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11話 2章-2 ③チェインとは~これがお前の能力か・・・~

カルマの『チェイン』を目の当たりにしたルイたちはその強大な力に絶句した。どうやら『チェイン』とは人の域を超えた力を使えるようだ。自分たちもそうなれるだろうか。そんな期待が小さな胸を躍らせる。

チェインの説明を終えたカルマ。そしてカルマの発言に思わず耳を疑った。タイガたちと戦うようにと。彼らは若い世代のトップを走るハンター。彼らと戦う意味とは。その狙いとは。

 

 「僕がこの人たちと戦うの!?無理だって!だってみんなCHALLENGERなんだよ!」


蒼黒の大きな瞳が揺れ、驚きでいつもより声のトーンが高くなる。タイガたちの表情に困惑が滲む。カルマの意図が全く理解できない。

 

「ルイよ。お主が前に話した能力・・・。もしかしたらチェインが使えるかもしれん。」

「いや・・・あれはたまたまで・・・自分の意思ではできないよ。」

「考えてみなさい。その力が自分の意思でできるようになったら?」

「お主だけの特別な力だ。だからこそ使えるようにしなくてはいかん。」


カルマの表情は柔らかい。語り掛ける声には芯がある。それがルイの心にまっすぐ染みわたっていく。ルイのどこか強張った表情が徐々に真剣さに塗り替えられていく。


ールイの能力。その言葉に違和感を抱えたハルがルイの顔を両手でぎゅっと挟み込む。


「君が使える能力って何のこと?だってまだチェイン使えないでしょ?」


 歳の割にあどけなさの残る顔を覗かせ、困惑した表情で首を傾げた。ルイの年齢で『チェイン』を使えるのは稀。そしてルイが持っている剣の鍔に大きな石はない。だから能力が使えるはずがない。

 ルイは顔を横から潰されたまま、視線だけ見上げる。


「あのね・・・ここ最近で3回だけ不思議なことが起きて。2回だけ相手の動きを止めたようにゆっくりにできたんだ。一回は不発だったけど。」

「えぇ!それほんと?チェインだとしてもそんな能力は聞いたことないけど・・・」


 ハルは大げさに両手を上げる。体をのけ反らせ、大きな丸目をさらに大きく見開いた。『チェイン』を使えない人間が能力を使う。そんな話を見たことも聞いたこともない。


 その話を耳にしたタイガは、地面をザッザッと強く踏みしめ、大股でルイに近づく。そして顎を上げて見下ろすように、



「はったりに決まってんだろ。おい。大人をおちょくるのも大概にしろ。」

「嘘じゃない!それがなかったらみんなを守れなかった!」

「じゃあ。今すぐやって見せろよ!おら。俺の動きを止めてみろ!」


 ルイはタイガの言葉に反発するように手を横に強く振った。柔らかい目を鋭くし、ガンを突き付けてくるタイガに強い眼差しを向ける。2人はしばらく鋭い視線を飛ばし合う。その時、ユーリが遮るようにゆっくりと2人の間に入り込む。ユーリは真剣な面もちで

 

「タイガ。俺がやる。」

「その能力に興味がある。だから俺たちに見せてくれ。」


 考えの読めない浅葱色の瞳でじっとルイを見つめる。真っすぐにルイに刺さるような期待のこもる視線に何とか答えたいが、能力に関しては自分でも答えが出せていない。


「でもどうやったらできるか・・・わからないんだ。」

「ルイよ。お主の力が発動したときのことをよく思い出してみなさい。きっとヒントは見つかるじゃろう。」


 ルイは思い出した。バグベアの時はミアを助けようとしたこと。二次試験の時はエマとミアを助けようとしたこと。タクトの時は、自分の目標を否定され、大きな憤りを抱えていたこと。

 

「その時は確か・・・助けようとして・・・なんかものすごく焦ったり、怒ったりしてた気がする。」


 ユーリはルイの言葉を静かに黙って聞いていた。そして、ルイたちから離れるように歩き出す。


「よし。ルイ。こっちにこい。」


 名指しで呼ばれたので、反射的にユーリについていく。キュッと口を結び、どうすれば能力が発動するのかを考えあぐねていた。


 

