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第9話

 特訓をする公園に着いた僕はサッカーボールがないことに気がついた。ボールがなかったら特訓できないじゃん。


 そう思っていたらボールを脇に抱えた薫がやってきた。


「遅くなってごめんね。待った?」


「僕も今来たばかりだよ。それでサッカーボールないじゃんってなってて困ってたところ」


「そうだろうと思ったの。だから瞬に事前に頼んで借りてきたから大丈夫だよ」


 なるほど、そのボールは瞬のか。サッカーやってるからボールはいくつか持っててもおかしくないもんね。


 瞬にアプローチをかけて一歩リードできたと思ってくれればいいんだけど。これも師匠の言うように行動だよね。行動して何歩もリードを重ねて瞬が薫のことが好きだと分かれば勝ちヒロインだと自覚できる。


 早く勝ちヒロインだと自覚して二人が付き合えば、僕もこの恋は諦めるという選択をすればいいだけ。というより、もう諦めるという選択をしてもいいのか。どうせ二人は両想いでうまくいくんだから。


 僕は諦める選択をして自分で稼ぐ、東大に行くという方に集中した方がいい。


「……え……ねえってば!晃弘聞いてる?」


「あ、ごめん何か言ってた?別のこと考えてて聞いてなかった」


「もう!ちゃんと聞いてよね!まずは準備体操をしてパスの練習を集中的にしようと思うんだけどいいかな?」


「そうだね。僕はまだインサイドキックが上手にできないし、力加減でどのくらい相手のところにボールが届くのかが分からないからその方が助かる」


 この公園はランニングコースがあるくらい広いから距離を十分にとって練習ができる。ちなみに昨日の夜ランニングしたのはこの公園なんだ。


「じゃあまずはインサイドキックに慣れるところから始めよっ!」


 ということで5mくらい離れてまずはインサイドキックの練習から。僕にとっては足を外に向けるのが難しい。まずはそこから慣れないと。


 一方の薫はサッカーを本格的にやってるんじゃないのかってくらいに慣れた感じでこっちにパスを出してくる。本当に身体能力が高いな。


 あれ?薫は今日は晒を巻いてないのかな?いつもよりお胸が強調されている。薫は自分の胸の大きさに対して僕ら男性の胸を見てくる視線がイヤだということで普段は晒を巻いてるんだ。


 それなのに動くたびに強調されるお胸。僕だって男だ。どうしてもそのお胸に目がいってしまう。視線、絶対バレてるよね?


「どう?インサイド慣れてきた?」


「う、うん。だいぶ慣れてきたよ」


「じゃあ今度は逆の足でやってみよっか」


「え?逆の足?何か意味があるの?」


 僕の基本右利きだから足も右利きだ。左で蹴るなんて絶対難しい。


「球技大会だからそこまでやる?って思うかもしれないけど、逆の足でやるのは球技大会抜きの話で左右のバランスを考えてのことなの」


「左右のバランス?」


「晃弘は右利きでしょ?右側を使うと左脳が働くの。逆に私みたいに左利きだと左側を使うから右脳が働くの。両方の脳をバランスよく機能させることができるようになると能力が高くなるって言われてるのよ」


「へえー。そうなんだ。ていうか薫が左利きだなんて知らなかったよ。文字を書いたりお箸を持つときは右だったからずっと右利きだと思ってた」


「学校ではそうしてるんだけど、家では左でやってるよ」


 薫が勉強も運動もできるのはそういうことが関係してたんだ。なるほどね。


 ということで左足でインサイドキックの練習を始めた。うわぁ、これはやりづらい。自分の体なのに全く言うことが聞かない。


 そう考えると僕は左側を使うってことをしてこなかったな。これも一つ勉強になったね。


「どう?左足で蹴るの慣れた?」


 特訓をして1時間半ほど。左側の重要性を理解した僕は結構ムキになって左足でのパスばかりを練習してしまっていた。


「最初よりかはできるようになった気がするけど、全然慣れないや」


「まあ最初はそうだよ。私も右手で字を書くの最初はすごい大変だったもん」


 師匠は経験したことは必ず糧になると言っていた。これからは左側を使うというトレーニングもやった方がいいかもしれない。


「どうする?今日はこれで終わりにする?」


「うん、終わりにしよう。左手を使って字を書きたくなっちゃった」


「ふふふっ!最近の晃弘、何か輝いて見える」


「そんな買い被らなくてもいいよ。ただ僕は色んなことにチャレンジしてみたいだけだから」


「そのチャレンジしようってことがすごいことなんだから」


 褒められながら薫と一緒に帰宅した。





 帰宅したあとは実際に左手で字を書くトレーニングをしてから夜のランニング、3匹の子猫達と戯れながら時間を過ごし、大木君とゲームをする時間になった。


「おまたせ大木君。今日は一日中ゲームをしてたの?」


 ボイスチャットを起動させて大木君のキャラと合流する。


「おう!今日は丸一日使って素材集めをしてたよ。かなり捗ったぜ。やっぱり休みの日は集中できるからいいな」


「自分のやりたいことに時間を作れるのはいいよね。僕も今日は充実した一日を送れたよ」


「お、それはよかったじゃないか。ということは狭山との球技大会の特訓もうまくいったということか」


「うん、新たな発見もあったからね。それで今日はどうする?今開催中のイベントのボスに挑戦してみる?」


「おお、いいねえ。じゃあ早速パーティー組もうぜ!」


 このイベントのボスは四人パーティーで挑む必要があるんだけど、パーティーを組んでる僕と大木君以外の誰かがランダムで二人選ばれる。


「いやー、ホント、速水がこのゲームやってたっていうのがよかったよ。俺の中学でやってた人いなくてずっとソロでやってたからな」


「それを言うなら僕もだよ。たまに野良で組むことはあっても知らない人だし、そこから仲良くなることはなかったからね」


 このゲームは月額料金がかかるから大人のプレイヤーの割合が多いんだ。僕と大木君は親からもらうお小遣いをやりくりして料金を支払いながらやっている。学生でやろうと思うとなかなかハードルが高いんだよね。


「うちの高校で僕達以外にやってる人っているのかな?」


「どうだろうな。せめてあと二人いれば四人パーティーが組めるからゲーム仲間は欲しいよな。でもお金の問題があるからなあ」


 そうだ、自分で稼ぐことができればお小遣いでやりくりしないでもゲームができるんだ。一緒に稼ぐことができればゲーム仲間も増やすことができるかもしれない。そんなことを思いながら大木君とゲームを楽しんだ。

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