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脅しが効いたのか服は返して貰えた。
ご丁寧に洗って乾かしてくれていたようだ。
「で、ここは一体何処なんだ?」
元々私が着ていた服を身に付けながら尋ねてみた。
(「何処と言われましても…、」)
(「ここは我ら鼠の住処でございます。」)
あ、やっぱり鼠で合ってるのか。
「ここがお前達の住処なのは理解した。が、何故私はお前達鼠と会話ができるんだ?」
そう、目覚めて一番の違和感は喋る鼠。
そして肌に纏わり付くこの奇妙な感じ。
神社・仏閣などパワースポットに行った時に何度か感じた一切の汚れの無い澄み切った空気感。
あと身体が異常に軽い。
(「さぁ…?確かにこうやって我々、
鼠達と会話ができておりますがそれは聖剣様も我らと同じ意思疎通の手段が同じだからなのでは?」)
「何それ。テレパシー的な感じ?」
は?つまり私も鼠なのか…?
さっぱりわからない。
目の前には喋る鼠。ほんの少し前まではうじゃうじゃとたくさんいたし。
そもそも私はこの状況になる前は普通に自宅の自室のベットの中で…。
あれ?これ以上考えようとしても何か靄がかかったみたいに上手く思い出せない。
でもなんと無くここは間違いなく地球では無いどこか知らない世界と言う気がする。
はたまた夢の中なのか…。
あ、もしかしたら異世界に飛ばされたのかも…?
あれこれ候補をあげて行くが腑に落ちない。
もう考えるのも面倒で強制終了したところで遠慮がちな声が聞こえた。
(「あのぅ、聖剣様、そろそろ宜しいでしょうか?」)
「何が?」
(「聖剣様が予言の通りに現れるのを我ら一族は長い年月を楽しみにお待ちしておりました。
そして誰よりも一番聖剣様を待ち望んでいたのは我が一族の長でございます。
…この奥に長がお待ちです。」)
最初の遠慮がちな様子からころっと一転して私の腕をガシッと掴むと小さい癖に意外に強い力で問答無用と言わんばかりに引っ張って行く。
残りのもう一匹も素早く空いている方の私の腕を掴むと二匹がかりで私を奥の長が居るらしい所まで強制連行した。
「もうどうにでもなれ。きっとこれはただの奇妙な夢。」
(「何を仰います!これは夢ではございません!」)
私の腕を掴んで引き摺りながら私の腕を抓るな。器用な鼠め。
…そのうち現実世界で目が覚めるだろう。
それにしてもこの鼠達、異様に大きくないか?
猫か兎くらいの大きさじゃないか。喋るし。普通に知能高そうだし。
毛色は皆大体似た様な色だったな。
洞窟の天井は所々、自然な穴が空いておりその隙間から月明かりが差し込んでちらちらと偶に鼠の体毛の色が見えた。
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