 元居た場所から100歩ほど、離れたところ。ルイの前にユーリが立つ。何も話さないユーリ。ルイは困惑したように遠くのカルマたちに視線を散らした。

 透き通るような青みを帯びた空の下。強い風がビュッと吹き、足元に砂煙が立ち込める。ユーリは地面に視線を移し、その辺に落ちている木の棒を拾い上げた。


「お前は剣を使っていい。俺はこの木の棒で十分だ。」

「いや。ちょっとなにを・・・」


突然、ユーリが急にルイを蹴り飛ばした。

ルイはグッ!と小さな呻き声。腕を十字に組み、蹴りを防いだ。

ユーリの猛攻は止まらない。ビュッと疾風の如く近づく。そして、木の棒で乱打。

ルイは防戦一方。なんとか腕でガードするしかない。


ーなんなんだ。一体・・・ー


ルイは後方へ飛ぶ。そして、腰の剣を抜剣しようとしたのが束の間。

ビュッ!と凄まじい突き。熱く頬を掠める。

そして再び渦巻くような乱打。

   

ーくそ!剣を抜かせてもらえない。ー


ユーリが穿つ。ルイの腹にメリメリッと先端が食い込む。

グアッと声を漏らし、身体がくの字に折れながら後方へ吹き飛んだ。


砂煙が立ち込める中、ルイはすぐに体を起こす。そして抜剣。

息を荒くし、滲み出る汗をグイッと拭う。

剣をぎゅっと握ろうとした時。

すぐにユーリの激しい追撃。細身の体からは考えられないほど重い打撃。

それが嵐のように降り注ぐ。

ルイは必死に攻防するもユーリの攻撃は着実にルイの身体を痛めつけていく。


 

レオはあまりに一方的な光景に愕然とした。急に始まった戦い。呆気にとられた。そして、ここまで力の差があると思わなかった。

 

「おい!いきなりなにしてんだ!」

「仕方ない。ユーリがその気になっちまったんだから放っておけ。」


レオが必死な形相で怒鳴りつけるが、タイガは冷静にただルイを見ているだけ。レオはグッと拳を握りしめ、必死に自分の足が前に進むのを耐えていた。思い出さないようにしていた恐怖が一瞬だけ脳裏にちらつく。


ユーリは乱打は止まらない。そして、防戦一方で顔を歪めるルイに冷ややかな眼差しを送る。


「お前は昨日なんていった。タクト兄を連れ戻すといったな。そんな非力でなにができる。」


表情は冷ややかだ。しかし、声には熱を感じる。彼の心の内はわからないが、着実にルイの体力を削っている。それに対し、呼吸一つ乱さないユーリはさらに乱打のスピードを上げた。 


 ーくそ。動きに予備動作がないから次の攻撃が読めない。ー


凄まじい乱打はルイの剣を大きく揺さぶる。

ギャン!と金属音が空中に溶けていく。

ルイの身体が大きくのけ反った。

足の踏ん張りが消えた。

ーやばい・・・ー

細く歪む視線の先に、ギラリと輝く青い瞳。

胸の中から焦燥感が溢れ出す。

ユーリは棒を体の横に構える。

 

「お前は何がしたくてハンターになった。そんな力ではすぐに死ぬぞ。」


命を狩る斬。ルイの身体にメリメリッと鈍い音を奏でながら、棒が腹にめり込む。

 

ぐぁぁ!

後方に弾丸のように吹き飛ばされた。

ルイは苦しそうに四つん這いになり、ゲホォッと苦い息を漏らす。


レオは苛立ちが全身に広がっていた。小さい頃から共に修行した友達が理不尽に覆われる。体をわなわなと震わし、握りこんだ拳が白さを通り越していた。

 

「カルマ!やりすぎだろ!ルイの奴が死んじまう。やめさせろ!」

「うーむ。確かに思ったよりやりすぎているのぉ。」

「いいから!早く止めてくれ!」

「くそ。だれも止めないなら俺が止める。」


腰の剣に手を置き、ビュッとルイの方に飛ぶように駆け出したその時。

ドン!地面に叩きつけられた。

 

「ちょっと待て。今はお前が出る幕じゃねぇ。」


タイガはレオの頭を持ち、身動きできないよう押さえつける。そして、抑揚のない冷静な声を浴びせた。それでもレオはその力に反発し、身体をグググッと起こそうとする。しかし、タイガは体重を乗せ、小さな体を力で押しつぶした。


