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ファナティック・フレンド  作者: 七賀ごふん
答え合わせ

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112/130

#3



────東京に行ってくるよ。


地元を発つ前の日。心の中で告げて、両親の墓の前で手を合わせた。“彼ら”はそれをどう思っただろう。


きっと母なら「そんな遠くに? 大丈夫かしら?」、って。父なら、「よし、張り切って行ってこい!」って言った気がする。


大人になった。二十歳は、最高の歳。


一人の人間として認められる歳。あの詩がふと頭を過ぎる。


一個の人間でありたい。愛しあい尊敬しあい、力を合わせる。それの実に美しいこと。


でもあの詩には続きがあった。確か自由が云々というより、他人を利用する醜さを説いた詩だ。

生きるには綺麗なばかりじゃいられない。他人を利用する、その醜さを知る者こそ、一個の人間。


仮に利用はしなくても、他人に寄生する自分は充分醜く、卑怯に思えた。“信頼”なんて本当に便利な言いわけだ。何でも持ってた創に甘え、縋っただけ。

息苦しくて空を見上げると、星が目に入った。

あの時と同じ一等星も、今は自分を見下ろしている。


何だか急に、あの無数の星が怖くなった。


……綺麗過ぎたんだ。もっと汚ないものを見てる方が本当は落ち着く。


そういえば、あの売り払った家は。高校の卒業アルバムは。

……自分が今いる家は。


どこだっけ。分からない。

あの故郷と両親は、もう俺を待ってない。

東京に来てさらに独りになった。家が、星が、真っ白な両親の顔がフラッシュバックする。まるであの睡蓮のように綺麗な白一色。

その裏側には真っ暗な部屋。振り上げられる拳。冷たいシャワーの水。洗い流される血、血、血。


頼むからやめてくれ。

怖い。怖くてたまらない。


「すいません。……ほんとはすごく、怖い」


自分で言っておいて、笑いそうになった。

もう子どもじゃない。大人なのに何馬鹿なこと言ってんだって、怒ってほしかったけど。


「准さん。俺の家、なくなっちゃったんです。気付いたら一瞬で……ちょっと目を離しただけなのに」


でも、もうダメだった。目は熱いのに笑いが零れる。

「全部忘れて、やり直して、逃げ出したいよ。……ははっ、本当ガキみたい。一番幸せだった頃に戻りたいなんて。もうずっとずっと、ガキのままだ……!」

この胸の痛みは感心するほど成長した。

最近できたものじゃないけれど。長い長い時間をかけて広がった……傷、だけど。これだけは中々治ってくれなくて、むしろ醜く膿んでしまった。




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