扉マジック
うふふ…この扉何なのかしら?あたしにケンカ売ってます?
さっさと食堂からトンズラしようと思いましたよ?思ったんですよ?
なのにこの扉のせいで…
バタン。
「き~~~~っ!!!何なのよっ!この扉っ!!」
普通食堂の扉って軽く押したら開くやつじゃない?
何でここはきちんとした扉になってるわけ?まぁ……裏扉っていうのは置いておいて。しかもこの扉の何がむかつくってあたしがワゴンを離れてわざわざ扉を開けにいったらですよ?ちゃんと開くくせにワゴンに戻ると閉まるってどういう事?
バタン。
「んぐぐぐぅぅぅ………」
…絶対馬鹿にされてますよね?これ…
もう一回…もう一回だけ試してみよう。
「扉を開けてっと…」
ガチャ
「開くのに…」
あっ!ここに物置いて支えとけばいんじゃない!?
何か支えるものが…あっ!!っていうかワゴンで支えたらいいんじゃない!!何で今まで思いつかなかったのあたし!!
よしっ!!ワゴンの端を持って…
ガラガラガラ…
え?あたしまだ持ってませんけど?
「って、ちょっと!!!」
わっわっワゴ~~~~~~~ン!!どこにいく!?
あっ止まった、っていうか止めてもらった。
あれ?あの綺麗な手、何か見慣れてるんですけど…
「お手伝いしましょうか?」
「げっ!!!いつの間にっ!!」
「いつの間にと言われると…閔鈴がワゴンを受け取ったぐらいですが…」
…それ、最初からじゃないですか。
「きょ、杏玉ちゃんは…」
「…?」
「え?いや…さっきの彼女…」
「あぁ…」
えぇ〜〜!?何でそんなに眉間に皺よってるんですか!?あの食堂のマドンナ、杏玉ちゃんですよ?さっきあんなにニコニコ話してたじゃないですか!
あれは何だったんですか!?
なぁ〜んてさすがに自爆質問は致しませんよ?
それより…今はどうやって彼の手にあるワゴンを取り戻すかです。
……
……
全く思いつきません…どうしましょう…
既に中のお茶達は渋茶確定でしょう…ぐすん…特級茶葉が…
「まだ何か用事あるんですか?」
「え?」
あれ?ニコニコされてますけど…その顔、不機嫌ですね…
「えっと…」
「裏口から出るなんて他の所にも用事があるんでしょう?」
「………」
やばい…
バレた時の事なんて考えてなかったです…どうする?
「まさか置いていこう…なんて考えてませんでしたよね?」
バレバレじゃないですか!…あ、汗が止まらない。
どうするのぉ〜?あたし!!
これはもぅお茶なんて構ってられない…あたしの背後には扉…逃げるしかない!!
バタン!
「なっ!!!」
何で今また閉まるのぉぉぉぉ!!!
麗稀様…何だか指先が光ってますが…
「も、もしかして…今まで扉閉めたのって…」
「…ん?風じゃないですか?」
んな訳ないっ!!!
うぅ…そうですよね。麗稀様にとって念動術ぐらい御茶の子さいさいですよね…あぁ風術でも全然余裕ですね!ははっ!!どっちでもいいやっもぅ!!
「閔鈴。こういう時言う事あるでしょう?」
「う…」
「ちゃんと言わないと許してあげませんよ?まぁ別にお仕置きコースでも…」
なっさらっと恐ろしい事言いませんでした!?
しかもほんとに少し楽しそうな嬉しそうな顔してません!?
「ご、ご…」
「ごご?」
「……………ごめんなさい」
ニコッと笑った麗稀様の瞳が怖い…
「悪いと思ってるなら、お茶ぐらい付合ってもらえますよね?」
「え?」
「丁度、料理長からお菓子も頂きましたし、執務室で頂きましょう」
「え?」
「このお茶は執務室まで儀晶に取りに来て貰いましょうね」
「え?」
「じゃあ行きましょう」
え?って我に返ると時、既に遅しで、いつの間にか手を奪われて…
しかも何で恋人つなぎ!?
「逃げ出さないように…」
「〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
いやぁぁぁぁぁ!!!!
誰にも聞こえない心の声があたしの中にだけ響き渡って…しかも裏扉も今までのが嘘のように自動で開きやがった…
八つ当たりだとわかっているけど…次来たとき、絶対裏扉ぶっ潰す。