九十五話 やらかし結婚編30
国王との昼食を終え、マリアベル様と二人城下町へと赴く。俺は平服だけど、マリアベル様は目立つドレス姿…ちょっと目立つが、変な事は無い。
むしろ、俺ら炊き出しで散々顔を広めてきたのだ。マリアベル様は何処ぞの故バカ王子と比べて平民からの人気は高いし、次期王にとの声もあったり無かったり。群がるって程でもないが手を振ってくる人は多い。今日は炊き出し無いだーよ。月二回だーよ。
それはさておき…何しようかしら。ノープランなのよ、こっちは。マリアベル様を見ると悩んでいる様子…午前中から行くところ決めていたみたいだし、昼飯だって何処で食べるか考えていたんだろう。
それを潰して怒っているのは当然か…宥めるために飴ちゃんでも売ってないかな。細工的なのでも良いしペロペロキャンディでも可。子ども扱いするなと更に怒られてもええねん。
「アレクシール様…公園に行きませんか。落ち着いて話がしたいです」
「ああ…でも、デートのプランはいいのか?」
「…私めは、どうやら焦っていたみたいです。次がある事も、初めてアレクシール様と会った日の事も忘れて…」
ふむ、重症だわ。健忘症かな、病院行こう……あ、土曜だから午後休診だわ。月曜の朝イチだな……
という冗談はさておき。まあ、俺信用されてないなぁ……十四人も嫁が居たら嫉妬とかする子は当然居ると思ってはいたよ。でも、それはミュゼットやレシア、クリスティーナ嬢とかって思ってた。レシアは案の定嫉妬してたけど。
王女という絶対的地位に居ても…いや、だからこそか。決して、俺の愛情を信じきれないでいた…あの時だけはミュゼットの事忘れて、マリアベル様だけの為に戦ったのよ。
好きな人とのダンス…俺がそうであったなら嬉しいなとか、ずーっと思ってたのよ。まだまだ表現足りてないの分かったわ。今日は愛してる連呼な。
*
あまり人の居ない大きな公園に移動して、ベンチで語らう…というか、マリアベル様の独白を聞く。勿論、膝の上に乗せているのは言うまでもなく。なお、横抱きである。
レシアたちと徒党を組んで俺との結婚目論んでいただの、俺への縁談を裏で潰していただの……今となってはどうでもいい事だが、良心の呵責の耐えられなかったのだろう。まあ、未成年でも婚姻に持ち込むアグレッシブさに比べたら…
「…思えば、アレクシール様に嫌われるような事をいっぱいしてきました…」
「…それは違うと思うけどな。少なくとも、打算的に俺とどうこうしたい連中を排除してくれて、大切な人だけを選別してくれたんだし…嫌いになる要素は全く見当たらないな」
「それは…物は言いようですね…」
フフフとマリアベル様が笑う。残念ながら、一ファンとしても男としてもその笑顔に惚れちまっているんだから仕方ない。
そんな強硬策に思い至ったのも俺への愛ゆえ…そう考えると、健気に見えてくるもんだ。多少の腹黒さなんて可愛らしさにしか見えない。
未成年じゃなかったら、このまま木陰に行って……いかんいかん。一応は法を守る側のアレクくん。あんな冷めきった料理ばかり食べて発育不全のマリアベル様に無体な事したら絶対ヤバい………ルチルよりチビっと育ってるけど。
マリアベル様をぎゅっと抱き締め、愛を囁く。「愛してるよ。俺だけの王女様」と……キャラじゃないんだけどねー。
でも、バカ王子には愛されていた原作…王子派の凶行に対する償いだったのかはよく分からん。でも、そんな同情で言うわけないだろ。何処で歪んだのかは知らん…その分、兄貴分の愛情も俺がまとめて注ぐと決めた。
他のものも注ぎたいけど…ナイトソードの状態に気づいているのか「いいですよ、アレクシール様…」と憂いのある眼差しで誘ってくる悪女。
もうロリコンで……いや、我慢我慢のアレクくん。手はまだ出さない。手は…




