表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セーラー服を脱がせて  作者:
アフターストーリー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/17

妄想だらけのガールズトーク

「ねえねえ、聞いてよー!」


 最近、この四人でお弁当を食べるのが、すっかりお昼の定番になっていた。 私と昔からの親友の美咲。そして、美咲を通じて仲良くなった月城つきしろ陽葵ひまりちゃんと、清水しみず弥生やよいちゃん。三人ともクラスで目立つ可愛い女の子なのに、少し内気な私にも気さくに話しかけてくれる、大切な友達だ。


 そして、たまたま今日の話題は、女の子が一番盛り上がる鉄板の「恋バナ」だった。 私の心臓が、少しだけドキリと音を立てる。 まさか、この中に一人、本物の彼氏持ちが紛れ込んでいるなんて、誰も夢にも思っていないよね。


「昨日見たドラマのさ、幼馴染カップルが最高すぎて!」


 美咲が、頬をピンク色に染めながら熱弁を振るう。その言葉に私の心臓がきゅんと音を立てた。私の隣には、世界で一番格好いい、本物の幼馴染彼氏がいるんだよ、なんて。口が裂けても言えないけど。


「わかるー! ていうかさ、彼氏ができたら、みんなどこまで許せる?」


 会話をリードするのは、いつも少しだけ大人びている陽葵ちゃんだ。


「ま、まずは、手繋ぎ、とか……?」


 弥生ちゃんのウブな回答に、陽葵ちゃんが悪戯っぽく笑う。


「弥生は可愛いなぁ。じゃあさ、キスは? 触れるだけ? それとも、舌とか…入れられちゃったらどうする?」

「ひ、陽葵ちゃん!」


 彼女たちの会話は、すべてが「もしも」の話。でも、私にとっては、すべてが「もうすでに起きたこと」の話だった。

 駿太の少しだけ強引で、でも、とろけるくらい優しいキス。最初はただ触れるだけだったのが、今ではもっと深く、お互いの舌が絡まるようなキスに変わってきていること。そんなこと言えるはずもない。


「ていうかさ、不意打ちってやばくない? 後ろからぎゅってされて、そのまま首筋にキスされたりとか!」


 美咲が身もだえしながら言う。


 ヤバいよ。本当に、心臓が止まりそうになるくらい。私の知らないうちに、私の好きな匂いを覚えていて、後ろから抱きしめられた時の、あの衝撃と幸福感。


 彼女たちの妄想が、私の現実の記憶を鮮やかに呼び覚ましていく。そのたびに、私は相槌を打ちながらも、心の中では全然違うことを考えていた。気まずさと、少しだけの優越感。そして、今すぐにでも駿太に会いたくなる、うずうずした気持ち。


「じゃあ、究極ね」


 陽葵ちゃんが、にやりと笑って、爆弾を投下した。


「彼の部屋で二人きり。いい雰囲気になって、ベッドに押し倒されて…耳元で『俺、もう我慢できない』って囁かれたら…どうする?」


 その瞬間、私の頭の中に、あの日の、あの部屋の光景が鮮明にフラッシュバックした。 駿太の熱っぽい瞳、『俺の知らない結衣を見たい』っていう掠れた声。彼の熱い腕の中でセーラー服を脱がされて、なにもかも暴かれてしまった、あの甘い時間。


「……っ!」


 気づいた時には、私の顔は自分でもわかるくらい真っ赤になっていた。


「あれ? 結衣、どうしたの? 顔、真っ赤だよ?」

「え、うそ! 結衣、まさか一番えっちな妄想したでしょ!」

「えー、結衣ちゃん、えっちい!」

「ち、ちが……っ! そ、そんなこと、ない!」


 三人のからかうような視線が、一斉に私に突き刺さる。

 私は慌ててお弁当の卵焼きを口の中に放り込んで、必死に動揺を隠した。


 違うの。妄想なんかじゃない。みんなが今、必死で想像しているその甘い時間は、私にとっては、もう何度も経験した愛おしい現実なんだよ、なんて。言えるはずもない秘密を抱えながら、私の心臓は幸せな音を立てて鳴り響いていた。


 ああ、もう。早く、駿太に会いたい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