残業
最後に時計を見たのは夕餉の時間だった気がする。今頃この王宮にいるの…警備騎士ぐらいなんだろうなぁ…それかあたしと同じ境遇の人?上司に恵まれていないというか…なんというか…
ぎゃっ!余計な事を考えてたら最後の最後でミスった!!
修正液をつけてっと…書き直して…あぁ…
「出来たぁぁぁ!!!」
時間はまだ日が変わるまでたっぷりあるし!!頑張ったあたし!!
「疲れたよぅぅぅ」
夕餉も食べずにぶっ通しでやってたから…、今頃になってお腹空いて来た…
あぁ…こうやって机に頭乗っけるだけで寝てしまいそう…
「ヒモジイよぅ…痛いっ!」
…何か突然頭上から降って来たし…目の前に落ちてるカラフルなそれは…
「……飴?」
「お疲れ様」
「うわぁ!!」
突然声かけられて心臓飛び出るかと思った
「れ…麗稀様。な、何で?」
ただ立ってるだけであの清涼感…ま…眩しすぎる。
うぅ…疲れ果てた自分には目の毒だ…
「それ食べていいよ?その様子じゃ残業申請忘れたな?」
そう、何を隠そうこの王宮、福利厚生がしっかりしていて残業申請を出すと、もれなく夕餉が付いて来たりするのだった…
「あぁ…可哀想に、こんなに窶れて…」
誰のせいだ!誰の!!
そもそもあの書類にあんなに時間がかからなければ…まぁ言いませんけどね
「麗稀様どうして?」
「ん?ちょっと用事があってね。で、外務部に明かりって珍しいから覗いてみたんだ」
こんな時間まで仕事なんて…やっぱ右宰相様って忙しいんだ…なのにこの清涼感。やっぱ麗稀様もうちの国で儀晶様を差し抜いて麗しさNO1の称号を持ってるだけあるわ…腰までの黄金髪は綺麗に頭上で結われてるし、高貴な人が滲み出てて所作がすごく綺麗だし。
「お疲れ様です」
「それは閔鈴でしょう。さ、さっさと片付けて帰ろう」
「え?」
いや…帰るには帰るんですけどね…
「帰ろうって…麗稀様の自室この王宮内じゃないですか…」
そう、王族の方々は王宮の奥に自室を持っていらっしゃって、ちゃんと自宅があるけど大抵そこに泊まる事が多いらしい。ま、これは侍女達の話を聞いただけなんだけど…
いわゆる井戸端会議ならぬコンパクト女子会ってやつ?
「もちろん。送っていく、女の子をこんな時間に一人で帰せないからね」
その台詞をそっくりそのまま儀晶様に聞かせてやりたいっ!!ちなみに儀晶様はさっさと定時に帰られましたけどね…何か「今日は娘と遊ぶんだ♪」ってスキップして帰ったもの…ふっ溺愛娘から嫌われてしまえ…
疲れからか…考える事がダークになってる。
ただ…もぅ今日は疲れが酷すぎるので…ややこしいのは勘弁願いたいので
「ありがと…」
ぐふっ!「ありがとうございます。でも結構です」って言おうと思ったのに!
こ…声が出ない…。
「(パクパクパク)」(訳:麗稀様何かしましたね?)
「あぁ、いいんだよ?僕が好きでしてる事だからね」
麗稀様!ちゃんとあたしの動作見て!必死に口指してるでしょうが!!
「(パク!パク!パク!)」(訳:早く!これを!解いて!)
「そんなに感謝しなくていいよっ!」
ちっがーーーーうっ!!!
どこをどう聞いたらそんな言葉になるんだぁ!
あぁ!勝手に人の机を触って片付けないで下さい!!
「さ、行こうか」
「(パクゥゥゥ)」(訳:いやぁーーー)
ぐえ…しまった…襟首取られてしまった。
こ、こんな深夜に…これからどうなるんでしょうか?