暴走の果て
今回は、暴走の題材にした物語です。
では、どうぞ
あの後、母親が倒れた瞬間・・。
俺っちも怖くて・・気絶してしまったのだ
「坊っちゃん・・。」
気がつけば・・泣いた顔が見えた
「・・・俺っちのせいで・・。」
「・・・いいえ、あれはあなたがなれぬ体質のせいで・・
あなたの責任ではないのですよ。」
慰める手は優しい・・でも悲しい。
「・・違う!!俺っちが弱いから・・・完璧になれる人間になれば
きっと他者にも認められる・・母君だって」
父親の後姿をずっと見続けていた。
追いつけなくて
そして、それが許せなくて
辛くて・・辛くてたまらなかった
「この世には完璧な人間などいないですよ。坊っちゃん。」
「えっ・・。」
「・・完璧な人間程、醜い顔を隠している。本当の顔など見せやしない。
無情に人だって殺せるのです。 私だってこんな力を持っても誰も守れやしないのです」
「そんな・・。」
「だから、坊っちゃん。完璧にならないでください。
そして忘れないで。」
「あなたは・・ だってあることを。」
そう微笑んでくれたのは随分昔の記憶に思えてくるのだった・・。
****
ヤドリは生意気に笑って宣戦布告している。
「俺っちは宣伝するよ。これで一分でケリをつける。」
一分・・?
かぎりなく少なく見える
「パラサイト・・き、貴様・・。」
風がすでに冷たい・・。
衝撃はすぐ傍だ。
「衝撃が、すごい勢いで風へと進化している・・。」
そして、俺の方へと向き合い
「旬・・俺っちの体質の秘密を教えてあげる。
絶対、離れないで・・。」
「俺も応戦しようか?」
すると、ふるふると首を振って
「駄目。危険だから。俺っちの能力はね。
さぁ、行こう」
ふわっと動く姿に魅入られる俺
それに怒りを湧いたのは当然のことシドウだ。
「こしゃくなぁぁぁあぁ」
ビュンっと風が巻き起こしてくるのだ
だが、ヤドリは、軽く避ける
俺は、もちろんスレスレで避けているけど・・。
「1・・・2・・・3・・・4」
とずっと数字を数えているのだ
その間、風はすぐそこまで来ているというのに
ヤドリが何を考えているのかわからない
「30・・・。」
衝撃がヤドリを襲うだが、ヤドリはまるでそよ風のように
軽く遊ぶかのように避ける
「うわぁ・・怖っ!!」
俺はといえば恐怖で怯えるばかりだ
あの風、どんどん形態変化しているだけど・・!!
すると、風は今度はかまいたちになって
ヤドリへと向かって来る
「50、51、52・・53」
と数えていくと紫の石は淡く光はじめる
「56・・57・・58・・59・・・」
さらに、淡い光となりヤドリの身体から何かの印が浮かび上がる
「60・・タイム・スリープ」
その言葉と共に、かまいたちが俺とヤドリの前で止まったのだ
「えっ・・・。」
それは、驚く程、俺とヤドリ以外が止まっているのだ
「な・・何・・これ」
ラミアたちが戦っているのが見える
そして、ヤドリはツカツカっと歩いて
止まっているシドウの方へと向かい
「・・・お返し三倍にして返す。」
その途端、ヤドリが手を振りかざすと
カチっと音がなった
その途端
「グガァァアァ」
風の拮抗と共に、崩れ落ちるシドウ
「な・・何が起こったというの・・?」
もう、シドウは起き上がることができない
何が・・一瞬で何が怒っているの!!