「離せ!早く止めないと。くそ。取り返しがつかないことに・・・」


掴めない地面を掴むように、必死にもがいて前に進もうとする。レオは胃液が逆流するような焦燥感に駆られていた。その表情はおぞましい何かから逃げているような。レオは必死に手をジタバタさせ、タイガの内腿をぎゅっとつねり上げた。

 

「痛ぇ!てめぇ・・・いい加減にしやがれ!」


タイガは掴んでいたレオの頭を地面から軽く持ち上げ、ドン!と強く地面に叩きつけた。手から伝わる違和感。それに眉間の皺を寄せる。レオの身体が小刻みに震えていた。これは怒りからくる震えではない。そう感じ取った。

 

「止めないと。もうあんな姿は見たくねぇ・・・」

「お前・・・何に怯えてやがる。」


震える身体や声に、タイガは困惑する顔色を浮かべた。そして、細めた視線をルイたちの方に移す。


 

しばらく立ち上がれなかったルイにユーリはゆったりとした足取りで近づく。

 

「お前に期待したのが間違いだった。静かにただのハンターとして生きるんだな。」


そう突き放すような口調で語り掛けると、ルイから視線を外す。ルイはよろよろと力なく立ち上がり、再び剣を構えた。綺麗な顔は汚れ、呼吸は大きく乱れている。ガクッと折れそうな体を必死に耐えていた。

 

「ちょっと待ってよ。終わってない。まだ負けてない。」


息が混じった苦しそうな声をぶつける。ユーリは冷たい目はもうルイを捉えていない。

 

「いいか。立つことしかできないなら寝ておけ。早く諦めろ。」

「うるさい!僕は・・・目標に手が届くまで、届いても諦めない。」

「絶対にNOVAになってみんなを救ってみせる。」

 

ルイは剣をぎゅっと握り、熱く鋭い眼差しをユーリに刺す。

 

ー一撃でいいんだ。一撃だけでも食らわせてやる。ー


ルイの瞳から光が消えていない。そんな希望の光を遮るようにユーリは力の抜けたぼんやりとした眼差しを向ける。

 

「お前はNOVAになれない。そんな非力な弱虫がなれるものではない。違うものを目指せ。」

「もうお前を痛めつけるのも飽きたな。もう終わりにしよう。」


ユーリが左足をゆっくりと上げ、

大地をドン!と踏み鳴らす。

その振動がルイの腹の中を伝う。

意識がユーリから外れた。

その瞬間にはもう目の前に大きく振りかぶるユーリが。

鋭い眼差しがルイに注がれる。

 

「ゆっくり寝ていろ。」


その時、ルイの足元を中心に眩い光が集まる。そしてユーリが最後の一撃を放つためにギュッと力を込めたその時。突如緑色の光が一瞬だけ地面を覆った。

ユーリの動きがピタッと止まる。

冷たく鋭かった瞳が柔らかく溶けていく。


2人の戦いを眺めていたカルマたちも目を見開き、口をあんぐりとさせる。


「おいおい。何が起こった・・・。」

 

思わず言葉を詰まらせるタイガ。そしてレオの口元が緩む。ふぅっと安堵の息を吐き、地面にそっと頬をつけた。


「これがお前の能力か・・・」


ユーリはぼそっと小さく呟き、振りかぶっていた木の棒を地面に落とした。カランと乾いた音が乾いた大地に響き渡る。


大きく振りかぶり、勝負を終わらせようとしたユーリの一撃。

その一撃は放たれなかった。


すでにルイの剣先がユーリの喉元に触れていたのだ。


YouTubeのショート動画で周りの人がみんな母親みたいだったら?

そんな動画を見ました。


鼻をむずむずさせた隣の人。その人の鼻にティッシュを当て、

「チーンってして」。

何かしら事件を起こし、警官の取り調べを受けている人。その警察官が一言

「私はがっかりしました。心が痛いです。」


仕事中に寝ている部下に

「疲れてるの。寝かせてあげて。」


まぁこの資本主義社会ではこんなことできないとは思いますが、

めちゃくちゃいい世界だなぁって感じました。


今日より明日。自分が誰かに優しくなれるように。


そんな教訓も素敵だな。と思った次第でございます。

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