第64話
「まずは瞬君!初の全国大会お疲れ様でした!それとご家族の皆さんも応援お疲れ様でした!そして薫ちゃんとそのご家族も応援お疲れ様でした!疲れもあるでしょうが、今日はパーッと忘れてみんなを労いましょう!乾杯!」
父さんの音頭に合わせてみんなでグラスを掲げ、「かんぱーい!」と声を上げて飲み物を胃の中に流し込む。
この場には中西家の瞬と瞬の両親、瞬のお兄さんが、狭山家の薫と薫の両親、それと薫のお姉さん夫婦が参加している。みんなして応援に行った帰りだというのにテンションが高い。
「あら、速水さん家は猫が増えたのね!3匹も増えてるじゃない!」
瞬のお母さんに近づいたタマが捕獲されてスリスリされている。瞬が動物好きなところはお母さんの遺伝なんだろうね。瞬のお父さんは猫に近づかれたらどうしようって感じではいるけど、お酒が入ったからもう少ししたらどうでもよくなると思う。
薫のお姉さんもミケを持ち上げて膝の上に乗せて撫で始めた。ミケはこういう時は大人しくされるがままになるので賢い。
僕は瞬と薫の三人で全国大会までの話と全国大会中の話をしながら盛り上がり、父さん達はお酒が入ったのもあってそれぞれに積もり積もった話も含めて盛り上がっている。
それから少しして瞬がお父さん達男衆に連れていかれ、薫はお母さん達女衆に連れていかれてそれぞれサッカーの話題や学校の話題、最近の僕のことを話題にして盛り上がり出した。
僕だけポツンとなった感じだったけど、ちょうどいい。このまま時間が来れば寝るという名目で自然にフェードアウトできる。
いつのタイミングで抜け出すかを考えながら時間を過ごす。ちょうどツキが僕の部屋に向かおうとしたのでここだ!ということで
「盛り上がってるところすみません。僕は明日があるのでこれで寝ます。みなさんお疲れさまでした。おやすみなさい」
そう言って部屋を出て自分の部屋に戻った。僕はすぐに暗めな服に着替えてソーッと家を抜け出した。リビングからはかなり盛り上がった声が聞こえているから僕が出て行ったことはバレていないと思う。
家を抜け出して公園に到着。ここから二人が来るまで待機となる。ちゃんと二人で抜け出して来られるかな?来てくれないと何のためにここに来たのか分からないからそこだけはしっかりしてほしい。
時間は22時。もう少ししたら来るだろうと僕は茂みの中にしゃがんで二人が来るのを待った。
途中、大木君からメッセージが来たからそれに返したりして時間を潰すこと15分。公園のベンチの前に瞬と薫が現れた。
「親父達うるさかったなあ。薫も思わなかった?」
「うん、うるさかったねー!でもあんなにはしゃいだのって最後にああやって三家族でやったクリスマス会以来じゃない?」
「確かに!そう考えると4年ぶりくらいになるのか」
ベンチに座り隣り合う二人。うんうん、いい雰囲気じゃないか。
「瞬は本当にお疲れ様だよね。今日試合やって負けたのに全然平気じゃん」
「負けた瞬間は悔しかったけど、自分の力が全国で通じたっていう手ごたえはあったから次を目指そうって気持ちに切り替わったな」
「疲れは出てないの?愛知は暑かったし、大会中はサポートできなかったから大丈夫かなーとは思っていたんだけど」
「思ったより疲れてない。このまま冬の選手権大会に向けて練習が始まるけど何とかなりそう。薫のサポートがあったからな。ホントサンキューな!」
「い、いや、そんな感謝されるほどのことはしてないよ。ただ食事とマッサージをしただけし……」
瞬に感謝されて照れている薫。照れる薫を見るのは珍しい。多分二人きりだからこそ見せられる姿なんだろうね。
「それでさ、今から大事な話をするから聞いてくれるか?」
「話?うん、いいよ。どんな話?」
「今回の全国大会までの約1ヵ月くらいだと思うんだけど、薫のサポートがあってホントに助かった。おかげで自分のパフォーマンスを最大限発揮することができた。これは間違いのないことだ。本当にありがとう」
「だ、だからそんなに改まって言わなくていいよ。恥ずかしいじゃん」
「それで思ったんだよ。薫と過ごした時間ってすごく心地いいなってさ。もっと薫と一緒にこの時間を過ごしたいって思ったんだ。だからこれからも一緒にその時間を過ごさせてくれないか?」
「え?それってどういう……」
「ずっと前から好きだった……。多分小学生の5年生くらいの頃かな。自然と目で薫を追っていた。薫の行動一つ一つが気になった。それが好きになり始めたってことだったんだと思う……。中学の時、完全に薫のことが好きだって自覚した。それからはずっと薫のことを想ってサッカーも頑張った……」
「瞬……」
「でも中学の途中で晃弘とも薫とも疎遠になっちまった……。それでも薫のことを好きな気持ちは変わらなかった。むしろもっと好きになっていった。薫と同じ高校に入ったのも薫のことが好きだったからどうしても一緒にいたくて受験したんだぜ。それくらいに薫のことが好きなんだ」
「そうだったんだ……」
「高校に入ったらまた三人でも行動するようになって俺、すげえ嬉しかったんだ!それで改めて薫と付き合えたらって思うとどんどん力が溢れてくる感じがしてさ。全国大会へ進出できたのも薫がいてくれたからだと思ってる。それくらいに薫のことが好きです!俺と付き合ってくれませんか!?」
ついに言った!二人きりだとは言え、勇気を出して言葉にすることは難しい。それくらいに重い言葉だ。
「ありがとう、そんなに想ってくれていたとは思わなかった。でも、ごめんなさい」
えっ!?今何て言った?「ご・め・ん・な・さ・い」?ちょっと待って!どういうこと!?
「あー!やっぱりダメだったか……!そうかなとは思ってたんだけど振られるってきちいなー!試合で負けたよりきちい!」
がっくり項垂れる瞬。いやいやいや、この展開はおかしい!どうなってるんだよ!
「じゃあ最後に俺を振った理由だけ教えてくれるか?」
「だって私、晃弘が好きだもん」
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!
次回、答え合わせも含め本編最終話です。




