六十一話 やらかし妹・乙女期編⑥
年を越して耳に入ったのは、クソ王子たちが勝手に王城でクリスマスパーティーを開いて沢山の貴族を呼んだけど、ほぼホームパーティー等前々から予定していたので参加者もまばら、婚約者であるミスティア様たちでさえも参加を蹴って教会のミサに行ったという噂だった。
わたくしたちも招待状が届いていたようだけれど、小兄様が丁寧な断り状を送っていたので問題ないわね。ただでさえ、あのクリスマスパーティーと同日って時点で行くわけなかったし…
結果、王城を国王に無断で使った事や、きちんとした手続きを踏まずに貴族を呼び寄せようとした事、散財して大失敗の大赤字になった事などから謹慎期間二ヶ月を一行には言い渡されたらしい。ミスティア様たち、もう逃げていいと思う。
るっちー曰く、「次やったらマジで処す」とまで最後通牒されてるわけだし……るっちー、弟でも容赦ない。むしろ、弟だからか…
そんなこんなで、学園生活は平和。屋敷ではメルモニカが小兄様を朝這いし出したのに対抗して、わたくしは透け透けのナイトドレスで誘惑…ええ、恥ずかしいですわ当然。でも、それくらい女だと意識させないと小兄様はダメとクリスマスパーティーで分かりましたわ。
長年、妹と思ってきたのですから意識改革は難しい…と思っていたのですけど、ナイトドレス姿が功を奏しているようですわ。暖かくなる頃にもう少し薄くしましょうか…
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二月ともなれば、恋する女の子はソワソワするものなのはこの世界も同じ…でも、聞けばそういうのは余裕のある平民が中心で、政略結婚もある貴族社会にはあまり浸透していないという。所謂、バレンタインデー…
そういえば、わたくしも今までは小兄様にチョコを贈った事はおろか、王都に来るまでチョコレートを見た事もありませんでしたわ。
「こんなに黒いの、食べられるのかよ…」
「チョコバナナは絶品。レシアも食べる」
「るっちーは渡さないんですから邪魔しないでください」
皆様で小兄様に贈るチョコ作り。ルチルレート様は今年は不参加…匿名希望で贈れば良いものを意地を張って、もう…
まあ、いきなりチョコバナナ贈られても食べないわね、小兄様なら。わたくしでも食べない…せめて無難にハート型でいい。
料理素人が多いけど、チョコ作りくらい前世でやった事あるわたくしは教える側だ。むしろ、メルモニカはともかく、クリスティーナ様が教える側なのが驚き…完璧過ぎるわ、このわんこ。
結局、わたくしはマリアベル様とシルディナ様と一緒にシンプルにハート型のチョコを作った。メルモニカとレシアさんはチョコクッキーとチョコチップクッキー。クリスティーナ様はトリュフチョコで、セリーヌさんは生チョコ…年上の技量高すぎて笑えない。
「…これ、全身に塗ってわたくしがプレゼントって言っても良いかしら…」
「ミュゼット様…引きます。ドン引きです」
「言ってみただけですわ…」
余ったチョコをコーンフレークにして皆様で食べよう…だから、真剣に塗る量の計算とかしないでくださいますか?
でも、まあ…同じ人を好きになった事でこうやって気兼ねなく接する人たちが居るというのも悪くありませんわね……小兄様、虫歯にならないと良いけど。
それぞれにきちんと渡した後日。それぞれが贈ったチョコを机に並べて「うーんうーん」と唸っている小兄様の姿を見かけた。そういえば、変な保存癖あったわね。早く食べろとメルモニカと一緒に全部無理矢理食べさせたら、今度は腹痛で「うーんうーん」唸り声上げて寝込みましたわ…まったく。心配しなくても来年以降だって作りますのに…