ヤドリが衝撃を放った
「ヤドリ・・君は、衝撃を使えたの・・?」
「いや、正確に使えたのは・・先ほど・・かな」
その言葉にピクリっと反応し
やがて・・。
「き、きさま・・また、他人の時と能力を吸い尽くしたな・・!!」
「吸い尽くした・・!?」
信じられない一言に驚くばかりだ
ヤドリはただ黙って口を動かす
そして、困ったかのように俺を見て・・。
「俺っちのとんでもない体質・・それは”時”なのさ
時間を知らずに奪うし、使う・・つまり、人の生きる”時間”だけでは
なく能力すら吸い取って・・自分の力にしてしまう。それこそ、
恐ろしい・・寄生虫の正体さ。一時、それこそが
不老不死の謎を解き明かすことができる存在と噂されるくらい
不思議な体質なのさ」
寄生虫
まさに、思いもよらない体質だ
「じゃ、あの紫の石は?」
なぜ、あの紫の石を発動させたのだろう
確か、彼は”マジック・アイテム”と言った
じゃ、”時”を止めるマジックアイテムなのか・・と思えば
「あの石は俺っちの能力を抑える即席石さ。やりすぎると、時によって
消滅させてしまう可能性もあるからさ」
「しょ・・消滅・・。」
それは、俺も思わず口がパクパクしてしまう程だ
そしてヤドリの姿は影を差す
「・・そのせいで、母君は、昔・・本当に時によって消滅しかけ
”いなかった”ことにされるところだったのさ・・」
「・・・ヤドリ」
起き上がれないはずなのに、シドウは鼻息を強くして
「そうだ、そのせいで、多くのものがパラサイトのせいで
消え・・そして、無かったことにされていったのだ!!
これこそ・・お前の能力・・体質のせいで!!」
責める声はやまない・・ヤドリは黙って聞いている
「・・。」
「そして、お前の師であったあの人をお前は・・・
貴様は・・消したのだ!!忘れもしないぞ!!」
激しい怒りと憎しみがシドウから溢れる
その途端、ヤドリは頭を抑えはじめる
様子が変だ
「や、ヤドリ・・!?」
耳を抑えるヤドリ
まるで聞きたくない・・ばかりのようで
「そう、どこまでも優しかったあの人を貴様は
貴様は・・・消したのだ」
シドウの瞳からツゥ~っと涙を流した
それは、初めて見る憎しみの涙なのだ
そして、震える口で・・しゃべりだす
「そうさ、俺っちがいるせいで、”いなかった”ことにされる
そして、その奪った時で俺っちはアイテム合成の師を・・」
その言葉でキッと向き合って
「何が、アイテム合成だ!!その力はお前が
あの人から奪った力じゃないかぁぁぁぁ」
浮かびあがるのは、かってのアイテム合成が可能となった最初の人物
俺っちは・・・
(坊っ・・ちゃん)
ソノヒトノ・・
ノウリョクヲ・・・ウバッタ・・。
「チガウ・・チガウ・・オレッチハ・・チガァァアッァ」
「ヤドリ!!」
拮抗が襲う
ブチブチブチブチっと何かが切れる音が聞こえる
「はっはっ、自業自得だ。もう終わりだ世界は」
「うるさいわ、自業自得なのはお主じゃ・・
これ以上、坊にくだらぬことを喋るのではないわ」
「ぐぇ」
フロウはドシっと重い音と共にシドウを気絶させる
そして、なんとかしようとしてヤドリに近づく
「坊、これ以上をやめよ。お前の体質はまだ不安定なのじゃ」
必死にフロウは止めようとするが
グラリっと揺れるすべて
「チガウ・・チガゥゥゥゥ
オレッチハチガウンダァァァァ」
「ぐっ・・近寄れん・・まずい!!」
ドォンっと音がした
ビリビリビリと何かが発動した瞬間だった
「なんや、時が・・」
「変だ・・時が!!」
「感じるよ・・時が・・歪んでいく」
「なんだ・・このチカラ」
上からラミア、ジン、ノエル、ジゼルが時の歪みを感じ取ったのだ
それに気づいたものは皆、争うのをやめ
暴走するヤドリの力に皆震えだしたのだ
そして、体は震えだしてやがて・・。
「嫌だァァァ、消えるのはいやだぁぁぁ」
と、シドウの部下たちは逃げ出した
歪む時が・・・!!
