七十八話 やらかし結婚編13
手土産持参で帰宅…といっても馬車でだけど。とりあえず、いろんな種類のプリン買ってきた…苦手な子居るかもしれないから他にも色々。レシアに無駄遣いするなと言われるも、これが俺の愛なの。
「お兄様…お小遣い制にしましょうね。今朝お金無いって言ってたじゃありませんかケーキ類二十個も買ってくる余裕なんてありますか?」
「…喜んでくれないの?」
「嬉しいですよ。前から訪ねてくるたびに色々と差し入れとして貰って……でも、太るんです。せめて人数分だけ良かったじゃないですか」
スイーツ類は大好物で天敵…うん、分かるよ。でも、シルディナ嬢はもう少しお肉つけてもいいと思う。他の子だってそうやねん…それに、幸せそうに食べている笑顔見る方が好きよ、俺は。
結局、お小遣い制になった。一日銀貨四枚と銅貨五枚…毎日お昼カレーなら何とか手土産買って帰れそうである。え、愛妻弁当作ってくれるの…ボカァ幸せだなぁ…
「その代わり、期待はしないでくださいね。アレク兄様…誰が作るかは公平に決めますから」
「少なくとも手作りでチョコくれた面々は大丈夫だろ……いや、別にくれなかった子たちがどうとか言うつもりじゃないけど」
「アレク、チョコバナナならすぐ作れる」
「るっちー、晩御飯前にバナナを食べようとするのはやめてください」
メルはるっちーに対して当たりが強い……あれ、暗殺者界隈で最強なのに無能ムーブしてるのは日常もなの?
*
とりあえず、プリンを一個持ってミュゼットの部屋に…メルの予想通り、筋肉痛とかで寝込んでいるようだった。
「ミュゼット、大丈夫……じゃなさそうだな」
「誰の所為だと思ってますの…」
「可愛すぎるミュゼットの所為…枕投げようとするな。体に響くだろ」
ベッドに横になっていたが、俺の言葉に上半身起こして枕投げようと構えてくるミュゼット…からかってない。本気で言った。
「ほら、プリン買ってきたから食べるだろ…」
「食べさせてくださいますわよね、当然…」
「はいはい…喜んで」
ツンツンしているが本質は昔から変わらず甘えたがりなのは暴いたから、近くの椅子を持ってきて食べさせる。昔みたいに……扉の向こうから誰かの視線がするので、戻ったら全員からせがまれるんだろうなぁ…良いけど。何なら膝の上に乗せて食わせちゃる。
そんな事思いつつも、今はミュゼットに集中…プリンの甘さに笑顔を見せる。もう一個持ってこようか…むしろ際限なく食べさせようか。そう言ったら拒まれた…やはり体重には敏感な年頃なのね。
「デリカシーって言葉、小兄様は覚えるべきですわ…」
「覚えときます…」
「それと…シェリチェ様の憶測ですが。メルモニカの事に関して伝えておきたい事がありますわ」
メルの事ねぇ…ミュゼットが言うには、原作では本来のクソボンボンはミュゼットの代わりのようにやってきたメルモニカを偏愛し純潔まで奪って婚約者にしたのではないかという推測。
更に言えばメルモニカ自体もそれを受け入れていて、親友エンドで辺境伯領に帰った二人はクソボンボンに溺愛されたのではという邪推……今まさに似たような事してる。むしろ、なお悪い方向で。
「…つまり、やり過ぎるなと?」
「そうですわよ……小兄様は昨日、皆様の愛が重いと言いましたけど、小兄様だって大概ですし。メルモニカが原作みたいに歪みかねませんわ」
「うーん……まあ、忠告は受け入れるけどさ。それって要は嫉妬してるって事だろ…メルに」
「……メルちゃんは可愛いですもの」
そこは素直に認めるのね。でも、シェリチェ嬢の思い込み以上に俺強欲よ。ミュゼットやメルは勿論、嫁全員壊れるほど愛するつもり。
というか、俺からしてみれば原作以上に歪んでると思うんだ、メル……るっちーに対して当たりが強いところとかさ。とはいえ…
「…やっぱり無理だわ。加減出来る気がしない…昨日のミュゼット見たら尚更な」
「小兄様…怒りますよ」
「それに…他の人からここまでしか愛するなって言われたらどう思うよ?」
「…嫌ですわね」
そういう事だ。本気で拒絶されたならともかく、望むなら望むだけ……マムシドリンク飲まねば。




