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負けヒロイン負けヒロインって言ってるけど勝ちヒロイン確定だから!  作者: パミーン


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第33話

 週が明けて月曜日。事務所で大木君に今週のノルマについて説明をした。


「なるほど、俺は動画編集をしながらやり方をマスターしていく方式になったのか」


「そうそう。だからこの動画1本はなんとか今週やってほしいんだよ」


「分かった!そうと決まったら早速取りかかるわ」


 今週は資料作成が2本、動画編集が5本、画像編集が3本となっている。それにしてもよくも次々と仕事をもらえるよね。動画なんかも研修用の動画から配信者の動画と幅広いジャンルがある。


 こういう作業はカンジエスでもやっているのかな?捌き切れなくて僕に来てるんだろうか?今日は師匠のところに行くから聞いてみるか。


 朝の作業時間はあっという間に終わり、僕と大木君が教室に入るとこの前よりもさらに人だかりができていた。


「あれ?薫、なんで僕の席に座ってるの?」


 薫がなぜか僕の席に座って人だかりの方を見つめていた。


「おはよう晃弘。瞬が一昨日と昨日の試合に勝ったから祝福しにみんな集まってるんだよ。そのせいで自分の席に座れないからこっちに避難してるの」


「なるほどね、こんなに人が来てるんだからよっぽど活躍したんだろうね」


「そうなの!昨日なんか瞬がハットトリックを決めたんだから!すっごくカッコよかったよ!」


 やっぱり瞬はすごいなあ。まだ一年生だというのに活躍なんてそう簡単にはできないはずなのに、それをやってのけるんだから。


「こらー!さっさと自分のクラス、席に戻りなさーい!」


 緒方先生がこの前と同じようなことを言ってやっと静かになった。


「来週で6月も終わりです。7月の頭に実力テストを行います。全国の高校がおおよそ参加する模試なので、全国で自分がどの位置にいるのか分かるテストになっています。また、自分の行きたい大学の合格判定が出ます。まだ1年生なので、結果はそんなに難しく考えないでください。判定が悪くても今からなら十分間に合いますから」


 これが師匠の言っていた全国模試だね。僕の実力はどれくらいなんだろうか?結果次第では勉強量を増やさないといけないけど、仕事も疎かにできない。特に仕事の方は広瀬さん達がスマホを持って平日も仕事にいけるように勤怠システムも作らないといけない。


 24時間が短いと感じるなんて思いもしなかった。もっと時間が欲しい。


「なあ晃弘、しばらく大木との仲に俺も入れてくんね?」


 休み時間、瞬が僕のところへやってきた。


「別にいいけど、どうしたの?」


「今朝みたいにああやって集まられるの困るんだよ。みんなに迷惑かかるしさ。あと次の試合のために集中もしたいけど、それもできない。だから友達と駄弁ってる感を出して近づけさせないようにしたいんだ」


「そういうことなら俺達は問題ない。スーパースターも大変だな」


「俺はスーパースターじゃねえって。たまたま昨日は調子がよかっただけなんだよ」


「あー、薫に聞いたけどハットトリック決めたみたいだね。すごいじゃん」


「ホントにたまたまだよ。ハットトリックよりもチームが勝てたことの方が大きいからな。全国にまた一歩近づいた!」


 瞬が僕達のところにいたからなのか、今朝のような人が押し寄せてくるようなことはなかった。次の休み時間も同じように瞬がここに来て主にサッカーの話題になっていた。大木君がサッカーをやっていたから話しやすかったんだと思う。


