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スーパーロボットあるある100小説  作者: 牧亜弓
電光巨人 ブルーサンダー
32/50

爆散!!バルディア!!悲劇の名乗り


鉄鋼王国の闘技場には、ただならぬ緊張が張り詰めていた。

空を覆う黒煙、焼け焦げた地面、そして崩れかけた観客席。かつては栄華と誇りの象徴だったこの場所が、今ではまるで地獄の舞台のように変貌していた。


闘技場中央では、蒼き鋼の巨人――ブルージャスティオンが、異形の鋼鉄獣ダークゴルドンと死闘を繰り広げていた。

電光と火花が散り、地響きのような衝突音が王国中に響き渡る。観客たちは声も出せず、ただその壮絶な戦いに目を奪われていた。


だが――その最中だった。


「ギギィィィ……ギィ……」

軋んだ音を響かせながら、闘技場の北門がゆっくりと開いた。


「……!?」


誰かが小さく息を呑む。


その門の向こうから現れたのは、信じられないほどみすぼらしい機体だった。

装甲のあちこちが剥がれ、塗装もほとんど残っていない。脚部の関節はギシギシと悲鳴を上げ、肩のパーツは片方欠けている。


ボロボロの鉄屑――そう形容するにふさわしい姿。


だが、その機体は堂々と、まっすぐに戦場へと歩を進めていた。

そして、機体の拡声スピーカーから、低くも力強い声が響き渡った。


「我こそは――」


一瞬、闘技場の空気が静止する。


「――鋼鉄の守護者! 電光巨人ブルーサンダーの盟友、鉄鋼剣士バルディア!!」


名乗りの声は、闘技場全体に反響した。


観客たちの目が、ボロボロの機体へと注がれる。

味方の整備兵たちが唖然とし、敵方のパイロットたちでさえも、その機体を訝しげに見つめていた。


「え……? 今なんて……」

「バルディア……って、あの伝説の……?」

「嘘だろ、もう何十年も前に廃棄された機体だって聞いたぞ……!」


戦場の時間が、まるで止まったかのように思えた。


だが、その内部で――操縦席の中で、ひとりの男が汗を拭っていた。

彼の名は、別府忠夫べっぷ ただお

このオンボロ機の最後のパイロットにして、自らの意志で再起動させた男だった。


「はは……緊張すんなって思ってたのに……こりゃあ、舞台がデカすぎるな……」


額から流れる汗を袖で拭いながら、彼は微かに笑った。


「でも、やるしかねぇ。こいつと俺で――最後の一花、咲かせてやる!」


だがその瞬間だった。


「――!? バルディア、後方警戒ッ!」


忠夫の声が悲鳴に変わる間もなかった。


突如として、観客席の上段から、閃光が走った。

それは誘導式のミサイルだった。まるでバルディアの登場を待ち構えていたかのような、狙い澄ました一撃。


爆発音が空を裂き、炎と破片が闘技場を包んだ。


「忠夫さん!?」

「うそだろ!?」

「誰が撃ったんだ!? 味方か!? 敵か!?」


怒号と混乱。観客席が騒然となる。

味方機のパイロットたちも、ただ立ち尽くすしかなかった。


爆煙の中、バルディアの機体は――

無残にも、四肢を失い、胸部は大きく抉れ、地に伏していた。


中枢ブロックも、操縦席も、完全に消し飛んでいる。

もはや復元もできない、ただの鋼の残骸。


誰もが、言葉を失った。


「……裏切り……か?」

「いや、何かの罠だ……!」


だが、誰が何を言おうと、忠夫はもう応えない。


残されたのは、あの名乗りの声だけだった。

風に流れ、闘技場の上空を寂しくこだました。


「――我こそは、鋼鉄の守護者……鉄鋼剣士バルディアだ……」


それは、まるで幻だったかのように、消えていった。


ブルーサンダーのパイロット・ヒロトは、拳を握りしめ、歯を食いしばった。


「別府さん……あんた、なんでこんな……!」


静かに立ち上がるブルーサンダーの巨体。

その双眸に宿るのは、怒りではない。哀しみと、決意。


「無駄にはしない。あんたの登場が、何を意味していたのか……俺が証明してみせる」


仲間たちの通信が入る。


「ヒロト、どうする!? 戦況は不利だ!」


「まだだ……バルディアが示してくれた。俺たちは……立ち上がるだけだ」


異様な静寂の中、再び闘技場に火花が走った。


それは――誰かの犠牲が灯した、新たな戦いの始まりだった。



スーパーロボットあるある


その131:味方のオンボロロボ、かっこいい名乗り。

その132:すぐ爆散。

その133:爆発の理由は謎。

その134:裏切り者の影がちらつく。

その135:名乗りだけが残る悲劇。


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