八十四話 やらかし結婚編19
伯爵は頭皮素揚げにされ、王城の牢屋行き。おそらく当主交代は確定。ワンチャン、絡み酒夫人の耳に入ってツーランク降格チャンス。
レシア、ヤーマン伯爵家に養子入りする話もあったのよ。そんな子に危害加えようとした奴を許してくれるかぁ…と伯爵の臭い耳元で囁いてやった。顔面蒼白だったわ…ゲハハハハ(ゲス)
まあ、やるんですけどね。というか、もうお手紙送ったんだけどね。学校に帰るついでにと、わんこのわんこのクリスティーナ嬢に託した。中身は教えてない。シェリチェ嬢は察していたが。
そんなこんなで、今日の活動終了。なお、仕事中にナンパしていた若い連中は残業で今回の件を書類に纏めるよう言っておいた。
残業代は出す…「きちんと話聞いてたんなら、きちんと纏めれるよな。でなきゃ、明日も残業だ」と言っておいた。
騎士学校に書類の書き方を教えるように進言しよう。今日日、騎士も脳筋だけじゃ食ってけないのよ。むしろ、そんなんでよくエリートの王宮騎士団が務まるもんだ。改革しないとヤバすぎる…
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るっちーとおでけけます。おっと、テンションが上がり過ぎた…処す子ちゃんだぜ、美少女だぜ。ストールマフラー巻いてないぜーっと。まあ、もうすぐ夏だし仕方ない…持ってなかったらクリスマスプレゼント候補。
そんなるっちー呼びが定着してきつつある残念娘…さっきの拷問見てたら逆らえはしない。ただ唐揚げ取りに行く(鶏肉とは掛けてない)だけではダメだ。
幸い、銅貨三枚残った。チョコバナナ屋さんが出てたのを確認している……昼も沢山食べたのに食えるだろうかと考えつつ買う。杞憂だった…
「アレク。一口食べる」
「全部食べていいんだぞ?」
「メルに怒られる…それに、一個を二人で分けるのはデートの定番」
食べ掛けのチョコバナナを差し出してくるるっちー。体格差あるから親子に見られそうな構図…
まあ、そう言われたら拒む事は無い……が、またバナナかよ。間接キスとかあるだろうけど…昼からバナナしか食べてない。
ムードとか以前に晩飯の心配…カレーが無ければウインナーと唐揚げでいいじゃない。とか考えてる間に、るっちーに無理矢理バナナ突っ込まれた。
「アレク、デートでは相手の事を考える」
「バナナ突っ込むのを相手の事考える行為だと思うか?」
「アレク。バナナは全てを凌駕する」
ダメだこいつ、やっぱアホの子だ…残念美少女だ。残念じゃない嫁どれだけ居るんだろう。居ない気がする…
唐揚げを受け取り、帰路へ……の途中、アクセサリーの露天商を見つけ、るっちーが立ち止まった。
「……これが欲しいのか?」
るっちーが見入っていたのは、雪の結晶をあしらったネックレス。手作り作品なのか、やや歪んでいるのだが、第三夫人なのにネックレスを贈っていないというのは俺にしてみれば心苦しいところだ…
とはいえ、露天商のアクセサリー銀貨三枚…ミュゼットたちに贈ったものと比べるとなぁ。買えないわけじゃない。それくらいなら制服の裏に縫い付けてある金貨で買える。そして、シルディナ嬢に怒られる未来が見えてるが…
「るっちーは安い女。アレクがこれ買ってくれたらイチコロ」
「はいはい…店主。これをくれ」
まあ、十年以上片恋してくれていた相手に何もしてないっていうのはな。欲しいというものは何でも与えたいチョロい旦那、それがアレクくん。
支払いを済ませ、るっちーの首にネックレスを着ける。なかなか似合っている……とは言い難い。安物を着けるような女じゃない、美少女なんだぜ。
まあ、それでも少しだけはにかむルチルレートは可愛い。でも、二つ目に買えとねだったのは却下した。指輪くらいまともなの贈らせてくれ、バナナの銀細工付きのとかマジでやめてくれ。
結局、自分で買ってたけど。




