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第7話

「おかえり。随分遅くまで遊んでたんだね」


「た、ただいま。遊んでいた訳じゃないんだ。そ、それよりえらい不機嫌だね」


「そりゃそうでしょ!もう1時間は待ってたんだから!」


 怒りを爆発させる薫。それならいるかどうかメッセージくれたらよかったのに。


「今日ので絶対負けヒロインじゃーん!めちゃくちゃショックだよー!」


「まさか行動を起こしてくるとは思わなかったよね。入学してから初だよね」


「ホントそれ。それで沖田美羽のこと、どう思った?」


「僕は正直怖かったよ。僕に対してと瞬に対しての対応が違いすぎて大木君も『女って怖い』って言ってたからね」


「あー、確かに全然違ったね。そう考えると今回の件はそんなに影響はないって考えた方がいいのかな?」


「うん、影響はないと思うよ。むしろイメージ悪い方にいった気がするよ」


「そっか!それなら安心だね!じゃあこれで帰るね!」


 いつもこうやって相談に乗って安心すれば帰るっていうのは僕としては寂しい。いつもならこれで終わりだけど、今日からの僕はそうじゃない。


「ちょっと待ってよ。折角だから僕の新しい家族見ていってよ」


「あっ……、う、うん!見たい!」


「じゃあリビングに行こう」


 昨日病院で検査をしてもらって病気とか異常はなかった。ワクチンも打ってもらったからミケと一緒にいられるようになったんだ。


「うわっ!かわいーい!ミケも見るの久しぶり!」


「薫ちゃんがリビングに来るのなんて小学生以来じゃない?」


 母さんが薫に話しかける。父さんはもう四匹にメロメロ状態だ。


「はい、そうですね。中学ではちょっと色々あって離れ離れになっちゃったんで、こうやって高校に入ってまた晃弘の家に来れて嬉しいです!」


 薫にとって僕のことは気軽に瞬のことを相談できる幼馴染でしかない。だけど、二人の恋が成就するまではこの役得を存分に利用しようと思う。


「今度は瞬君も誘って家の遊びに来て。昔みたいにワイワイやってる姿を見たいわ」


「そういえばもう三人で何かするってすっかりなくなってたなあ。今度は瞬も入れて久しぶりに遊ぼうか?」


「ねえ晃弘、何か変わった?晃弘から瞬や私と行動しようとするなんてこれまでなかったじゃん」


 今日師匠に言われたことで気づいたんだ。別に僕が二人に遠慮しなくても今の関係性は崩れない。だったら僕が一歩引いて二人の邪魔をしないようすることは無意味。だから僕は僕のありのままでいいんじゃないかって。


「この子達のおかげで色々とあってさ。これから僕は行動の鬼にならないといけないからね」


「ふふっ、何それ。何か昔の晃弘に戻ったみたい」


「昔の僕?今の僕とそんなに違う?」


「うん。私達離れ離れになっちゃったじゃない?それまでの晃弘はそうやって真面目なんだけど面白おかしくやってた。でもそのあとの晃弘は何か苦しそうで暗くなっちゃったからさ」


 薫は観察力がすごい。師匠もそうだけど人を見抜くってそれだけ色んな人を見てないとできないと思うんだ。瞬のことばっかり追いかけてると思ったけどそうじゃなかったんだね。


「そろそろ帰るね。おじさん、おばさんお邪魔しました。晃弘、明日から特訓だからね。ちゃんと公園来なさいよ」


 ……危ない危ない。そうだ、何を忘れてたって大木君とのゲームの約束もそうだったけど球技大会の特訓をするんだった。


「う、うん。もちろんだよ。よろしくお願いします」


 このゴールデンウィークは師匠の元で修行の予定だったけど、ちょっと変更しないといけなくなったね。師匠の言う通り、スケジュール管理はしっかりしなくちゃいけないのがよく分かった。これからはカレンダーアプリを使ってしっかりスケジュールを入れておこう。


 薫が帰ってから両親に師匠と約束した決め事などを話した。


「いやー、なかなか厳しいことを言い渡されたな晃弘。流石宮田社長だ」


「師匠ってそんなのは当たり前だという感じだったけどね。ちなみに師匠ってやっぱりすごいの?」


「すごいもなにも。うちの会社の社長は社長室でどっしり構えてるだけ。でも宮田社長はちゃんと現場に出て自分でやって従業員の声をしっかり聞きながら経営をされてる。どの会社も宮田社長の行動力には頭が上がらないって感じだ」


 なるほど、師匠自身が行動の鬼なんだね。そんなすごい人が経験のためにホームレスをするなんて本当に変わった人だ。


「とりあえずランニングしてくるよ」


「最初だから無理はしちゃダメだからね」


「うん、いってきます」





「ハア、ハア。結構走ったな」


 時計を見るとまだ10分しか経っていない。嘘でしょ……。あとこれを6回やるようなもんだよね……。


 自分の体力がどれだけないのかが痛感できた。これは毎日走って体力つけなきゃダメだ。


「ゼエ……、ゼエ……。お、終わった……」


 途中で今日はもうこれくらいでいいかと思って何度も思ったけど、なんとか1時間やり終えた。


「た、ただいま……」


「おかえりー!その様子だとちゃんと1時間走ったみたいね」


「何度もやめようと思ったけどね。でも初日で心折れてたらダメだ!って折れない選択をしてたら1時間経ってたよ」


 お疲れさまと言わんばかりにツキとモンが僕の足元にやってきたので手を出すと顔をスリスリさせてくる。タマは僕の汗の匂いをクンクン嗅いでいる。


 ミケは僕のことなどお構いなしにソファで寝そべりながらシッポをゆっくり動かしている。あれはあれで労ってくれているのかな?


「明日は朝から1時間勉強やるんでしょ?じゃあもう寝る支度しないといけないわよ?」


 時刻は21時半。朝の5時から勉強しようと思っているから23時には寝ないといけない。睡眠時間のことも考えるとこれからはあまり大木君とゲームできないかもしれない。


『大木君ごめん。これからあんまり一緒にゲームできないかも』


 メッセージを送って風呂に入る。湯船につかると蓄積した疲労が抜けていくような心地だった。


「あー、極楽、極楽」なんて言葉が少し分かった気がする。気持ちいい。


『了解。それにしても何かあったのか?』


 風呂から出ると大木君からメッセージが来ていた。時刻は22時半。30分くらいはいいか。僕はオンラインゲームにログインしてボイスチャットをしながら大木君に理由を説明した。

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