ヒロイン登場!!不思議な記憶の少女
ジャスティオンの修復が完了した翌朝、街には静けさが戻っていた。
だが、日向レイジの心には、昨夜の戦いの余韻がまだ色濃く残っていた。
瓦礫の上に立ち尽くした敵。ゾン・ダイガーMk-II。その異常な再生力と執念。
あれはただの機械兵器ではない……なにか、もっと大きな意志が背後にある――そう思わずにはいられなかった。
そんな思考に沈んでいた彼が、人通りの少ない裏通りを歩いていたときだった。
――空から、光が落ちてきた。
「……ッ!?」
轟音と閃光。路地の向こう側の地面が砕け、煙とともに何かが降り立つ。
レイジが走って駆けつけると、そこには――少女がいた。
銀色の長い髪。蒼い瞳。制服姿でも私服でもない、どこか“異質”な衣服。
年の頃は、自分とそう変わらないだろう。
だが、彼女の存在は明らかに“この世界のもの”ではなかった。
少女はうっすらと目を開け、彼を見上げると、かすかに唇を動かした。
「名前は……ルーナ。たぶん……」
「たぶん、って……記憶喪失か?」
少女――ルーナはうなずいた。
その声には確かな感情があるのに、自分が何者かはまるで分からないという不思議な矛盾があった。
「あなたは……誰?」
「日向レイジ。高校生で、J-FORCE所属の……まあ、特別パイロットだ」
ルーナの目が一瞬、強く光った。
まるでその言葉に何かが反応したかのように。
と、彼女が空を見上げた。
高層ビルの向こうに、赤い閃光が走っていた。
一瞬、稲妻のように横切ったかと思えば、すぐに消える。それはまるで、誰かの視線のようだった。
「また……あの光……」
ルーナは小さく呟く。
そして、その手首が不意に露わになった。
そこには、淡く青く輝く“紋章”が浮かんでいた。複雑な幾何学模様のようでありながら、有機的な曲線も持っている。
レイジはすぐに通信を入れ、J-FORCEの解析チームがその場に派遣された。
結果はすぐに出た。
「これは……古代文明“アークノア”の伝承と一致します」
基地に戻ったレイジのもとへ、副司令官・冬島マサトが自ら報告を届けに来た。
記録上、アークノアは一万年以上前に地球に存在したとされる幻の超文明。その技術は、現代科学を遥かに凌駕する“機械知性”と“記憶伝承”の応用系であると言われている。
「この子は……一体、何者なんだ……?」
冬島もまた、困惑していた。
だがルーナ自身は至って静かだった。
まるで、すべてを知っている者が“知らないフリ”をしているかのように。
「この機体……“彼”に似てる」
格納庫でジャスティオンを見上げたルーナが、唐突にそう呟いた。
「彼って……誰のことだ?」
レイジが問いかける。
だがルーナは、かすかに笑っただけだった。
寂しげな微笑み。それ以上、彼女は何も語らなかった。
その夜、警報が鳴り響いた。
《新型敵性体、出現!》
敵は“ヴァーミリオンゴーレム”。
灼熱の外殻と重力崩壊フィールドを併せ持つ、未知の戦闘兵器。
市街地を蹂躙し、戦車部隊を次々と破壊しながら進行してくる。
「出るぞ、ジャスティオン!」
レイジが格納庫へ走り出すその瞬間、ルーナが叫んだ。
「待って……その敵、“触れちゃいけない”!」
「なに言ってんだ! 仲間がやられてるんだぞ!」
レイジの足が止まる。
ルーナの蒼い瞳が、強く光を帯びていた。
そしてその瞬間――格納庫の天井が轟音とともに崩れ落ちた。
「ッ……上だ!」
瓦礫が舞う中、光の柱が天から差し込む。
その中から、ゆっくりと降りてきたのは……一機の機体。
白銀に輝くボディ。
ジャスティオンとは異なる造形だが、どこか似たフォルム。
そして、その胸にも――ルーナの手首と同じ“アークノアの紋章”が輝いていた。
その機体は、まるでルーナを守るように、彼女の前に立ちはだかる。
レイジが驚愕しながら叫んだ。
「え……誰だ、お前は!?」
ルーナは、その機体を見上げて、静かに答える。
「それは……私の記憶の中の、“もうひとつの正義”」
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スーパーロボットあるある
その5:ヒロインは空から降ってくるか、謎の研究所にいたかのどちらか。
その6:正体不明の紋章やペンダント、重要。しかも機体とリンクしてる。