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スーパーロボットあるある100小説  作者: 牧亜弓
電光巨人 ブルーサンダー
31/50

燃えさかる王城、崩れゆく鉄の帝国


ガスティメィア鉄鋼王国の空が、深紅に染まっていた。

ただの夕焼けではない――それは、燃えさかる王都の業火だった。


数日前から続いていた市民の蜂起は、ついに決定的な転機を迎えていた。

各地の工業区では労働者たちが武器を手に取り、王国軍の装甲兵と激突。政府の情報統制も、もはや意味をなさず、反旗を翻した民衆の叫びが町の至るところで響き渡っていた。


「圧政を終わらせろ!」

「俺たちの家族を返せ!」

「革命を――革命を!!」


闘技場ではまだブルージャスティオンと鋼鉄獣の激闘が続いていたが、その熱気とは別種の、もっと重く、深い怒りが、王国中に渦巻いていた。


その中心――王都アルマ・ステルの王城。

漆黒の鋼で組み上げられたその巨城の鐘楼が、ついに爆発音とともに崩れ落ちた。


「な……!」


爆音を聞いたジャスドス大帝は、王座の上で息を呑んだ。

彼が生まれ育ち、支配し、そして築き上げてきた王国の象徴が、今、目の前で炎に包まれていた。


城の上空を、反乱軍が奪取した無人戦闘機が飛び交う。かつて自分が誇りにしていた技術が、今は自分に牙をむいている。


「どうして……どうしてこんなことに……」


額には、見る見るうちに汗が浮かんだ。

唇を震わせながら立ち上がろうとしたその時だった。


「ぐっ……!」


突如、大帝は胸を押さえ、激しい咳に襲われた。

肩が震え、血混じりの咳が衣に飛び散る。

そして、その身体はふらつき――玉座の階段に膝をついた。


「陛下ッ!」

「どうされました!?」

「医者を呼べ、早く!!」


ざわめく側近たちの声が、炎の轟音の中にかき消される。


やがて、駆けつけた王城付の老医師が大帝の脈を取り、顔色を見、静かに頷いた。

だが、その頷きは決して肯定のものではなかった。


「……申し訳ありません、陛下……」

医師は静かに、だがはっきりと告げた。


「この発作は……進行した重度の臓器不全によるものでしょう。……お体はすでに限界です」

「余命は……長く見積もって、一ヶ月……いえ、それより短いかもしれません」


その言葉を聞いた瞬間、大広間にいた者たち全員が凍りついた。


「な……なんだと……?」


ジャスドスの声は震えていた。

身体ではなく――心が、折れかけていたのだ。


「一ヶ月……? この俺が……この俺があと、一ヶ月しか生きられぬと……!?」


怒りが爆発する。

だが、怒鳴ろうとした瞬間、また血が喉に逆流し、大帝は再び咳き込んだ。


「陛下、お身体を……!」


「黙れッ!!」


側近の言葉を怒声で遮り、ジャスドスはよろよろと立ち上がる。

背筋は曲がり、かつての威厳はそこにはない。それでも、彼は叫んだ。


「俺が死ねば、この国はどうなる!? 反乱は広がり、民衆はこの鋼の国を食い荒らすだけだ! 誰がこの国を導く!? 誰がこの国を背負えるというのだッ!!」


しかし、誰も答えられなかった。


なぜなら、ジャスドスがあまりにも長く権力にしがみついていたからだ。

彼の下では、後継者を育てる機会など存在しなかった。

才ある者は排除され、忠誠を示す者だけが生き残った。


王国の未来は、彼自身によって閉ざされていたのだ。


「……こんな……馬鹿な……」


呟くように言ったその声は、かすれていた。

彼の視線は、燃える王城の外へと向けられていた。


赤く染まる空。

遠くで爆発する貯蔵庫。

そして、市民たちの怒号と勝利の雄叫び。


そのすべてが、ジャスドスにとっては“自らの失政”の結果でしかなかった。


「セリア……お前なら、どうした……?」


かつての側近にして、唯一信頼していた女性の名を、彼はぽつりと口にした。

彼女はすでにこの世にいない。

反旗を翻し、そして処刑された女。


だが――


「やはり、あの時……処刑すべきではなかったのか……」


後悔の念が、胸を締めつける。


ジャスドスは静かに玉座へと戻る。

だがその足取りは、もはや「王」のものではなかった。


崩れゆく王国の王――

その姿は、まるで滅びを待つ亡霊のようだった。


そして鉄と火の帝国・ガスティメィアは、ゆっくりと――

だが確実に、終焉の運命へと歩みを進めていった。



スーパーロボットあるある


その126:王政が燃える。

その127:大帝が突然体調不良。

その128:医者の余命宣告が絶望感を増す。

その129:革命はいつも火から始まる。

その130:燃える王城は物語の象徴。


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