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第6話 覚悟しろよポンコツ村娘ちゃんめ



 ■ ■ ■



 真夜中。

 温かいベッドで眠りに就いていた俺の脳内に警告音が鳴り響き、パチッと目を開いた。


「――――っ、!?」


 これは……。

 侵入者のサインだ。

 このダンジョンに人間が入ってきた。


「マズいな」


 せっかくゆっくり眠れると思ったのに。


「ん、動けない――」


 隣を見ると、


「スーー、スーー……」


 俺の左腕に抱きついた体勢で、メディが静かな寝息を立てている。体温も恒温動物のそれに変わっているので、温かくて柔らかな感触だ。


 彼女を起こすのは忍びない。

 俺は細心の注意を払い、抱擁の拘束から抜け出す。


 ベッドから降り立ち、リビングへ。

 ソファに座って、向かいの壁に『画面』を6つ投影する。


 それぞれの画面には、この家の玄関前、ダンジョンの入口付近、 上層、中層、下層、深層が映し出される。

 それぞれカメラは俺の意志でスクロールしていって、


「――――いた」


 上層の通路で人影を見つけた。

 素朴なロングスカートの服装。亜麻色の髪をサイドテールに結んで垂らしていて、不安そうな様子でダンジョンを彷徨っている。


「やっぱり……村娘ちゃんか……」


 俺はうなだれる。

 彼女は『村人』。【無印】に分類される、戦闘能力を持たない人間だ。


 ゲームでは最序盤からダンジョンに侵入してくる、プレイヤーにはおなじみのキャラクター。


 武器も持っていないし、防御力だってまるでなし。

 ダンジョン最弱の子どもゴブリンにもやられてヤラれてしまう、チュートリアル的な存在だ。


 トラップへの警戒心もゼロで、どんな罠にも吸い寄せられるように引っかかってしまう。


 派手さはないが、万人受けする愛嬌のある美少女で、中世っぽい世界の村人とは思えないほど発育のいいスタイル。


「設定もな――」


 村には両片思いの幼なじみがいて、彼との結婚を夢見ている――そんなプロフィールも人気の要因のひとつだ。


 これもゲームの仕様だから仕方ないんだが、『村娘』のイラストは1種類しかないので――プレイヤー視点だと、『何度ひどい目に遭っても同じ女の子がまたダンジョンに入ってきてはヤラれてしまう』、というふうに見える。


 ……そもそも、なんでこんな森の奥のダンジョンに普通の村娘がやって来るんだ、という話もある。


 人里から離れているのに、なぜか村娘は1人で迷い込む。

 それも毎回。


 ダンジョンの前で踏みとどまればいいのにホイホイと侵入してくる。

 ダンジョンの入口には人間を誘惑する不思議な魅力があるという設定なので、それも仕方がないんだが。


  そんなこんなで、幼なじみに恋心を抱いているのに体はダンジョンを求めて、モンスターやトラップにやられまくるという、そんなキャラとしてのネタ具合も相まって『ポンコツ村娘ちゃん』の名前で呼ばれ、ユーザー人気トップクラスの女の子だったりする。


 ネームドではないモブキャラにも拘わらず、ファンアートも1、2を争うくらい多いんだぜ?


 俺も好き。


「でもなぁ……」


 ここでポンコツ村娘ちゃんを撃退するのはたやすい。

 今はモンスターたちを引き上げさせているが、子どもゴブリン1匹でもけしかけてやれば村娘ちゃんは敗北する。


 でも、この世界では酷い目に遭わせるつもりなんてない。

 あれはゲームだから出来ることだ。ここは俺にとっての現実。ゲームと現実は混同しない。えっちなことはしたいけど、非道なことはしない。


 ただそれ以外にも、【メインシナリオを進めない】という俺の方針も大事なんだ。


 ここで村娘ちゃんをヤってしまうと、その被害が他の村人に伝わり、そのウワサが野盗やノラ冒険者にも広がる。


 【ダンジョン=貴重な宝物がある】


 と考える盗賊が侵入してくるようになるし、村人から個人的に依頼を受けたノラ冒険者もダンジョンを攻略しようとやってくる。


 それでも手に負えないと判明すると、村から冒険者ギルドへと正式な依頼が発せられるようになって、ギルド所属の強力な冒険者たちと対決するハメに――


「駄目だ駄目だ駄目だっ!」


 そうやってエスカレートしていくとメインシナリオが進んでしまう。俺にとっての終焉が近づいてしまう!


 ああ、この村娘ちゃんもある意味、俺にとっての【✞ 終焉を告げるモノ ✞】だ!


 ううん、もっと早く対策を打っておくべきだったか?

 ゲームでは、侵入者がやって来るのはトラップを初めて設置したあとだったから油断していたな。


「……アルトさまぁ?」


 つい大声を出してしまったせいで、メディを起こしてしまった。

 枕を抱きしめたパジャマ姿のメディが目を擦りながらこっちを見ている。


「ああ悪い、ちょっと仕事で」

「おしごとぉ……? むにゃむにゃ」


 ぽてぽてと歩いて、ソファの俺のところまで。


「メディ?」

「う~ん……」


 座っている俺にまたがると、枕の代わりにがばっと抱きついてきた。


「う、動けないんだが?」

「あったかいぃ……」


 まいった。

 甘いにおいと、むにむにと柔らかい感触。


 寝ぼけているメディだが、今度は力が強い。【神話級】の抱っこからは簡単には抜け出せそうにない。メッチャ密着してるから心地いいのもあるんだが……。


 しかし、村娘ちゃんにも対処しないといけない。

 

「――しょうがない。このままやるか。覚悟しろよポンコツ村娘ちゃんめ……!」


 俺はモニターを見つめて、そうつぶやいた。






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