ラミアたちはすぐ旬たちの元へと向かう
「旬!!何があったんや」
「ヤドリの力が・・暴走したんだよ!!」
そこには、ヤドリが暴走していて
「チガウ、チガウ」
と叫んでいるのが見える
「力が暴走しているんや・・・だから、うかつ近寄ればうちらも
危険や・・!!」
ラミアは口元を抑えた。
「ヤドリの”時”が暴走しておる・・このままでは・・
我々全員が無かったことになる!!」
その衝撃発言に静寂どころか・・
「・・ええっ・・ってことは・・しょ、消滅!!」
「嘘やん・・しょ・・消滅。」
「きえるってことだよね・・。」
一同はなにも言えなくなる
消えるのは怖い
でも・・。
「旬!!わしがあやつを止める・・場合によっては
するしかないのだ・・制裁を・・!!」
フロウは手にもっていた杖で・・
ヤドリを・・。
それを見た俺は、フロウを止める
「ダメだよ!!ヤドリを殺しては駄目だ!!」
「だが、このままでは世界は終わってしまう!!」
終わる・・世界が・・?
それは・・俺だけじゃないここにいる全員がビクっと震えたのだ
「こやつの暴走は、わしがケリをつけようじゃないか
・・お前さんができぬならわしが坊を・・。」
フロウは、ヤドリに向かって足をすすめる
殺すの?
ヤドリの優しい顔を思い出す
俺を見て
笑ってくれた顔を思い出す
たとえ、どんな時でも
俺は・・。
ヤドリは止めるのだ
「ダメだよ。ここは通さない。通せない!!」
その強い拒否にフロウは、ヤケになって
「な・・旬、なぜ止めるのじゃ!!」
旬を見て叫ぶフロウ
俺は、なおさら止めるのだ
「駄目!!どんな理由があろうと、ヤドリを殺さないで!!」
「お主は・・滅亡と消滅はお前さんたちが消えるのじゃぞ?
世界と一人の人間どちらが大切だと言える!!」
世界と一人の人間
比べるだけでもどちらが重いは分かっている
でも・・でも!!
「ああ、たしかに世界は必要だよ、どれだけの人が生きているか
俺すらわからないかもしれない」
「なら・・。」「だけど!!」
俺は・・あのヤドリの笑顔は嘘は無かった
憎めないのだ
あいつは・・優しい人間だと知っている
分かっている
だから・・簡単に死なせて・・たまるか!!
世界?
重要かもしれない・・だけど。
もっと、必要なことがあるんだ・・!!
「人を見殺しにしておいて何が世界だ・・!!俺はそんなモノよりか、助けたい
そして、ヤドリに恩がある。俺はそれを返せずに終わるなんて
そんなの認めない!!」
出会ったのに、守れませんでした。で、そんな馬鹿な話で終わらせて
たまるか。
ラミアは勢いにのって俺に言うのだ
「旬、言う通りや、あの人は旬を助けてくれた恩があるんや」
「それに、わるいひとではないこともおれさまはしっている!!」
「そうだよ!!だから、ヤドリを救うことがボクたちの
一番の優先事項だ!!」
一同のセリフを聞いて、それでもフトウは問うのだ
「!!じゃが、どう止める!!」
すると、皆顔を見合わせて
「考えれば俺は・・なにもない」
「だろうが」「でも」
「他に方法があるのなら・・ゼロではなければ
救える手立てはあるはずなんだ」
その言葉に
パチパチと拍手がきた
「いい答えだ。気に入った。」
そこには
「キトウさん・・!!」
「な・・・キトウ、お前・・!!」
「なぜ、お主がここに!!」
「おいのことはどうでもいいのさ・・それより
ほら」
ポイっと投げられる何か
それを見ると
「あ・・ああああ、俺の杖と本ぉぉぉん」
「うちのナイフや」
「ボクの杖だぁぁ」
「我の剣」
それぞれの武器が戻ってきたのだ
そして、キトウは笑って
「お主らが武器を奪われたと聞いてな、奪い返しにいったのだ
さぁ、我が息子を助けにいこう・・おいにはそれしかできないのだ」
「・・でも、杖が戻っても方法がない」
「あるのだよ・・たった一つだけ」
「息子を助ける方法がな・・。」
これからどうなるでしょうか
キトウは何をするつもりなのか
すべては次回で