 そして次の休み時間になり、同じように瞬が僕達のところに来た時だった。


「速水晃弘はいるか!?」


 教室の入口には先週に引き続き、濃山の女帝こと宗像先輩が現れた。


「うわっ!濃山の女帝だ!そういえば先週の金曜の帰りも来て晃弘が返り討ちにしたんだったな」


「誰が返り討ちに合っただと?」


「ひいっ!すみません!何でもないっす!」


 気づけば僕のところまで宗像先輩は来ていた。瞬は言ってしまったって顔で宗像先輩に震えていた。教室のみんなも先週同様シーンとしている。


「何の用ですか?先週も言ったと思うのですが……」


「だからちゃんとアポを取りに来たんだ。話がある。時間をくれないか?」


「ここではできない話なんですか?」


「そうだ。だから時間をもらって私についてきてもらいたい」


「申し訳ありませんが、そんな時間が僕にはありません。ですがお昼休み、この前の場所に来ていただけるのならその時にお話は伺いますよ」


「分かった。それでいい。では昼休みということで」


 そう言って颯爽と教室を出て行った。宗像先輩がいなくなったことで教室が騒がしくなった。


「なあ晃弘、なんでお前女帝に対してあんな態度取れるんだ?」


「そうなんだ中西。俺も速水が全く物怖じしないところが不思議でたまらない」


 僕はみんなより少し早めに社会に出てるけど、あんな高圧的な態度をとっていた大人を見ていない。もしかしたら江口さんが働いていたブラックな会社なら違うのかもしれないけど、みんな優しいし、チームとして仕事をしたりして会社を、そして社会を良くしようとしている。


 それなのに風紀委員長だからってだけであんな態度は流石にないと思うんだ。偉そうにされる覚えなんてない。だからそんなの全然怖いとも思わない。


「なあ晃弘、今から女帝のところに行くのか?」


 昼休みに入り、瞬が僕のところにやってきた。


「うん、行くというより来るんだけどね。昼休みだけは僕と大木君だけで過ごしたいんだ。だからごめん」


「了解!俺もサッカー部のやつらと飯を食う予定だったからそれを言おうとしたんだよ」


「それじゃあまた次の休み時間で」


 瞬にそう告げて僕と大木君は事務所へ向かった。すでに向井さんは来ていて勉強モードに入っていた。


「向井さんごめん。これから宗像先輩が来るんだ。でも勉強はしてていいからね」


「え!?またあの人来るの!?めっちゃ怖いんだけどー!」


ガラガラ!


 引き戸が開き、宗像先輩ともう一人女子が現れた。あれは濃山四天王の一人、現生徒会長の黒羽先輩だ。


「速水君、時間を取ってくれてありがとう。それで今日話したかったのは先日の許可の件だ」


「まだそんなこと言ってるんですか?緒方先生に確認を取りましたけど、別に生徒会には報告する必要はないと仰っていましたよ。それなのにまだ許可云々仰るんですか?」


 僕の言葉に黒羽先輩は口を開けて固まっている。どうしたんだろう?


「な、凛音。なかなかに厄介な奴だろう?」


「ええ、宗像先輩に向かってここまで言える人はそうはいません。あなたの名前を伺ってもいいかしら?」


「速水晃弘と申します。失礼ですが、名前を聞くときは自分の名から名乗るのが礼儀ですよ、黒羽先輩」


「っ!!」


 目を見開く黒羽先輩。そしてそれを見てキッと睨む宗像先輩。


「速水君!それが先輩に対する態度か!?」


「僕が失礼なことを言ってるというより、あなた方の態度の方が問題ですよ。学校の先生よりもあなた方の方が偉いんですか?もし、この事務所を使わせないというのであれば、僕もそれなりの行動に出ますよ?」


 あんまりこういうので師匠を巻き込みたくないけど、実力行使をしてくるなら対抗してやるってくらいには僕の闘志はメラメラしている。


「すまん、私達の態度が悪かった。今回はまずそれを謝ろうとしていたんだ。それとこの空き教室を使ってもらうのは構わない。私達も先生に確認をとって使用していいという話になっていることは確認済みだ。ただ生徒会長には知っておいてもらった方がいいから今日はここに連れてきた。それだけだ」


「そうでしたか、早とちりをしてしまい、申し訳ありません」


 赤羽さんに教えてもらったお辞儀をキレイに決めて頭を下げる。顔を上げるとポカーンとした二人がいた。


「速水君、君はビジネスマンか何かなのか?」


「さあ、どうでしょうね」


 実際ビジネスマンと名乗ってもいいんだろうけど、まだ半人前だから濁すことにした。


「それで速水君に聞きたいんだけど、ここでは何をしているの?」


「昼休みにこちらの二人、大木君と向井さんと勉強会をやっています」


「それだけのためにこの教室の使用許可を願い出たの?」


「もちろんそれ以外にも使用しているんですが、それは言ってはならないと言われているのでご理解いただきたいです」


「分かった。それ以上は聞かないでおこう。凛音、戻ろう」


「はい先輩。ではまた近々お会いしましょう、速水君」


 そう言って宗像先輩と黒羽先輩は事務所を出て行った。

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