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ファナティック・フレンド  作者: 七賀ごふん
これからも

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128/130

#3



あえて伏せていたのに、彼の方から両親の墓参りに行こうと言ってくれた。それが本当に嬉しい。


久しぶりに訪ねた両親の墓は、思ったより綺麗だった。わりと最近、誰かが掃除してくれたのだろう。周りに落ちてる枯葉を拾い、打ち水をするだけで今日はやめておいた。


成哉は花を供え、他に参拝者がいないことを確認した上で高らかに宣言した。

「ただいま、二人とも。この人が俺のダーリン、木間塚准さんだよ」

「ダーリンて……他に言い方ないか。日本語で頼む」

「じゃ、ご主人様」

間違いではないんだけど、彼が言うと引っかかるとは何でだろう。

疑問を胸に抱きつつ、口を閉ざして彼の話を聞いていた。


「……やっぱり戻って来ることにしたんだ。東京は色々すごくて面白かったけど、俺がいる場所じゃなかったんだと思う」


成哉はひとりでペラペラと話しだした。

空いていた時間を埋めるように、ここに眠る両親に向かって、小さなことから大事なことまで。

「しんどいこともたくさんあったけど、行って良かった。この街から出たから、また准さんと逢えたんだ」

弾んでいた声はいつしか鼻声に変わり、足元の砂利石に雫が落ちていた。

成哉は、肩を震わせて泣いていた。


「……っ」


時間が緩やかに流れる。


久しぶりに帰って来た故郷には、両親の墓以外何もなかった。


何も残っていないのは、東京に行く時に全て捨てたからだ。不要な物も必要な物も、大事な思い出も全部、ここに捨てていった。

何も持たずに東京に旅立った。だから独りだった。

そんなことに気付かないなんて、自分は本当に馬鹿だ。


「これから、真面目にやるよ。ちゃんと働くし、寝坊もしないし、お酒も……ちょっと控える。……ちゃんと生きてく。だからごめん。もう一度だけ俺のこと、見ていて……っ」


子どものようにしゃくり上げる成哉の頭に手を置いて、准も屈んだ。

「……うん。俺からも、お願いします」

もうまともに顔を上げられない成哉の代わりに、真っ直ぐ見据えて手を合わせた。


「息子さんのことは絶対、幸せにします。だからどうか、見守ってください」

「うぅっ……准さん……っ……俺もその台詞、いつか准さんのご両親に言ってみたいです」

「あぁ~……いつか、な」


だから今は、この一瞬を大事に。

彼の人生を大きく変えたこの地で、また始めよう。


大丈夫。二人はきっと、泣きじゃくる息子に「おかえり」と言って、笑ってる。





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