表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファナティック・フレンド  作者: 七賀ごふん
First and last

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/130

#1



ある夢を見た。

いや、正確には思い出した。


何かを忘れてること。

誰かを忘れてること。

思い出せないことを思い出していた。


星が見たいと言った、あの子。

また会いたい。……あの約束を果たしたい。それすらも忘れて十五年が経った。


会いに来てもらって、やっと思い出したんだ。






「……」


静かな昼下がり。

辺りを一通り見回してから、涼は唾を飲み込んだ。


ぎこちない足取りでマンションのエントランスを抜ける。そして鞄から取り出した封筒を、木間塚と表記された郵便受けに投函しようとした───そのとき。

「何してんだ?」

「あわあぁぁぁっ!?」

背後から掛けられた声に驚き、その場で飛び上がった。真っ昼間とはいえ近所迷惑に変わりはない。声は住宅の合間を縫って響き渡った。

「うるさっ……!! やめろよ、俺が変質者みたいに思われるだろーが」

「ゴホッ! いや、そんなつもりじゃ……ウェッ、ゴフッ」

どうも気管に入ったらしく、涼はその場で壁に手をつき呼吸を整えた。


「え。准さん、どうしてここにいらっしゃるんですか? 今日は出勤日……ですよね」

「あぁ。だからこそお前が来そうな気がして、ここで待ってた」


嫌味なぐらいにっこり笑うと、涼は狼狽しながら視線を逸らした。

「俺なんかの為にお仕事休んでどうするんです」

「お互いさまだろ。自分だって一ヶ月も休みとったくせに」

「そ、そうですね。おかげさまで今年はもう有休使えません」

その後、彼は何か喋ろうとした。しかしまた口を閉ざし、最終的に持っていた封筒を准に指し出した。

「今日はこれをお渡ししたかったんです。最後の生活費と、……色々ご迷惑をおかけしてしまった分のお金を」

「迷惑?」

封筒を差し出されても、准はすぐ手を付けようとはしなかった。しかし、目で見てもそれなりに厚いことが分かる。それでなのか、自然と笑ってしまった。この封筒の重みが謝罪の重みとは。

「何か手切れ金みたいだな」

「えっ!? いや、そんなんじゃ……! ただ、本当に迷惑をおかけした分……っ」

涼は慌てふためいていたが、声は勢いを失い、どんどん弱々しくなった。


「……と、嫌な思いをさせてしまった分……です」

「で、これ置いて逃げるつもりだったのか?」


辺りの静寂を壊さないよう尋ねると、彼は怯えた顔を浮かべた。封筒を持つ手も、若干震えている。

……いや、本当は会った時から。気付いていたが、気付かないふりをした。


「ちが……その……本当はちゃんと謝りたかったけど、もう俺の顔を見るのも嫌なんじゃないかって……思って」


熱でもあるんじゃないかと心配になってしまうほど顔が赤い。見てるこっちまで赤くなりそうだ。


「そんなこと思ってないよ。でも、金はいらない。渡されても困るだけだ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