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負けヒロイン負けヒロインって言ってるけど勝ちヒロイン確定だから!  作者: パミーン


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第27話

「なるほど、今週からノルマをこなす感じになるのか」


 フリーの時間になったのでメールの詳細を読んで思わず独り言ちてしまった。


 先週は動画編集や画像編集が日毎に追加されていたけど、今週からはすでに送られている内容を今週中にこなすというノルマ制に変わっていた。


 多分僕が師匠にパソコンを使った仕事を一人手伝ってもらうって伝えたからだと思う。


 今週は資料作成1件、動画編集3本、画像編集5本というのがノルマのようだ。


 これをもう一人とこなしなさいということだ。もう一人とは――それは大木君だ。大木君は前々から僕と一緒に行動していて僕が何かをしているというのは分かっているけど聞いてこない。


 本当は知りたいはずなんだ。そして僕自身も黙っているのも悪いとずっと思っている。いい加減伝えたいんだよね。


 それに大木君も稼ぐことができればゲームの月額料金も気にせずプレイできるからメリットはあると思うんだ。


 このあとゲームをするときに相談しよう。ということで今は僕ができることをしないと。まずは画像編集から始めよう。画像編集は僕からするとそこまで難しくないし短時間で終わらせられる。


「やっほー晃弘!今日も画面とにらめっこ?」


「え?薫!?こんな時間にどうしたの?」


 画像編集に注力して21時が過ぎた頃、突然薫が部屋にやってきた。


「何!?私が来ちゃダメなの!?」


「いや、20時ならまだ分かるよ。もう21時だよ?来るとは思わないから驚いたんだよ」


「さっきまで家庭教師が来てたからね」


「家庭教師って21時までやってるの?」


「そうだよ。19時から21時の2時間を週3日!」


「結構ハードだね。部活終わりからすぐ家庭教師って」


「うん、まあね。でも行きたい大学が決まったから受かるためには頑張らないと!」


「へえー、もう大学決めたんだ?すごいね!」


「何言ってるの?晃弘だってもう決めてるじゃん!」


「あ、そうだった。それでどこ受けるの?」


「それは今は内緒。時期が来たら教えてあげる」


「ちょっと待って、話がズレてた。僕に何の用があってきたの?」


「用がないと来ちゃダメなの!?」


「いや、別にいいけど瞬のとこにも行ってあげなよ」


「あのさ、今瞬の状況分かってる?全国目指して集中してるんだよ?邪魔できないでしょ?」


 ああそっか、瞬は負ければ終わりという戦いの最中だった。そりゃ好きな人の邪魔はできないよね。


「今日もまた画面とにらめっこしてるんでしょ?私に気を遣わないでいいからやってていいよ。私はツキと戯れるから」


「なんだ、ツキ目的だったのか」


「そういうこと!ツキと一緒に過ごすことで得られる成分があるんだよ」


「ふふっ、何それ。まあ言いたいことは分かるけどさ」


「ニャー」


「ほら、ちょうどいいタイミングで来た!ツキー、おいで―」


 まあツキと戯れたいというのなら別にいいか。とにかく僕は画像編集を進めないと。


 大木君が一緒に仕事をしてくれるかどうか分からないのに見切り発車をしてしまった。もし一緒に仕事をしないということになったらこのノルマを一人でこなさないといけないからね。


 あっという間に1時間が過ぎて22時になった。とりあえず今日はここまでだ。


「何をやってるのか分かんないけど、すごい集中力だね」


「そうかな?ただ単に必死になってただけだけどね」


 薫の足の上でスヤスヤ眠ってるツキ。最早僕よりも薫の方に懐いている気がする。


「短時間だったけど、成分を補給できたから帰るね!」


「うん、おやすみ」


 さあ、大木君にカミングアウトの時間がやってきた。いつものようにゲームにログインしてボイスチャットを繋げる。


「おし、今日は何をする?」


「その前にさ、大木君に今僕がやってることを伝えたいと思ってさ」


「今やってること?前に言ってた速水の事情ってやつか?」


「そうそう。大木君には言ってもいいって許可をもらったんだよ」


「そうか、じゃあ今日は釣りをしながら話を聞かせてもらおうか」


 ということでゲーム内で釣りをしながら大木君に僕のやっていることを説明した。途中魚がヒットしたりして中断されることはあったけど、一通りの説明はできた。


「やっぱり速水は只者じゃなかったな。そんなすごいことをやっていたとは思わなかったぞ」


「それで一緒に仕事をしたいという件についてはどう?」


「要は速水の会社でバイトするみたいな感じだろ?変なところで働くよりかはいいからな。もちろんOKだ!」


「じゃあ明日はなるべく朝早めに事務所に来てもらえる?」


「速水はいつも何時に学校に着いているんだ?」


「8時には着いてるよ」


「なるほどな。これまではホームルーム5分前まで仕事をしていたということか」


「仕事自体は明日からだよ。今までは勉強してたんだ。先週の金曜日にノートパソコンが手に入ったからね!」


「そうすると俺もノートパソコンを持って行った方がいいか?」


「大木君持ってるの!?」


「言ってなかったか?俺はいつでもどこでもゲームができるようにゲーミングパソコンはノートだ」


「そうだったんだ。じゃあ問題なく仕事ができるね。あとは報酬についてだけどどういう風にしたらいいと思う?」


「それは俺に聞かれてもな……。速水がどうやってお金をもらってるのか分からないからな」


「パソコンでやる作業については一案件あたりいくらって感じでもらうことになってるんだ」


「それなら折半というのはどうだ?」


「一応会社の利益というのは残しておかないといけないんだよ。だからもし折半になったとしても粗利を差し引いた金額を折半ってことになるね」


「何を言ってるのかよくは分からんが、折半にできるならそれでいいんじゃないか?」


「じゃあ粗利30%を引いた金額を折半ということにしよう。今週分のノルマをこなせば僕と大木君の折半額は大体2万円くらいになるよ」


「ということは月に大体8万円くらいは稼げるということか。それだけもらえれば十分だ。おっ!当たりがきた!」


 このあと大木君は長いバトルの末に2m級の魚を釣り上げた。大木君曰く、自己新記録を達成できたということで大喜びしていた。

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