#4
空振りするその手を、落ちる前に握る。
「ははっ……すごく不思議です。あれだけ怖かった暗い部屋も、准さんといると怖くないんだ」
表情を確認するのもやっとの暗さ。月の明かりがかろうじて、自分達を照らしてくれている。
今からやろうとしている事も。残酷なぐらい、優しく。
「触るのも、触られるのも怖くない。多分、准さんだからだ」
「涼……」
准は名前を呼んだが、首を横に振って、彼の掌にキスをした。
「俺も。ずっと怖くて、踏み出せなかった。でも今なら。お前となら、何でもできる気がするよ。……成哉」
「……!」
その呼びかけに目を見開いた時、体重を感じた。
愛おしい重みだ。かつてない感覚に身震いする。
「好きだ。成哉」
幸せだ。
幸せ過ぎて辛い。けど、嬉しい。
「一緒にいよう。ずっと、ずっと……これからは、俺がお前を守るから」
准は涼の口を強引に塞いで押さえ込んだ。そして彼の服をわずかにはだけさせる。
彼の細い手足、そこに見える傷痕が───まだ、痛々しいけど。
この身体も、……心も、癒してみせる。
彼と舌を絡めて、肌を重ねた。
「大好きだよ、成哉」
「有難いお言葉、どうもありがとうございます。俺も、准さんのことが大大大好きです」
「じゃあ俺は大大大大……いや、いいや。愛してる」
彼といると、ムードなんてあってないようなモンだ。せっかく作り上げたプライドも、身につけた価値観も、全部粉々に壊される。
まだ何も知らない子どもに返ってしまう。小さなことに一々感動していた、あの頃のように。
「准さん、好き。……好きだよ」
「うん。……ありがとう」
また逢えた。やっと想いが通じた。それが嬉しくて嬉しくて仕方ないんだ。目には見えないけど、心から望んでいた宝物。
かけがえのない幸せ。この夜もきっと一生、忘れはしない。




