第三章 グリフィンは繰り返す
魔王幹部A:「魔王様、これで我々は大陸の半分を支配しました。人類もここまで来れば、もはや立ち直ることは難しいでしょう。」
魔王:「ふむ…それは良い。」
魔王幹部B:「そろそろ、この地に我々の国を建て直し、人類と共存する道も考えるべきかと。」
魔王:「共存だと?ふざけるな!俺の大事な部下たちを討ち取った張本人がいる限り、戦争は終わらん!」
魔王幹部A:「もしかして…勇者グリフィンのことですか?」
魔王:「その通りだ!奴は我が部下を次々と討ち、今やSランクモンスターとして恐れられているそうだ。」
魔王幹部B:「ええ…彼の無差別な攻撃は確かに恐ろしいですからね。奴が現れる度に村や町が壊滅しているという噂です。」
魔王:「よし、覚悟しろ、勇者グリフィン!必ず俺が止めてやる…」
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### 一方その頃
その頃、勇者グリフィンは「魔王城」だと思い込んで、辺鄙な村を襲撃していた。
村人A:「なんだこの音は…!?うわっ!殺人鬼グリフィンがやって来たぞ、逃げろー!」
グリフィン:「おやおや、どうやら魔王の手先が隠れているな。全員捕まえて丁重に地獄へ落としてやる!」
彼は剣を振りかざし、次々と家々を破壊していく。だが、この「魔王城」は実は魔族の集落であり、戦闘力もほとんどない住民がわずかに住むだけの場所だった。
グリフィン:「よし、これで魔王の手先どもを一掃だ!お、財宝を発見だな!」
彼は破壊した家々から宝石や金属片を掘り出し、目を輝かせる。しかし、その中には子供の遊び道具も混じっていた。
グリフィン:「なんでこんなところにおもちゃが?…魔王、意外に子供心があるな?くっ、やはり悪の根源とはこういう意味か。」
彼の解釈はさらに暴走し、思い込みはますます深まっていく。やがて村人たちは一斉に逃げ出し、村は完全に壊滅した。
その翌日、グリフィンは新たな村へと向かった。村の広場では住民たちが集まっており、静かに祈りを捧げている。
村人B:「どうか…どうか、Sランクモンスター・グリフィンが来ませんように…」
その祈りが終わるや否や、グリフィンが堂々と現れた。
グリフィン:「魔王の手先どもよ、勇者グリフィンがやってきたぞ!」
村人たちは悲鳴をあげ、四方八方に逃げ出す。しかしグリフィンはそんなことお構いなしに、周囲の家屋や物資を調査し始める。
グリフィン:「ふむ、この村も魔王に通じているのか?これは怪しいな…」
何も知らない村長が現れ、グリフィンに頭を下げる。
村長:「ようこそ、勇者グリフィン様。我々の村に何かご用でしょうか?」
グリフィン:「お前、魔王のスパイだな?」
村長:「い、いえ、ただの村長ですが…」
グリフィン:「ならば証拠を見せてみろ!なにか怪しいものはないのか?」
村長は慌てて懐から護符を取り出し、差し出した。グリフィンはそれを見て大声をあげる。
グリフィン:「護符だと!?やはり魔法の気配がする!魔王の力がこの村に潜んでいるな!」
村長:「ち、違います!これは村を守るための…」
しかし、グリフィンは聞く耳を持たず、村の周囲を見回し始める。そして、目をつけたのは村の小さな倉庫だった。
グリフィン:「よし、ここが怪しいな。魔王軍の秘密の兵器が隠されているに違いない!」
倉庫の扉を力任せにこじ開けると、中から野菜や干し肉が積まれた袋が現れた。グリフィンはそれを見て眉をひそめる。
グリフィン:「なんだ、食糧か?いや、待てよ…これは魔王が村人を操るための魔法の食糧だな!」
彼の「名推理」により、村の倉庫が魔王軍の食糧庫であると判断され、倉庫内の物資は次々と破壊されていった。村人たちはその光景を遠くから見つめ、恐怖に震えていた。
村人C:「あの勇者、ほんとに…魔王軍にとっても迷惑な存在なんじゃ…?」
村人D:「いや、魔王様にとっても災難かもしれない…」
一方、魔王城では幹部たちがグリフィンの最新の暴挙について報告を受けていた。
魔王幹部A:「魔王様、グリフィンがまた無意味な破壊を…」
魔王:「ううむ…我が部下を倒すだけでなく、村々を恐怖に陥れるとは…まさにSランクモンスターの名にふさわしい。」
魔王幹部B:「いっそのこと、彼に平和交渉を持ちかけて、仲間に引き入れるのはどうでしょうか?」
魔王:「馬鹿な!あのような暴走を許す者と共存するなど、考えたくもない!必ず俺が討ち取るのだ!」
幹部たちはため息をつきつつ、魔王の決意を改めて聞き入れた。
その後もグリフィンは旅を続け、数々の町や村で混乱を巻き起こした。次の町に着いた時には、住民たちはすでに避難し、町はほとんど無人だった。
グリフィン:「むむっ、皆どこへ行った?…ふむ、ここはやはり魔王の仕業だな。」
そして彼は町の広場に立ち、宣言する。
グリフィン:「魔王よ、どこに潜んでいようと俺の剣で貴様を断罪してやる!覚悟せよ!」
こうして勇者グリフィンは、誰もいない町にその剣を振りかざし、正義の叫びを響かせるのだった。その勇者としての誇りは相変わらず揺るぎなく、彼の冒険はまだまだ続くのであった…