少年、子守歌を奏でる世界
今回はまた旬たちの視点に戻ります
まぁ、カズラの発言はお楽しみにしていてくださいね。
(どうして、俺っちは・・一人なのだろう)
涙を流してあの日をみた
あの日は・・とても辛い日で悲しい日だった
(坊っ・・ちゃん。)
血の海だ・・。
俺っちがいるから皆がどんどん消えていく
悲しい
悲しい
その辛い気持ちの中で・・俺っちはどこまでも沈む
でもその眠りは心地良い
なぜならば・・どこからか聞こえる優しい音楽が
俺っちを優しい気持ちへとさせてくれるのだから・・。
****
カズラとノエルが戦っている最中の中
旬とキトウは最新部へと近づいていた
「なんだろう・・この音楽」
どこから聞こえる音楽
「・・・!!」
キトウはその音楽を聞いたことがあるのか
「これは・・・子守歌だ」
「・・・子守歌。」
それは優しい音楽で満ちていた
「でも、なんでこんな所に・・?」
「ここは、ヤドリの記憶の最深部・・ヤドリの記憶により
再構築され続けている世界だ。」
「・・再構築・・か。」
子守歌はとどめることもなくずっと音楽は続けている
どこまでも・・続く優しい音楽
音楽の中心には誰かが眠り続けているのが見える
「ヤドリ・・!!」
そう、ヤドリなのだ
「よせ、旬殿・・今のヤドリにはお主の声は聞こえないのだ」
「・・そんな!!ヤドリ!!俺だよ、旬だよ!!
目を覚ましてよ!!」
そう叫ぶ・・でも、ヤドリは目が覚めない
「どうしよう・・。」
「・・ヤドリは眠り続けることですべてを忘れるようになったのだ
忘れることで苦しみや悲しみを癒すことになったのだろう」
そう・・なんだろうか
苦しみや哀しみは、ずっと人間の心に残ることはあるけど
けしてそれだけじゃないような気がする
「キトウさん、俺・・ヤドリは、きっと泣いているだと思う」
「えっ・・眠っているのに・・か?」
そう、ヤドリはここでも眠っている
子守歌のおかげで
でも・・心は泣いているんだ。
様々な後悔と哀しみを受け止めて
「一人で泣いているだよ・・寂しい、悲しい・・
苦しみの中で・・だから俺が声をかけても
目覚めない・・そうなんだよね・・ヤドリ」
俺は、ヤドリの気持ちがそこまで分ることはないかもしれない
でも、出会ってしまったら・・もう、引き返せることはない
その時・・頭に響いたのだ
”あなたは・・優しいのですね”
とても柔らかい声が・・。
「えっ・・?」
俺の頭の中で誰かが・・呼んでくれている
「どうしたのだ・・旬?」
「今・・頭の中から声が・・?」
「・・?何も聞こえないが」
「・・気のせい?」
”あなたのような人がここにくるのを
私はずっと待っていました。”
「・・・!!」
あなたは・・誰なんだ・・?
そう問いかけても・・。
”・・・・”
何も答えが返ってこない。
だけど、声はまた続くのだ
”こちらへ・・あなたしかはいれない
扉です”
キトウは驚いたかのように
「旬・・!!あそこから扉が・・!!」
そこは、一つの扉だった
ギィィっと自分たちが開けたわけではないのに扉が勝手に開いていく
「わ・・罠なのか?」
「・・・ううん。多分、歓迎してくれているんだよ」
その声は、誰の声なのかわからない
でも、俺に呼びかけている
旬は、その扉の中に近づく
そして・・扉の中へと進んでいこうとする
旬に慌てながら追いかけようとするキトウ
だが・・。
「ちょ・・旬殿・・うわっ!!」
バリバリバリっと雷がキトウを襲う
雷は扉の前でキトウを通すことはなかった
「・・どうやら、おいは歓迎されていないようだ。」
そのようだ。
キトウは寂しそうな顔をしていたが
仕方なさそうな顔をしている
「・・・キトウさんはここで待っていてください
俺・・すぐきますから」
そして・・俺は扉の奥へと・・入っていったのだ
****
そこは無の世界で何もなかった
ただ・・子供が泣いているだけだ
しくしくしく
しくしくしく
そこには、幼い子供が泣いている姿があったのだ
「・・・・。」
俺は、静かにその子供に近づく
そして、優しく頭を撫でた
ハッとしたのかそこの子供は驚いたかのように振り向いた
でも、泣いた顔はグシャグシャになっている
「・・誰?お前・・誰なの?」
どうやら、ヤドリは俺が誰だか忘れ去られているようだ
まぁ・・仕方ないか。
