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深い眠りから覚めるような感覚で目を開けた。
目を開けている筈なのに視界に広がるのは真っ暗な闇。
「…ん?」
物凄い力で後ろ向きに吸い込まれているかのような感覚がする。
ーいや、違う。後ろから引っ張られているのでは無く、
下に落ちているのだと自覚して恐怖でヒュッと喉が鳴った。
ゴオォォォーーー…
風圧と轟音に包まれてパニックになり、
必死に何かを掴もうとジタバタ動く四肢。
が、当然何も掴める物も無くそのまま落下を続ける。
(どうして?!何この状況?!)
あとどれくらいで自分は地面に叩きつけられることになるのだろうか?
落下による風圧と恐怖で身体を上下に反転する勇気は無かった。
恐怖に支配されジタバタもがくのを辞め、
もう間も無くやってくる死を受け入れるように全身の力を抜いて目を閉じた。
予想通り直ぐに背中いっぱいに衝撃を受けドボンッ!!という音を最後に意識は遠退いた。
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心地良い微睡の中ふと、意識が覚醒したのと同時に人の気配を感じる。
が、目を開けることが躊躇われた。
何故なら私のすぐ側で物凄く大勢の気配を感じたからだ。
それは囁きの様に小さく、かと思えば威張った様に大きな声で何かを主張していたりとか。
一体自分が今どういった状況かもわからないので暫く耳を澄ませて話し声に集中することに。
(「まだ目を覚ましておらぬのか!」)
(「えぇ、まだ一度も。」)
(「死んでるのでは?」)
(「そんなはずはない!」)
(「死なれては困るわい!」)
(「この者が本当に“千年に一度の聖剣に選ばれし者“であっておるのか
?」)
(「間違いありません!予言の書に書いてある通りに、
昨夜は数えきれない程の眩い星たちが流れておりましたし、
黄金に輝く月はいつも隣り合った二つが昨夜は綺麗に一つに重なっておりましたでしょう?」)
そうだそうだ!観た!確かに観た!聖剣様で間違いない!!と辺りは一層、騒がしくなった。
(「ええい!喧しいわい!」)
まだ見ぬ何者かの一喝でほんの少しだけ静まり返った。
が、すぐにまたガヤガヤと騒がしくなった。
セ イ ケ ン サ マ … ?
聖剣…様??
これ以上狸寝入りをしても欲しい情報は得られないと観念してようやく目を開け起き上がった。
「あの、ここは一体…?!ぎゃあーーー!!!」
目を開けたことを激しく後悔した。そして絶句。
そこには視界いっぱいに広がる大量の鼠がぎゅうぎゅうに集まっており私の叫び声に反応して一斉に私の方を見た。
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