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第11話 さんぽ、さんぽ♡



「さんぽ、さんぽ♡ アルトさまとさんぽ♡」


 今日はメディとダンジョン散歩。

 彼女にせがまれて、手を繋いであちこちを歩いている。


 ただ遊んでるだけじゃなくて俺は仕事も兼ねているからな?

 おもに上層を、侵略者がまず通るところを回って点検している。


 モニターでどこでも視認できるから歩き回る必要はないんだが、現場を確認するのも大事だ。

 それにメディとの散歩は楽しいしな。



 ダンジョンの出入口まで行き着いて俺は、


「ここさえ塞げればなぁ」

「? 外、出れなくなる」

「食材はどうにかするとしてさ。それより人間が入って来ないほうが大事だよ」

「アルトさまは、そと出たくない?」

「まあな。つーか人間に会いたくない!」


 俺は右の拳を握る。


「王族でいたあいだもドロドロの権力争い! 逃亡中は賞金首になったからな、その辺の村人や野盗にも命を狙われる始末!」

「おー」

「だから俺は人間と関わりたくないんだよ」


 再訪の約束をしてしまったポンコツ村娘ちゃんみたいなケースは例外にしたい。……いやほんと、あれ限りにして欲しい。


「じゃあめでぃ、ここに立つ!」

「ん?」

「ここで人間、止める!」


 言うと、メディは繋いでいた手を離し、入口のところで仁王立ちしてみせる。


「アルトさま守る!」

「メディ……大きくなって……」


 そんな、ちょっと父親っぽい気分に浸ってから。


「ありがとう。でもな、それはそれで騒ぎになるから」

「?」


 今は人間の姿のメディ。ふわふわのショートカットに、キラキラした目。ぷにっとした頬に、愛らしい唇。

低身長なのに大きな胸と、太もものまぶしいミニスカート。


 天真爛漫ロリ巨乳な美少女って感じだが、ウエストからお尻、脚にかけてのラインにはメデューサだったころの妖艶さをどこかに残している。


 無垢と魔性が同居したような女の子だ。


 しかしその金色の瞳には確かな魔力が籠っている。


 メディがここで『門番』をしようものなら、訪れた人間を問答無用で石像に変えてしまうだろう。

 正直、人間がどうなったって構わないが、そんなのすぐに噂になる。


 メデューサが立ちはだかる洞窟。


 そんなの、真っ先に討伐対象になるだろう。


「もっと無害なダンジョンを装わないと。いや、ダンジョンとすら思わせないのがベストだな」


 この、入口すぐの空間は、手狭な洞穴のようになっている。

 そこから二又に道が分かれて奥へと続いているわけだが、


「ここを塞ぐのが手っ取り早いよな」


 クリエイトで岩壁を作って2つの通路を塞ぐ。


「おー! 出れない、入れない!」


 こうすれば、外からやって来た人間はここをただの洞穴だと思うだろう。


「村娘ちゃんは入れないといけないけど」


 あの子はもう内部を知っていて、虜になっている。通路を封鎖したままなら彼女も侵入できないが……そうすると彼女はどうするだろう?


 ここには本当はダンジョンがある、と騒ぎ立てるかもしれない。

 それは厄介だ。


「こそっと彼女だけは入れて、満足させてやるか」

「えじき、えじき!」

「お、おう。餌食て……物騒だな」


 さすがはモンスター。


「応急処置としてはこれくらいだよな」

「かんぺきじゃない?」

「ないね。いくら物理的に通路を塞いでも瘴気までは密閉できない。そいつを勘づかれたら、壁を壊してでも侵入しようとする奴らが出てくるだろうし」


 こればっかりは止められない。

 どうにか追い返す手段を考えないとな。


「……俺の代わりに動けるメンバーも増やしておくか」


 メディは良い子だが、先ほどの理由で人前には出せない。

 他のモンスターも俺が命令すれば動いてくれるが、やはり人の目に触れさせるのは避けたい。


 となると、モンスターの外見をキャラメイクで変えるのが手っ取り早い。


「やるならメスだよな……って、そういう意味じゃないからな⁉︎」

「?」


 メディは何も言ってないが、俺の口からは勝手に言い訳が。


「いやほら! どうせなら女子のほうがいいってのはあるけど、メディも一緒に住むなら女の方がいいだろ?」


 べ、別に、たくさんのモンスター娘に囲まれたいわけじゃないんだからね⁉︎⁉︎




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