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危機、再び

 

 げ…魔の扉が開いてる。


 忘れてました。

 食堂に向かうにはどうしても難所を越えなくてはならない事を…

 

 前から疑問に思ってたんですけどね…外務部から何処かに行こうと思ったらどうして全部麗稀様の執務室の前を通らなきゃならないんでしょう?一旦外に出たら行けない事は無いですけど、もう一度身分証明なんかがあって面倒くさい事極まりないですし…

 しかも今は外務部から食堂にお茶のお願いの連絡しちゃってますから、そんな外に出てたらお茶の美味しさが…駄目です!そんなの駄目です!


 う…麗稀様の執務室の前を通らなくちゃならないのは何だか不吉ですが……


 「……悪霊退散。悪霊退散」


 …おまじないって魔力ゼロでも、効いてもらえますよね?

 思いの強さって言いますよね!!あたしの今の思いはMAXですよ!MAX!


 「あ、閔鈴。丁度いいところに」


 ふふっ皆さん訂正です!おまじないも要魔力みたいですよっ!


 「れ、麗稀様…」

 「どこへ行くんです?」

 「ちょっと…お使いに…」

 「お使い?誰のです?」


 行き先は言いたくない!断固として拒否権発動です!

 仕事と思ってもらえれば万々歳です!休憩なんて言葉を言おうもんなら…恐ろしい。

 何とかして…何とかして…ごまかさないと…


 「ぎ、儀晶様のお使い…なのです」

 「へぇ…儀晶の?」

 「はい!では、急ぎますので失礼します!!」


 ここは逃げるが勝ちです!

 卑怯者と呼ばれようがどうしようが私は自分が可愛いですっ!!

 


 ………



 ………



 いや…一生懸命ダッシュしたんですよ?私…。

 どうしていつまで経っても麗稀様との距離が離れないんでしょうか?



 「な、何で…麗稀様…ついてくるんですか?」

 「なぜって…閔鈴さっき倒れたでしょう?もし途中で何かあったらどうするんです?」

 「………」


 わ、忘れてた~~~~!!!

 そうだ!さっきあたし倒れたんだった!?


 「も、もう…だ、だ、大丈夫…」


 ですからって言葉は受け付けて貰えないみたいで…


 「もしもの護衛ですよ。目的地まで付いて行ってあげますから」

 

 いらないっ!!果てしなくいらないっ!!!

 っていうか一文官ごときに王族が護衛って何!?逆でしょ!?逆!!

 

 あぁ…さっきのあたしどうして気を失ったフリなんてしたの…

 自分の嘘にがんじがらめになってくのですよ…


 「って…麗稀様?会議は?」

 「そんなものとっくに終わりました。もうすぐ定刻ですよ?」


 えぇ!?

 夢中になって仕事してたら…時間の感覚忘れてました。

 …それ以上に、どうしましょう…頭のナビが言ってますよ『目的地周辺です』って…


 「ねぇ閔鈴。この先って食堂しかないけど?用事って食堂?」

 「…あのぉ…そのぉ、あぅぅぅ…」

 「儀晶のお使いって事はお茶か何かかな?」

 「えぇ…まぁ…」


 ってよく考えたら別にバレて困ることなんてないですよね!

 みんなにお茶を持ってくなんて普通の事ですし…それじゃあさっさと用事を済まして…


 「すみませ~ん!先ほど連絡した外務部ですけど~!」

 「は~い!」


 おっ!この声は食堂一番の美人さん杏玉きょうぎょくちゃんの声ではないですか!


 「閔鈴様すみません…まだ蒸し時…れ、麗稀様!?」


 あ…そうですよね…。突然王族が食堂にいたら普通びっくりしますよね?

 おぉ~見る見るうちに杏玉ちゃんのお顔が真っ赤になってますよ。あたしにとっては見慣れた顔ですけど、他の女の子にとっては『麗しの麗稀様』ですもんね


 「こんにちは。食堂の方ですか?」


 出た~~!神々スマイル!!

 これに参らない女性をあたしは見たことが無いです!!

 ほらっ!!ほらぁっ!!杏玉ちゃんの瞳が乙女モード全開になってますよぅ!!


 「はい…杏玉と…申します…」

 「杏玉さんですか」

 「はっはい!!」

 

 …あのぉ…そろそろお茶を…なぁんて口を挟もうもんならどんなに仲の良い人でもすんごい形相で睨まれちゃうんですよねぇ…今までの経験からして…


 …だからと言ってこれに付き合っているとお茶が……


 麗稀様を見ても…別に嫌がってる風でも無いですし…置き去りで帰ってもいいですよね

 こそっと二人から離れてっと

 …外務部で鍛えられたとんずらスキルはなかなかのもんなんですよ!

 麗稀様とお近づきになれるっていう、こういう時の相手の女の人は協力的ですからね~

 ふふっ!今も杏玉ちゃんが必死に麗稀様の意識を自分の方に向けようと頑張ってらっしゃいますし…

 今この食堂で麗稀様に参ってないのってあたしと麗稀様自身と料理長のおっちゃんぐらいですねぇ…

 厨房を勝手に覗いちゃいますよ~!

 

 {おっちゃ~~~ん}


 えぇ…出来る限り小声で…


 {おぅ!閔鈴ちゃん!また偉い上物連れてきたな}


 きちんと小声で返してくれて…さすがっ!わかってらっしゃる!!


 {置いていくんでしばらく周り使い物にならないかもしれませんけど…すみません!}

 {がっはっはっ!了解!了解!お茶はそこに用意してあるよっ!}


 小声で豪快に笑える人に初めて会った…


 {おっちゃんありがとぉ~!大好き!!また甘味差し入れするから!!}

 {待ってるぜぃ!}

 {裏から出ていい?}

 {おうよ!}


 では…麗稀様ここで失礼しまぁす!

 姿が見えない所で一応お辞儀して帰りますよ。礼儀ですからっ!

 ワゴンのガラガラ音が少し気になりますが…あの扉を抜ければ本日二度目の危機脱出です!


 ふふ!今度おっちゃんに立花堂のお菓子差し入れするの忘れないようにしないとね!

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