八十九話 やらかし結婚編24
買い食いしつつ、王都の露店を回る…川エビはあった。小さかったから買わんかったけど。グラタンにしよう…グラタン皿人数分あったかしら?
「アレクシール…そんな思い詰めず適当に作れよ。あいつら美味いもん食い慣れてるか、食に興味ないかのどっちかなんだし、アレクシールが作ったのを不味いって言って嫌われたくないだろうから、よっぽどのもの作らなきゃ大丈夫だろ」
「……そんなものかなぁ?」
「むしろ、アレクシールは選ぶ事も捨てる事も出来る立場だろ…十四人も居るんだぞ」
「捨てる気は皆無なんだがな…選ぶのは全員なのは間違いないけど」
そう思われているのは心外だが、そう思わせているのは俺である。目一杯愛しているようで愛し足りてない…やっぱり早く結婚休暇取ろう。
まあ、まだ新婚四日目だから環境の変化とか戸惑いとかあるのは仕方ないんだ。俺もまだ戸惑ってる…毎夜毎夜、良い女を抱いて夢じゃないかと思うくらいには。
「まあ、アレクシールがそういう奴だってのは、あたしはよーく分かってるから。だから、皆頑張って気に入られようとしてるんだけどさ…」
「…よく見てるんだな、レシアは」
「あたしは、何処かのバカに裸見られて金貨三百一枚で買われた悲劇のヒロインだからな。当然だろ…あいつらには第一から三までは譲ったけど、王都での付き合いは長いんだし…」
買った覚えは無いんだが…まあ、懐柔したようなもんだ。「あれ食いたい」と言えば与え続けた。昔なら年の離れた兄と妹に見えたろうが、今はどうだろう。
大して変わらない気がする…他人が見れば。関係性は変わってしまったが、ずっと一緒に居るのだけは変わるはずがないか。
「そうだな。これから死ぬまではずっと一緒だ…子どもが出来てもな」
「バッ……急に変な事言うなよ」
「変な事か? ちょっと前まで子どもだったレシアが大人になって俺の奥さんなんだぞ。しみじみ思うんだよ…俺も年だからなぁ…」
「…何か、あたし見る目が親のような気もするんだけど……というか、まだまだ若いでしょ」
親居ないだろ、お前…まあ、父性持って接してたのは事実だ。俺が育てたってまでは言いたくないが、ほぼそんな感じ…
もっとも、絡み酒夫人の方が色々してるんだけどもな。「レシアちゃんを泣かせたら許しませんからねっ!」と前々から絡まれているわけだし…あっちの方が母性強いのよ。はよ白い結婚から脱却しろや。
*
食材買って帰ったら、そんな絡み酒夫人が来てた。しかも、メルとルチルに酒を飲ましてた……ミュゼットは辞退していた模様。俺の親類だから酒弱いと思っているようだ。
何が言いたいかと言うと…メルもルチルも酔っ払ってる。略してメチルアルコール…我ながら寒い。
夕食の材料は余分にあるから増えても良いのだが…正直、メルに手伝ってもらう気で居たので辛い。アンが未成年だから酒飲まなかったのは不幸中の幸いか。
というか、昼間から酒飲ませるなや。もはやアル中…手遅れである。
「ミュゼット、この酔っ払いたちの面倒もう少し見ててくれるか?」
「…嫌ですけど、仕方ないですわね。エビフライの為ですわ」
「…ミュゼット、海産物無いねん。冷凍技術無いねん…この世界」
ミュゼットは大いに落ち込んだ…今度、エビフライ出すレストラン行こうな。俺も魚フライ食べたい……川魚で出来るけど。活魚運搬の普及に努めてもらわねば刺身も食えない世の中よ。川魚の刺身は寄生虫怖いもん。
ちょっと川エビ買ってこよう。川エビの唐揚げとかお子様ランチ向きじゃないけど、エビフライには間違いないもん(暴論)




