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負けヒロイン負けヒロインって言ってるけど勝ちヒロイン確定だから!  作者: パミーン


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第38話

 土曜日。目が覚める。昨日寝つけなかったから睡眠時間が足りてないのが分かる。仕事大丈夫かな?


 朝の一時間の勉強を終え、リビングへ行くと珍しくミケが僕のところへやってきて体を擦り寄せてきた。いつもはまだ父さんと一緒に寝ているはずなのにどうしたんだろう?


「おはよう母さん。今日も僕のために早く起きてくれてありがとう」


「お父さんも晃弘も仕事頑張っているからね。応援してあげないとね!」


「ニャー」


「ほら、ミケも応援してくれてるよ」


 応援か……。僕はまだ仕事のことを公表できないから仕方ないけど、応援してくれる家族がいるんだ。すこし元気になった。応援ってすごい大切なんだな。


 今日の天気は曇り空。雨は降らなさそうだと思うけど、多くの生徒が応援に行くんだろうな。全国を目指すためには通れない大事な試合だ。瞬ならきっとなんてことなく勝ってくるような気がする。


 雨が降ったら困るからカッパを持っていこう。リュックにカッパを詰め込んで濃山駅まで自転車を飛ばした。


「皆さんおはようございます!こうやって七人もいると、結構な数ですね」


 清水さん、一条さん、青木さん、立花さんの新メンバー四人もホームレスの格好から作業着姿になっていた。この散髪代や作業服代は僕が出した方がいいんじゃないかな?あとで師匠に聞いておこう。


「おお!すごい人数だ!おはようございます皆さん!」


 初回同じ現場リーダーの木下さんがやってきて、メンバーの多さに驚いている。


「おはようございます!エイチエーサービスの速水です!今日は僕を入れて八名で参加させていただきます!どうぞよろしくお願いします!」


「速水君、君は本当に高校生かい?こんなに従業員さんがいるなら1現場全部任せることもできそうだ」


「いつか全部任されるように頑張ります!」


 今日の現場はかなり大きいオフィスの定期清掃で、トリプルチームを組んで行うらしい。そういう訳で今日は人手が欲しいということで僕達が入ることになった。


「お、飯山君達はもう到着していたか。おはようございます、飯山君」


 車が現場に到着すると、すでに四名現場に来ていた、その内の一人が飯山さんなんだろう。


「おはようございます木下さん!今日は人がいっぱいいますねー!助かりますよ!」


「おはようございます!エイチエーサービスの速水と申します!今日はよろしくお願いいたします!」


「ああ、君が話題の高校生個人事業主の速水君だね。俺は飯山クリーンって会社の一応社長をやらせてもらってる飯山だ」


 飯山さんは専門の清掃業者らしく、他の三名は飯山さんのところの従業員ということだった。


「では、これからこの十二名を3つのチームに分けて作業を行います。飯山さんのところで3チームに分かれてやってください」


 前回作業をやった広瀬さん、鴻巣さん、根本さんを別々にしてそこに新たな四人を振り分けることにした。そうすれば分からないことがあれば聞けるからね。


「じゃあ速水君は今日はポリッシャーもやりながらワックスがけも覚えようか。そうすれば速水君は一通りの作業は行えるようになれる」


「承知しました!しっかり覚えさせていただきます」


 今日のオフィスは9階建てのビル。つまり1チームが3フロアを担当するということになる。僕は飯山クリーンの白田さんと鴻巣さん、新メンバーの一条さんとチームを組んで作業を行った。


 最初はポリッシャーをメインに作業を行い、かっぱぎとモップがけが終わってから白田さん指導の元、ワックスがけを教えてもらった。ワックスを薄く伸ばすように塗りムラがないように塗っていくのは最初よく分からなかったけど、やっていく内にムラがあるかないかが目で見て分かるようになった。


 昼休みに入る前に2フロア目の後半くらいまでが終わったから早く終われそうだ。


「聞いてくれ速水少年。どうやら青木さんは以前清掃会社に勤めていたみたいで一通りの作業ができるから助かったよ」


「えっ!青木さんそうだったんですか?」


「ああ、一応な。もうだいぶ昔の話だからついていけると思っていなくて黙っていたんだ」


「ついていけると思っていなかったどころの話じゃない。達人って感じで凄かったよ。飯山クリーンの人も驚いていた。手際が良すぎてしかも速いって言ってたよ」


「立花さん、そんな褒めないでくれ。これでも全然ダメだ!って言われてたくらいなんだから」


 きちんと評価をされない会社で働くとどうしても自分の実力を過少評価してしまうんだろうね。それで自信を失くしてしまう。江口さんも自信を失っている感じがした。


「じゃあ僕も頑張って早く皆さんが平日も現場に入れるように勤怠システムを作らなきゃ」


 みんなで雑談をしながら昼休みが終わり、16時ごろに全フロアの清掃が終わった。


「皆さんお疲れ様でした!この現場が一日で終われたのはものすごくでかいです。エイチエーサービスの方々はありがとうございました!」


 木下さんから締めの言葉をいただき、あとは車で駅前まで移動するだけとなった。


「いやー、俺達だけで9フロアはきついし、一日じゃ終わらなかったからマジで助かった!速水君のところの人達もすごい人がいたみたいだし、みんな連携が取れていたからこれからバンバン仕事が入ってくると思うよ。俺もまた速水君とは仕事がしたいって思ったよ」


 そう言われるとやってよかった!って思えるからすごく嬉しい。モチベーションも上がるしね。飯山さんと握手をして僕達は車に乗って移動し、集落まで戻ってきた。


「はい、では本日のお給料です。お疲れさまでした」


 僕は一人ずつ、日当1万円を手渡しで渡しまわった。


「おお!この瞬間が一番嬉しいな。これでスマホに一歩近づいた」


「もう何年ぶりだろうか、お給料をもらうのなんて……」


 広瀬さん達も新メンバー四人もそれぞれ思い思いに感想を漏らしていた。


「みんなお疲れ様。今日は大変だったみたいだね」


「お疲れ様です師匠。青木さんが大活躍だったみたいです」


「ほう、それはよかった。ここの人達が自分を取り戻していくのを一番の特等席で見られるのは嬉しいもんだ」


「それで皆さんの散髪代や服代は僕の方で出した方がいいでしょうか?」


「ああ、それは気にしなくていい。私からの社会復帰祝いだからね」


「なるほど、そうだったんですね。今回も事前にお金を用意してくださってありがとうございました」


「最初は仕方ないからな。ちょうどいい。請求の件なんだが、明日の現場作業分までを今月分として締めてくれ。事前に渡した20万円は前受金として相殺した金額で請求書を発行するように。請求書は赤羽君に提出してもらえれば来月の20日に振り込む予定だ。銀行の口座はもう開設したかい?」


 あっ!完全に忘れていた!どうしよう。口座開設しに行かないと。

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