色んなことで混乱しているのだから。
そういえば・・俺も今は子供だから・・身長は、同じだね
思わずクスっと俺は笑う
「俺?旬だよ・・まぁ、君の知り合いのお友達ってことだよ」
嘘はついていないし・・いいかな。
子供は旬の言葉に繰り返す
「・・友達・・。」
その言葉を聞いて子供・・でも、すぐに廃れる
「俺、友達に会いにきたんだよ。眠っている友達に
そして、心に傷を負った友だちのためにきたんだ」
すると子供は・・そのまま哀しそうに・・。
「俺っちには・・何もない。アデルを目の前で・・
守れなかった・・。」
子供は泣きながら・・守れなかったことを悔やむ
「・・そう」
「あの日、俺っちがもっと強ければ・・同じ子供にも
負けずに立ち向かえたのに・・守れなかった」
俺はただ、傾聴するだけだ。
ずっと話を聞いてあげることがいいと思ったのだ
「・・・。」
「・・だから・・だから、俺っちは・・もしかしたら
アデルは恨んでいるかもしれない。
俺っちが盗んだから・・力を・・。
俺っちの体質のせいで・・巻き込ませたんだ!!」
気がつけば手にしていたアイテム合成の力
最初は、楽しくて仕方がなかった
でも・・一緒に笑ってくれた理解者はいない
笑ってくれた
愛してくれた
姉のようで母のようで
おおらかな人だったからこそ
子供の心に大きな傷を残したのだ
子供・・・もといヤドリは泣いている
俺はただ・・・。
知っているわけでもないのだ
でも・・なぜか、その言葉をかけた
”大丈夫”と
「・・大丈夫だよ。」
「・・・・・?」
俺はヤドリの手を握る
そして願いを込めて・・俺は君を言うことができる
「その人はきっと、君を守りたかったんだ
だから、守れたことにきっと恨んでいない
覚えていないの?君がその人に何を残してくれたのか」
そう、何を残したのか
それは、物ではない・・言葉
忘れ去られてもきっと残っている言葉
するとヤドリは・・思考が停止する
「・・それは・・。」
そして、頭を抑えて考え込んだ
でも
「思い出せないよ・・」
「なら、俺が手伝ってあげる」
手から光が溢れる
「・・えっ・・。」
ハッとしたのは子供のヤドリ
俺は、ただヤドリの額に光を与えたのだ
ヤドリは
「うわぁぁぁぁ」
頭がガツンっと叩かれたように押さえ込んで
記憶流れ込んでいくのだ
「・・・。」
俺はそれをジッと見つめた
「俺っちは・・あの時・・そう、聞いた・・知っていた」
そして・・。
思い出すのは・・最後の言葉だ
イキテ・・。
「・・・・・えっ」
ヤドリは・・ふいに記憶がなだれこんできた
そして・・その中に人影が映って
優しく
言ったのだ・・。
あたまの中で映像が浮かびあがったのだ
****
ドンドン・・ドン
とても大きな音が聞こえる
そこはどこなのかわからない
(怖いよ・・)
普段の刺客とは違う何かが子供を怖がらせる
子供は・・震えているそれをみた女性は
そして、キッと何か決心したのか・・。
子供に、向き合って
(坊っちゃん・・私は・・。)
子供のヤドリは涙を流しながら首を横に振る
(行かないでよ!!アデル。俺っち怖いよ)
(坊っちゃん・・。)
(このままいけばアデルは・・どこか行っちゃうような
気がするんだ・・だから・・行かないで!!)
受け入れないのが子供なのだ
アデルは仕方なさそうに笑い
そして・・。
(坊っちゃん。聞いてください。)
(・・・)
子供はうつむいて・・何も言わない
女性は、真剣な顔で言うのだ
(ここで、恐らく今生の別れとなりましょう。
このままいけば・・貴方も私ももう残された道は
ありません・・それだけは・・それだけは避けたいのです)
そして、それは幼いヤドリには重すぎた言葉
(別れは・・嫌だよ・・。)
それでも嫌だと言う子供に・・。
(・・・坊ちゃん、人の別れは誰でも起きます
それが、運命でもあれば仕方ないことでもあります。
だけど、それがとても惜しいのです。何故なら
私は・・貴方に出会えたことが嬉しいから)
敵がもう・・近くに迫っているとわかっているのか
アデルはにっこりと笑う
(アデル・・。)
(貴方様に会えてよかった。私にはそれだけが一番の思い出
そして、一番の幸せでした。」
それはその笑顔はどこまでも幸せそうで
そして、寂しそうだ
子供は気づいた・・別れは近いということを
(ア・・デル?)
