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ファナティック・フレンド  作者: 七賀ごふん
10+8+2=青年

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101/130

#8



近々東京へ移る予定だった。

父の転勤が決まったからだ。その為に二人は東京で転居先を探していた。

いくつか気になってる家があると言い、父と母は下見に行っていた。それで帰って来たら、ここが良かったとか、あそこはどうだったとか……そんな話を聞かされると思っていた。

それで待っていた。だが二人が帰って来ることはなく、自分から二人に会いに行くこととなった。


薄暗い霊安室に佇み、息を飲む。

目を開けない、声を出さない、人。

もう怒ることもないし、褒められることもない。


「あ……」



自分を育ててくれた、父と母の姿がそこにあった。

彼らの時間だけが止まってしまった。生きてる人と、死んでる人。ここから先、自分と彼らはこの決定的な違いに逆らえない。

まだ親孝行なんてしてない。受験の事で心配かけたり、迷惑しかかけてないのに。


……どうしてこんな事になったのか。


その場で泣き崩れた。一生分とも思える量の涙を流し、その時に全て枯れ果てた。


葬式はあっという間だった。というより、自分が放心していたせいだと思う。準備や手続きが沢山あったが親戚が全て執り行い、自分は何もかも放棄する時間を与えられた。

しかし、涙が出ない。今も棺に入った二人を目の当たりにしてるのに、未だに信じられない。これは夢じゃないかと、朝起きる度に祈ったりもした。けどリビングに出ても誰もいなくて、何の気配もない。

夜はただ窓際に座って、星を見上げていた。こんな時ですら綺麗に輝いてんだから。歯痒い気もするけど、やっぱり毎日光ってて偉いな、なんて意味不明なことを考えていた。


人は生きていれば必ず死ぬ。それだけは絶対に覆ることのない唯一の真実。聞いてる時はそりゃそうだって納得してたのに、今はどう頑張っても納得できそうにない。

火葬が終わり、遺骨を見るその時まで信じ続けた。……二人は、まだ生きていると。


だが一年が経った頃には、そんな想いも灰のように燃え尽きていた。悔しくて悲しくて、子どものように喚き散らしたかったあの激情も、すっかり身を潜めて深い眠りについている。


きっと死んだんだ。

あの想いも、自分の中で。

それでも墓参りだけは頻繁に行った。何故なのか、あまり誰かと来たいとは思わない。

ひとりで打ち水をし、墓前の前に佇んだ。




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