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第5話 この生活だけは守り抜くぞ……!



 ■ ■ ■



 メディが獲ってきてくれた魚を調理。

 見た目、イワナっぽい魚だ。キッチンに立ち、その腹に包丁を入れ内臓を取り出していると、メディが興味深そうにじーっと見てくる。


「珍しいか?」

「(コクコク)」

「子どもの頃にメチャクチャ仕込まれたからなぁ」


 両親が酒浸りでろくに仕事も家事もしなかったぶん、俺は、漁師だったじいちゃんから自立できるようにと料理を仕込まれた。


 もっとも、家を飛び出したあと、社畜時代には自炊する時間なんてまったくなかったけど。

 というか、通勤の時間も惜しくて、会議室にダンボールを敷いて仮眠を取っていたくらいだし。


 しかし、こっちに来ての逃亡生活の頃はそれすら贅沢だと痛感した。雑草を()み、夜は地べたでうずくまって、刺客に怯えて――


「うう、この生活だけは守り抜くぞ……!」

「アルトさま、燃えてる」


 そりゃあ燃える。

 ダンジョンで使える《クリエイト》能力、これは思った以上に万能だった。異常といってもいい。

 ゲームで使える種類以上のアイテムを作り放題だし、これならダンジョンの中での生活はいくらでも快適に進歩させられる。

 

 包丁やまな板も、IHのコンロまで。皿だって。

 食材系は他に頼る必要があるが。


 このイワナっぽい魚、取りあえず今日は丸ごと焼き魚にするつもりだが、


「あ、塩」


 調味料がないことに気づく。


「いや待てよ、岩ブロックの中に……あった!」


《クリエイト》で白い岩塊を作り出し、その表面をガリガリと削る。


「アルトさま、いわ、食べる?」

「これは岩塩だ。しょっぱいぞ。舐めてみるか?」


 人差し指に岩塩を乗せて差しだすと、メディはぱくっと指ごとくわえて、長い舌で味わった。


「――っ! しょっぱい!」

「だな。でも適量ならいいスパイスになるんだ」



 焼き上がったイワナに振りかけて、メディと一緒に食卓につく。


「さかな!」

「新鮮なイワナの塩焼きだ。食べようぜメディ。いただきます」

「? だきます」


 俺にならって、両手を合わせるメディ。そのまま手づかみでいこうとするので、


「そうだ。これを使ってみてくれ。箸っていうんだけど」

「……むずかしい」

「慣れれば便利なんだけどな」


 さすがに難易度が高かったか。


「そんじゃフォーク」


 ひょいっと、《クリエイト》を使って銀のフォークを取り出してメディに渡す。

 メディはそいつでザクッと焼きイワナを突き刺し、もがーっと頬張る。


「…………っ!? おいし!? これ、さかな!?」

「火を通すとまた違うだろ?」

「しょっぱい、ちょうどいい! おいしい!」

「慌てなくていいぞ。メディがたくさん獲ってくれたからな」

「はぐはぐ」


 一心不乱に食べる姿を眺めていると、こっちまで幸せな気分になる。

 獲ってきた8尾のイワナは、2人でぺろっと平らげてしまった。


「ごちそうさまでした」

「ごちさまでした」


 今後メディに美味しいものを食べさせるためにも、色々と考える必要があるな。


 食料だって、『外』のものを持って来て『中』で育ててもいいんじゃないか?

 なんだか俺の《クリエイト》は絶好調だし、畑とかも作れるかもしれない。畜産もやれたらいいし、魚の養殖も楽しそうだな。


 それならやっぱり、


「建築だ!」

「けんちくだ!」


 食事の片付けをしてから、俺は中断していた建築作業を再開し、メディに見守られながら納得いくまで熱中したのだった。




 ■ ■ ■



 アルトとメディが自宅の建築を終え、ダブルベッドで仲良くスヤスヤしているころ。


「どうしよう……村はどっち……?」


 深い森の中を、1人の村娘がさまよっていた。

 月明かりだけを頼りに進むのは危険に思われたが、こんな森で野宿するのも危険極まりない。


 獣やモンスターもそうだが、娘は年頃だ。破廉恥な野盗に襲われて酷い目に遭うおそれもある。


 なにより早く帰りたくて仕方がなくて、とにかく無我夢中で歩き回っていた。


「帰りたい……」


 家族や幼なじみの顔が目に浮かぶ。

 優しい両親に、おだやかな祖父母。可愛い妹。

 それから、小さい頃から一緒に育ってきた同じ村の男の子。同い年の16歳。


 ……互いに好意を寄せ合っているものの、まだ手も握ったことがない間柄だ。


 けれど。

 恋人になるなら、結婚するなら、そして初めてを捧げるなら――彼しかいない。ずっとそう想ってきたし、それはこれからも変わらない。


 ああ。

 もしも彼がこの場に現れて手を引いてくれたら、どんなに嬉しいことだろう。


「はあ……」


 けれど現実はそうはいかない。


 体はとうにクタクタで、足は棒になりそうだ。

 そんな彼女の視界が、急に開ける。


 ようやく人里に出られたか? と期待したのも束の間。

 彼女の目の前には、


「……なにこれ、洞窟?」


 山肌に、ぽっかりと大きな穴が空いていた。


 その周囲は月光に照らされているのに、うつろな穴にはその光は届かず、深い闇だけが口を開けている。


 そのとき、どこからともなく強い風が吹いて、


「うぅっ……!?」


 村娘は、肩を抱いて身を震わせた。

 

「寒い……少しだけ、休もうかな――」


 洞窟の中になにが潜んでいるかも分からないが、しかし気温も急激に下がってきたこの時間、このまま夜空の下をさまよい歩くのはつらすぎる。


 風をしのげるのなら、少しだけ。

 すぐに出て、必ず村にたどり着こう。

 大好きな人たちが待っているあの村に。


 そうして彼女は、決して関わってはならない魔境――ダンジョンへと足を踏み入れていった……。




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