アデルはニコっと笑ってヤドリを抱きしめた
それは最後の抱擁・・だった
(私に幸せをくれてありがとう。母のように姉のように
慕ってくれてありがとう。)
(なんだよ・・最後なんて・・言わないでよ・・。)
そしてクスっと笑って
(本当に最後だなんて惜しいですね・・
名残惜しいです。もっとあなたの成長が見たかった
補佐をしてあげるという約束を守ることができなかった
私を許してください)
そう懺悔をするアデルに俺っちは涙を流す
(・・・アデル・・。)
そして、アデルは最後の笑みを浮かべた
(覚えておいてくださいね。坊っちゃん。)
(え・・・?)
それは、ヤドリに一生へと続く約束へと・・。
(貴方には・・”幸せになる権利”があるってことを
あなたは・・覚えていてくださいね。)
ヤドリの瞳から瞳からツゥ~と涙を流していった
(・・・坊っちゃん。幸せになってくださいね。)
私は、あなたを守ります・・。
死んでも・・ずっと。
それかまた別の言葉に遮られる
そう、あの冷えた瞳をした子供・・に!!
その言葉が最後に・・アデルは・・奴に・・。
後ろから・・刺された!!
そして、倒れたのだ
(ガハッ・・。)
それを引き抜いたのは・・うっすらと光る剣
(・・アデル!!)
近寄るが・・もう・・。
そして、姿を現したのが・・子供だ
それが幼いカズラだとは当然ヤドリは知らない
(本当に弱いな・・。)
それは悪魔の瞳と冷血な瞳を持った子供だ
(もくてきはそいつだな・・。)
悪魔の瞳を持った子供は・・ヤドリに近づく
手にはうっすらと血が・・。
アデル・・アデル。
(うあ・・ああああああああ。)
涙と声で・・もう何がなんだかわからない
その恐怖で、すべてが歪む
そう・・自分の体質が・・暴走を始めたのだ!!
(な・・なんだ)
(ア・・デル・・ごめんなさい・・ごめんね)
そう、時の暴走を持って
ヤドリは・・暴走した
そして、そこで父親のキトウにより
記憶操作されたのだ・・。
それは・・アデルとの記憶
そして、カズラの来襲を忘れ去る
すべての因果共に始まりとなることを・・。
****
子供のヤドリはツゥ~っと涙を流す
「・・俺っちは、なんでこんなことを忘れていたのだろう・・。」
そして、子供は旬と向き合って
「・・旬・・ありがとう。」
それにハッとしたのは、俺だ
「ヤドリ・・俺だと分るの?」
すると・・。
「・・・ああ。やっと・・色んなことに気づいた。
俺っちは・・思い出したんだ」
どうやらようやく思い出したようだ
すべての始まりと終わりも
同時に良くも悪くも・・すべて
「そう、思い出したんだね」
ヤドリはそのまま旬に笑う
「俺っちようやく思い出したあの人は・・笑っていたんだ。」
そう、アデルは笑っていた
最後までヤドリの幸せを考えていた。
それだけは俺でも分るのだ
「・・・俺っちなんでそんなことを忘れていたのだろう
馬鹿だよ・・俺っち」
そして、子供のヤドリは旬に笑い返す
「・・ありがとう。旬」
「・・・うん。」
ヤドリは自分の精神世界だと知っているのか
「・・俺っちは戻らないといけないね。」
「そうだね・・。」
その時・・。
「でも、どうやってここに来たんだ?」
「ああ・・キトウさんと・・それと・・こ・・。」
すると・・言葉を最後を言おうとすると・・。
突然・・。
「な・・なんだ、ゆが・・む?」
「旬!!まずい!!俺っちの精神世界に何か異変が起こったのか?
旬・・!!俺っちの手を!!」
だが歪みは歪んで世界は失われるような・・そんなよく分らない
気分なのだ
「うわっ!!」
「旬・・俺っちが・・。」
すると・・旬の中では別のことを考えていた
「大丈夫!!ヤドリ、君は目覚めるべきだ!!」
「だが・・」
「キトウさんをお願い!!あの人は、君を心配していた
俺よりキトウさんを優先して!!」
「旬、君はどうする気なんだ!!」
「俺は多分、大丈夫・・信じて」
ヤドリの幼い手で旬をつかもうとすると
だが・・それができずに・・。
「うわぁぁぁぁ」
「しゅぅぅぅぅぅぅん!!」
弾き出されたのだヤドリの精神世界から
そして、俺の意識は・・真っ白になった。
目が覚めた時
それは、どこか分らない・・
「ここは・・?」
俺が起き上がると
「目が・・覚めたのですね・・。」
誰かが俺に、語りかける
そう・・・目の前に誰かいるのだ
とても優しい声
「あなたは・・?」
ニコっと・・その人は俺に笑いかけてくれるのだ
優しい・・顔をして。
さて、旬と出会ったのは誰なのでしょうか。
まぁ、声に導かれた人物というわけで限られていきますが
とりあいず、また次話で。




