚いた
この人は・・知っているんだ・・。
だから、こんなにも寂しそうなんだね・・。
「・・・。」
「知ったのは手紙でした。ニルの絵により暴走した王を止めると。」
ギュッとアデルは自分の服を握る
感情を抑えるように・・。
「・・・。」
「彼女は強かった・・その時は、もう私の心の中で決心がついたのです。
「決心・・ですか?」
コクンっとアデルは頷いた
それは、守るための強い瞳だ。
「彼女も守るために命をかけたのなら・・私もそれだけ相応のこと
ができる・・それが分かった瞬間でしたよ。」
アデルにはもう時間が無かった。
過ぎ行く日々には、すでに限界がきていることを。
その絶望の日々には・・少しだけ希望を込められていた
「私はあの日。坊ちゃんをあの男から守るために
最後の賭けをしたのです。」
「・・・それが・・貴方の死だというの?」
彼女はただ・・優しく笑うだけだ
すべてを計算に入れていたというの・・?
この人は・・。
なんていう・・決心を持ったんだと・・俺は思った
「それも計算のうちでした。私は何度もその日々に涙を流しました
坊ちゃんは何も悪くない。だから、世界を終わらせるわけにはいかない
それだけの覚悟をもって・・その計画の日を待っていたのです」
彼女はどんな決意をしていたのだろう
苦悩が苦悩を呼んで彼女は決心したのだ
「結果、私は勝ったのです。坊っちゃんは奪われることは
ありませんでした。私はそれだけで歓喜しました。」
「・・・でも、ヤドリの心は深かった」
残ったのはヤドリの中の絶望
守れなかったことに対する哀しみだ。
彼女は心が痛そうに・・。
「・・そうなりますね。でも、そうするしか他に
方法がありませんでした。ですが、次はもうない・・それだけが
恐怖でした。でも・・貴方は来てくれました。」
「俺がきたことが・・?」
「ええ。だから、貴方達が来てくれたおかげで・・最悪の展開には
なりそうも無かった。それだけが救いでした」
俺がきたことによって状況が変わった・・というのか?
「私には確信もあった・・メノリが以前話てくれました。彼女も不思議な人物でしたがこうして今思えば・・予言と言いましょうか。」
メノリ・カルディア
ジン達を守って死んだ彼女
確かに彼女もそれが本名ではないとは知っているけど
彼女も一体何者なのか・・俺も時々考えさせるね。
けど・・本人もいないじゃ・・考えようもないね。
「”救世主”が現れる・・その時はもう私はいないけど
世界は平穏へと導いてくれる。そう彼女は話してくれました」
すっと・・その視線を俺に向ける
俺はえっ・・となって
「それが・・俺だというの?」
「あなたが、それだというのは確証はありません。
でも、私にはあなたがそうであると信じたい。」
いきなり、救世主とか言われても
俺には何がなんだか分らない
「・・・。」
「そして、奴らがここにきたとしたら・・もうあの日が近いかもしれません」
「あの日・・?」
なんのことだ・・?
あの日って・・。
「・・・グランドクロス」
「えっ・・。」
「もし、あなたがすべての答えを知りたければそこに
行きなさい。それで、すべてが明らかになります。」
「・・・。」
グランドクロス・・。
そこで、すべて・・分るのだろうか
俺が悩んでいるのを他所に
「そろそろ、目を覚まさなければいけませんね」
どうやら、外のことも心配しているようだ。
「・・・・。」
「キトウも坊ちゃんも恐らく目が覚めるでしょう。
あなたのことは私の力で戻します」
この人・・それほどの力があるのか・・。
まぁ、優秀であるというくらいだからか安心できるかな。
「坊ちゃんを守れようですし、あの男の気も薄れてきたようですしね」
どうやら、外の世界も大丈夫のようだ
グランドクロスのことについてもう少し聞きたいけど
仕方ないね。
「・・・さよならなんだね。」
アデルは頷いたそれは・・もう会うことのないサイン
「・・・ええ。この邂逅は夢でも幻でもとでも感じてくれても
結構です。ですが、忘れないでください」
アデルは、旬の頭を優しく撫でる
それは、とても暖かく優しい手
「・・・私はいつでもアイテム合成と共に坊ちゃんを見守っています。
たとえ、見えなくても。」
そして、俺はまた意識が薄れるのだ。
最後に見えたのは・・とても柔らかい微笑であったことを
俺は忘れることは・・ないと思う。
生涯に・・。
お気づきでしょうか・・メノリ・カルディアは元々は口調が悪いのです。
まぁ、王族に入るに至っては、敬語になっていきましたが・・。
そんな、彼女がまだ王族に入る前に出会ったのがアデルだったのです。
そして、その後・・あの事件でメノリ・カルディア・・は。
さて、アデルはかなりのことを知りすぎていました。
本当に刺客はヤドリだけだったのか・・?
それだけは、謎が深くなります。
いずれにしろ、アデルもメノリ・カルディアも
知りすぎた存在・・ということになります。
では、説明は以上にしてまた次話で。




