五十五話 やらかし妹・少女期編⑨
「では、同盟の新たな名前を考えましょうか。さすがにアレクの嫁同盟では安直というか…るっちーの思惑が先立ってますし」
「Oh…るっちー不覚」
「そこ、重要ですの…」
会話も一段落したと思ったら、メルモニカが余計な事を言い出した。名前とかどうでもいいし、紛糾するのが目に見えますわ…
「では、乙女同盟でどうでしょう。あまりにも直球だと、お兄様の耳に入った時に勘付かれますから…」
「では、それで」
「…シルディナ様の案は素晴らしいですが、ミュゼット様、即決はどうかと」
喧嘩良くない。後、最年少の子の言う事は素直に聞くのが年長者の務め……というより、変な案出される前に決めとかないとメルモニカを問い詰めるの忘れますわ。
月に二回、皆で集まってお茶会をする約束を決めて解散となった。なったんだけど……そのまま、わたくしへのダメ出し会にシフトした。なんで?
「アレクシール様はダダ甘なんです。少し上目遣いでお願いしたら大抵の事はしてくださいます。頭を撫でて欲しいとか、ギュッと抱き締めて欲しいとかくらいなら簡単にしてくださいますよ?」
「小兄様…王女様になんて事を…」
「ミュゼットお姉様、ワタクシはいつも膝の上に乗せてもらっています。それに色々なところを撫でてくれます…とても心地良くて、でもきっとミュゼットお姉様の代わりなんだなって分かっちゃうんです…」
あのロリコンナイト、泣かす。というか普通に逮捕懸案…それやると皆に恨まれるから、グーパンする。こんな可愛い子に手を出して…
「アレクシールって、子ども好きだからねぇ…孤児院に行ってもやってるわ。あたしも昔、膝の上に乗せられて文字とか覚えさせられたし」
「とか?」
「自分も青空教室で教わりました」
「……ミュゼット様、変な想像してませんか?」
「べ、別に青空の下であんな事やこんな事したとかしたとか思ってませんわよっ!」
皆様の見る目がやたらと生温かい…特にやめろ、るっちー。誰の所為で歪んだ知識植え付けられたと思ってるのよ。
「アレクシール卿も男の人ですから、そういう事したいって思う時だってありますよ。問題はそういう事をアタシたちにしてくれるかってだけで……全員、何処と無く妹扱い止まりなんですよねぇ…」
「…確かに、クリスティーナ様の言う通りですね。それもこれも、何処かの妹が足を引っ張るから…」
「簀巻きにしてアレクの前に差し出す? 媚薬なら常備してる」
「メルモニカ、ルチルレート様。恐ろしい事を言わないでくださいっ!」
二人なら本当にやりかねない。そもそも、わたくしを応援してくださるのではなかったのかしら…きちんと秘密まで話したのに。
まあ、最終手段としてそれもありかなとは思っているけど………というか、暗殺手段とかで使うの、その媚薬…
*
今年中に何とか改善しないと簀巻きにして小兄様のベッドに押し込むって確定された…酷くない?
会も終わって帰宅した後、わたくしは悶々と考えていた。セリーヌさんやクリスティーナ様のように押し当てる程の胸も無ければ、レシアさんのような積極性、マリアベル様やシルディナ様のようにコンパクトかつ甘え上手というのも持ち合わせていない…ついでにルチルレート様のサプライズ感も皆無。
もう、小兄様のベッドに潜り込んで襲ってもらうの待とうかなと部屋に入ろうとしたら、メルモニカに止められた。毎日残業続きの小兄様を睡眠不足にするつもりかって…それ言える立場? 疲れて帰ってきた小兄様に会話させてるくせに…
「だいたい、今までロクに構って来なかった妹がいきなりベッドの中で待ち構えていて襲うと思いますか。せいぜい部屋間違えたんだな、仕方ないで終わりますよ…」
「小兄様なら大いにあり得るから否定出来ない…」
地道に修復していくしかないのね…結局。




