第14話
今日は球技大会当日。いつもは制服で登校だけど、この日は体操服での登校が許可されている。だから僕は体操服姿で自転車に乗って登校した。
自転車登校を始めてからは僕が学校に着く時間帯は人が少ない。でも今日はみんな気合いが入っているのかこの時間帯でも人が多かった。
そして僕は玄関入口入ってすぐのところにある掲示板で今日の対戦表を確認した。
サッカーはAからDグループの4つグループに分かれていて、トーナメント制で各グループ1位になったクラスが準決勝に進めるみたいだ。僕のクラスは1年3組。Bグループで第一試合目だった。
対戦クラスは2年5組。濃山四天王の一人、黒羽先輩のいるクラスではなかったので安心した。Bグループで四天王と対戦することはないことが分かった。あとは準決勝まで進めた場合、対戦することになるかもしれない。
教室に荷物を置いてグラウンドに向かう。今日はホームルームはなく、そのまま開会式が行われる。
「おはよう晃弘。特訓の成果が出せればいいね!」
声をかけてきたのは薫だった。今日はかなり早く登校したんだね。
「おはよう薫。今日は早いね。気合い入ってる感じがする」
「もちろん!同じ競技になったんだもん。いいところ見せないとだからね!」
薫には薫の戦いがあるんだった。瞬へアピールをしつつ、四天王に差をつけないといけない。
ふと誰かに見られてるような気がしたので周りを見渡すと、四天王の一人、向井咲夜さんがこちらを見ていた。僕を、というよりも薫を見ている。四天王も四天王で薫を意識しているのか。
「それでは球技大会の開会をここに宣言します。サッカーはこのままここで、野球は野球グラウンド、バスケットボールは体育館で行いますので、各自移動をお願いします」
体育委員長が開会を宣言して各々が参加競技の会場へと向かっていった。3組はいきなりサッカーの試合が始まるので応援のためにグラウンドの脇に移動している。
応援は嬉しいけど、見られているというのが恥ずかしい。ミスしたら野次られそうで怖いな……。
「晃弘、ミスしても大丈夫だからな!俺がしっかりカバーする」
ポンと、肩を叩いて僕を鼓舞してくれる瞬。他のメンバーにも肩を叩きながらフォローを入れている。やっぱりイケメンだから一つ一つの仕草が様になっている。
ピーッ!
笛が鳴って試合が始まった。前半で5分、後半で5分の計10分の短い試合だ。短期決戦だからこそ、先制できればかなり有利になる。ボールを持っているのは瞬。
さすがサッカー部エースとして中学で名を轟かせていただけはある。一人、二人とドリブルで抜き去ってどんどん敵陣へ進んでいく。
2年生という1年上の先輩に対して臆することなくプレーしている姿は純粋にカッコいい。
瞬が大木君にパスを回し、大木君が右サイドからセンタリングを上げる。それに合わせてクラスメイトの男子がヘディングシュートを決めてゴールを割った。開始1分もかからずで1点をあげた。
すごい!瞬はもちろんだけど、大木君も十分上手い。ゲームばかりせずにサッカー続ければいいのに。
「こっからが大事だぞ!晃弘、集中だ!」
瞬の檄でハッとする。ホイッスルが鳴ると2年生が一気に攻めてきた。僕はディフェンスのためにボールを持っている先輩の前に立ちはだかった。
僕に気を取られていたのか、横から薫が先輩のボールをカットしてすぐさまクラスメイトの女子にパスを回す。
ナイスディフェンス!と言わんばかりに親指を立ててウインクをしてくる薫。あれだけでも十分相手にプレッシャーを与えられたのなら役に立てたということかな?
奪ったボールをそのまま瞬がシュートを決めて2点目。瞬が得点を決めた瞬間、黄色い声援が響き渡った。さすが王子様。
そして瞬と薫がハイタッチを交わし、笑顔で勝利を讃え合っていた。あんな笑顔、瞬だからこそ見せられるんだろうな。あの時のようなズキンという痛みは起きなかった。
もう勝ったようなものだからと次の試合に向けて体力を温存するために強引に攻めに回らずにディフェンスに徹して試合終了。
正直2年生に勝てるなんて思ってもいなかった。瞬が言ったようにこのチームならいいところまでいける気がしてきた。
次の試合は3年1組。3年生という格上に挑戦だ。
「1組にはサッカー部の人はいない。だからこの試合も大丈夫だ!」
瞬の読み通り、3年生という格上だったにも関わらず3対0で圧勝。瞬が1点、大木君が1点、そしてなんと薫が1点をもぎ取った。
薫は中学の時は目立ちたくないと言いながらもこういうイベントの度に目立っていた。だから今回も得点をあげたことで注目の的となっている。
これで勉強と運動を兼ね備えた濃山四天王の一人として確実に彼女を狙う男子が増えるだろうね。
次の対戦は1年1組。ここには瞬と同じサッカー部の人が2人いた。でも瞬と大木君のペアの前では通用せず、ここも2対0と快勝し、Bグループで1位となった。
「よっしゃあ!これで準決勝だ!ここまで来たら優勝目指そう!」
瞬がみんなに檄を飛ばす。みんなも気合いが入っている。僕も何か不思議な力が漲ってきた。
「サッカーでグループ1位になったクラスの代表は本部に集合してください。これからくじ引きを行います」
瞬が代表としてくじを引き、その結果、準決勝は2年2組との対戦となった。よかった……、黒羽先輩のクラスではなかった。どうやら黒羽先輩のクラスはリーグ1位にはなれなかったみたいだ。
そしてもう一方の準決勝には濃山四天王の一人、あの裏表のあるアイドル沖田美羽さんのいるクラス1年4組と、もう一人の濃山四天王である向井さんのいるクラス1年6組が対決することとなっていた。
「今年の1年はどうなってるんだよ」
そんな声が聞こえた。確かにそうだ。2年生と3年生を差し置いて1年の3クラスが準決勝に進むなんて普通ならあり得ないと思う。
どちらにせよ、僕達のクラスが勝ったら決勝戦では四天王のどちらかと対戦することになる。
準決勝からは前半10分、後半10分の計20分での対戦となる。瞬がこれまでの試合で体力を温存しようとしていた訳が分かった。ここからは体力との勝負がカギとなってくる。
こうして1年4組と1年6組の準決勝が始まった。




