四十九話 やらかし妹・少女期編③
メルモニカと一緒に一足早く屋敷に戻ってきた。
学園に手紙を送るよう使いに出した使用人が最後に出る直前に小兄様が戻り、留守番を頼んだと言った…
彼女は新人で、本人も分からないままレストランへ行くよう言われ、居候としか思われていなかった小兄様に留守を頼んだそうだ。
伝達不足と行き違い…一番祝って欲しい人に祝ってもらえないどころか、置いてけぼりにして家族じゃないとか祝って欲しくないなんて思わせてしまうような事をしてしまった。
今までだって、小兄様には冷たい言葉ばかりでいつ愛想を尽かされてもおかしくない…わたくしなら、耐えられない。
小兄様の部屋名前に行き、ノックをしようとしたその時、中から「うぅ…うぅ…」と声がした。
「兄様……泣いて…るの?」
「ミュゼット様、部屋の前にこれが…」
「これ、兄様からの…」
メルモニカに渡された箱を開けると、濃紫のジュエリーボックスとアメシストのネックレスが入っていた。
メルモニカにも同じような箱の中に薄桃色のジュエリーボックスとピンクトパーズのネックレスが入っていた。
「メルちゃん…覚えてる。六歳の誕生日の時、兄様がピンクトパーズの鉱石を持って帰ってきたの…」
「覚えてますよ。ミュゼちゃんこそ、六歳の誕生日のお祝い、アメシストの鉱石だったの忘れてませんか?」
「忘れるわけないじゃない…今も持ってるもの」
「…私もです」
気付けば、兄様の部屋から足が離れサロンへ二人してやってきていた。単に兄様に合わす顔が無かったからだけじゃない…拒絶されるのが怖くなった。
でも、そこで兄様の本心を更に知る事になる…
「これ…」
「…『ミュゼット、メルモニカ。合格おめでとう』……」
「何やってるの、わたくしたちは…」
欠けたホールケーキ。メッセージプレートには、合格祝いのメッセージ…
兄様から優しさの塊。兄様がどうしてわたくしたちから離れていったのか分からないほど子どもじゃない…
兄様はあの手紙の通り支えようとしてくれたのに。どうして、もっと……
「ミュゼちゃん。泣いてる暇があるなら食べますよ」
「えっ…」
「これは、アレク兄様が私たちに用意してくれたケーキです。他の誰でもないアレク兄様からの気持ちなんです。残り全部、二人で食べましょう…もし、捨てたりなんかしたら、もうアレク兄様を好きで居続ける資格なんか無いです」
メルちゃんが半分にしたケーキを差し出してくる……正直、食べないって選択肢は無い。無いんだけど…さっきまでレストランで沢山食べて食べ切れる自信もない。
でも、そんなのは言い訳。兄様は一人でケーキを食べて何を思ったのだろう。せっかく買ったのにわたくしたちは居なくて…辛くないはずが無い。また兄様を傷つけた…
……というか、兄様これ6号サイズよね。絶対大きいのがいいとかって感じで買ったわよね?
メルちゃんは黙々と食べてるし…ええ、食べますとも。食べればいいんでしょ、食べれば!
*
案の定、翌朝には腹痛と胸焼け、それにニキビ…メルモニカも同じく。腹痛と胸焼けはまだしも、こんなニキビ顔で兄様に会ったら幻滅される…いや、もう手遅れかもしれない。
兄様に嫌われてしまっていたら…そう考えるだけで部屋から出るのが怖くなった。前世の記憶が邪魔してくる…
その日からまた、あの悪夢を見るようになった。しかも、トラックに轢かれたのが兄様になって…




