4
最初から歩くのを放棄した私は大人しくズルズルと鼠達に引き摺られながら長とやらの所まで来た。
折角、綺麗に洗ってくれたのに背中面は砂とかで汚れてしまっただろう。まぁいいか。
元来、細かい事はあまり気にならない性格が幸いしてこの状況に問題無く適応できているのだと育ての祖父母に感謝しておいた。
(「おさー!連れてきましたよー!」)
(「我らが帰りたいと渋る聖剣様を何とかして説得してここまで連れてきましたよー!」)
「誰もゴネて無いわ。無駄に盛るな。」
左っ!右っ!と順に掴まれていた腕を振り解き佇まいを直して長とやらに向き合う。
(「おぉ…、良くお越しくださいました。わしはこの者達を纏める長でございます。」)
長と呼ばれているだけはあるなと感心する程の恵まれた大きさの…
え?ワニ?と言うくらいの体長の巨大な鼠がどうぞよしなに。と恭しく首を垂れた。
「あ、いえ、どうも。」
(「さぁさ、ここまでの道中さぞやお疲れ様でしょう。
ささやかではありますが聖剣様を歓迎する為に御馳走をご用意させて頂きました。
どうぞこちらへ。」)
と言って鼠の長は立ち上がり私の側まで当たり前の様に見事な二足歩行で歩み寄ると前脚を差し出したので取り敢えず正解を祈って私も差し出されたその掌にそっと自分の手を乗せた。
するとそのまま自然な流れで御馳走が用意されているテーブルまでエスコートしてくれたのでこれが正解だった様で小さく安堵した。
先程まで長が寝そべっていた地面に視線を向けると、
私がこの洞窟で目覚めた時に敷かれていた仔狼とやらの毛皮とは比較にならない大きさの狼の毛皮がどどーんと主張する様に敷かれていたが私はそれ以上考えない様に軽く頭を振った。
決して親子ではありません様に…。
そう願った所で時既に遅し。であるがそう願わずにはいられなかった。
今の所、人畜無害そうに見える彼らがいつ豹変して私もあの(恐らく親子だった可能性が高い)狼の毛皮の二の舞になるのかと気が気でない。
現に今、ワニかな?と思うくらいの大きさの鼠にエスコートされる私。
テーブルの上には確かにたくさんの御馳走らしきものが所狭しと並べられているが、
私にはどれも手をつける気にはなれなかった。
まさかの昆虫食ですか。うっぷ…。
苦手な齧歯類・鼠!!に続いて昆虫・幼虫系!!
…絶対食べないぞ。
と言うか特に空腹感もないし。
きっと寝る前に普通に晩御飯食べてベットで眠ってる時にいつの間にかこの世界に来た様だし。
評価・いいね・感想・レビュー頂けたら嬉しいです!