第22話
今日は中間試験1日目。中間試験は主要教科の5教科のみで今日は3科目、明日に2科目を行って終了となる。
朝の1時間の勉強でテスト範囲の再確認をする。朝に1時間の勉強をする習慣がついたおかげで余裕を持って朝の時間を過ごすことができるようになった。
今まで朝は忙しない感じだったけど、余裕ができたことでそれ以降の時間も落ち着いた行動が取れている。この感じだとテストも落ち着いて解けそうな気がする。
学校に着いたらいつもは事務所で勉強をしていたけど今日は普通に教室へ直行。すでに半分くらいの人が来てテスト範囲の見直しをしていた。
「おはよう速水。調子はどうだ?」
「おはよう大木君。僕は問題ないよ。あとはやるだけって感じかな」
「まあそうだよな。ここに来て悪あがきしたところで何も変わらないだろうからな。それで試験が終わったらゲームは再開しても大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。今色々やってるから、あのゲームをやってる時間だけが唯一の休息みたいな感じなんだ。だから明日テスト終わったら早速プレイしよう」
「おお!それならよかった。じゃあ俺もゲームのために気合い入れて試験に臨むか」
「ゲームのために試験で気合いを入れるっておかしな感じだね」
速水君とそんな話をしているとホームルームが始まった。
「では今日は中間テスト1日目になります。3教科の試験が終わったらすぐ下校になります。帰りのホームルームもありません。学校には居残りできないので注意してください」
緒方先生からアナウンスがあり、まずは英語から試験がスタートした。
※
中間試験1日目が終了。午前中で終わったから時間ができた。僕は師匠のところへ向かった。
「こんにちは師匠。今日はテストで早く終わったのでここに来ました」
「やあ速水君。試験勉強はしなくても大丈夫なのかい?」
「今回の試験範囲はしっかり勉強したので大丈夫です。今日は時間があるので師匠の講義とカンジエスでスキル磨きの両方をやろうと思っています」
「いい心がけだ」
「おや、速水少年じゃないか。今日はやけに早いじゃないか」
そう言ってやってきたのは広瀬さん。それと広瀬さんに連れられて鴻巣さんと根本さんがやってきた。
「こんにちは皆さん。テストで学校が早く終わったんです。今日は広瀬さんだけじゃないんですね。どうされたんですか?」
「鴻巣さんと根本さんも速水少年を見て応援したくなったみたいなんだ。それで今日からは俺だけじゃなくてこの2人も宮田さんの講義を聞かせてもらおうと思ってるんだ」
「広瀬さんよ。俺達みたいなのが途中から講義を聞いても理解できるのかい?」
「俺は全く理解できてないよ。ただ速水少年の一生懸命な姿を見ているだけだ。早く速水少年が独り立ちできるのを楽しみにしているだけさ」
師匠の言う通り、このホームレスの集落でも少しずつだけど変化が起こっているようだね。
「速水君、試験が終わったら特に何か大きい行事はないね?」
「はい、夏休みまでは特にないです」
「じゃあ少し早いが実戦に入ろうか。広瀬さん達も早く速水君と仕事がしたいだろうからね」
「自分ではまだまだだと思いますが大丈夫でしょうか?」
「完璧になってから実戦に入ろうとするんじゃなくてまだできていなくても実戦に入ることが必要なんだ。実戦でしか学べないことはたくさんあるからね。経験を積みながら勉強も怠らずに頑張る。これが重要だ」
「承知しました。試験が終わったら実戦に入りたいと思います」
「では明日、試験が終わったら開業届の手続きを済ませよう。それと業務委託契約を結んで銀行で口座開設。土日など1日動ける日は肉体労働系の仕事をやってもらう。それとこれから私のところへ来るのは週に1回でいい。できれば月曜に来てもらうのがいいな。それで私から1週間のスケジュールを伝える。それ以外の日はカンジエスで赤羽君達の指示の元、業務に携わってくれ」
「承知しました。ついに来たって感じがしてワクワクしています」
「今より大変になると思うが速水君なら乗り越えられる。しんどい時もあると思うが頑張るんだよ」
「宮田さん、速水少年が肉体労働をやるっていうんなら俺達も参加してもいいのかい?」
「ああ、そのつもりだよ広瀬さん。速水君が仕事に慣れたら速水君の従業員という形で現場に入ってもらおうと考えているよ」
なるほど、僕が広瀬さん達を雇用するってことか。そうなると雇用契約書とか作る必要があるね。
師匠と広瀬さん達と談笑をして僕はそろばん教室へ向かった。
※
テスト2日目が終わり、テストから解放されたからかみんなテンションが上がっている。帰宅部組は打ち上げしようとか言っている。テストで打ち上げだなんて聞いたことがないよ。何かにつけて色々やりたいんだろうね。
僕は家に帰って母さんを連れて税務署で開業届とその他関連書類を提出し、正式に個人事業主となった。そのまま師匠のところまで行って業務委託契約を交わした。
「お母さん、こんなところまでご足労いただき申し訳ありません」
「いえいえ、息子にこんな貴重な経験をさせていただいて夫と共に感謝しております」
「息子さんのことはしっかり面倒を見させていただきます。ご安心ください。それじゃあ速水君は明日以降のスケジュールを教えてくれ。それを把握した上で速水君にお願いする仕事を決めたいと思う」
「はい、今度の日曜までの予定はこうなっています」
「明日は試験終わりで休みになるのか。それじゃあ早速だけど明日は肉体労働をやってもらおう。手配はしておくからあとから連絡する」
「作業時間は何時までになりますか?明日はそろばん教室があるので時間が被ったら時間をズラすか休みの連絡を入れないといけないです」
「そうか、その兼ね合いもあるのか。では習い事には間に合うように時間は調整しよう。土日は習い事はないね?」
「はい、土日は完全にフリーです」
「それでは今週のスケジュールはあとでメールを送るからそれを確かめてくれ」
「承知しました。明日からよろしくお願いします!」
「宮田社長、息子をどうぞよろしくお願いいたします」
家に帰り、パソコンで確認すると仕事用に作成したメールアドレス宛に次の日曜までのスケジュールと報酬についての詳細が書かれたメールが届いていた。




