四十六話 やらかし妹・幼少期編④
泣きながらメルちゃんを起こした。
メルちゃん宛ての手紙を渡して少しすると、メルちゃんも私と同じように泣き出した。
他の人が泣いているのを見ると少しだけ冷静になれるって本当だったんだ…少しだけ落ち着いた私はメルちゃんの手を取ってベッドから降りた。
「アレク兄様を追いかけよう」
「ミュゼちゃん……うん」
部屋を出て、階段を降りて、玄関を出ようとしたらゴリラに止められた。
追い掛けても無駄だって…もう追いつけないって…クソゴリラ。
その後も何度も何度も二人で家出してアレク兄様を探そうとした。でも、その度に連れ戻されて…とうとう、外出禁止を言い渡された。
それからはメルちゃんと二人、泣いて過ごす日々だった。そんな時、あの人がやってきた。
*
「ミソッカスは?」
「み、ミソッカス?」
大きな風呂敷包みを背負ってやってきた女の子…ゴリラ兄様たちが居ないから私とメルちゃんが対応しなきゃいかなかった。
確か、ゴリラ兄様たちの結婚式に来てた…
「えっと、ルチルレート・スタンティーナ公爵令嬢様ですよね?」
「うん…るっちーでいい」
「る、るっちー?」
変な人だ。というか、なんだろう…あの時みたいな怖さがあまりない。普通の女の子に見える…
「それで、ミソッカスは?」
「み、ミソッカスとは、兄様の事ですか?」
「…そう。アレクシール・カノーラ。今年で成人したから嫁入りしに来た」
「よ、嫁入り…」
メルちゃんも驚いている…そりゃあ、いきなり来て嫁入りとか言われても困るよね…
「ど、どうして嫁入りなんて…」
「アレクにパンツ見られた。責任取らせる」
「パンツ………え? それだけで嫁入りですか?」
「YES」
おかしい……じゃなくて、アレク兄様の事をきちんと話さないといけない。それに私たちの気持ちだって…
ルチルレート様にアレク兄様が居なくなった事や私たちの気持ちを伝え、手紙も見せた…
「…なるほど。二人もアレクが好き………なら、同盟結ぶ?」
「ど、同盟ですか?」
「アレクの嫁同盟。僕がアレクを探す…二人はアレクを陥落する。そして僕も加わる…三人仲良くアレクに愛される」
「そんなに上手くいくわけ…」
「僕、公爵令嬢。それなりに権力ある…でも、権力だけで愛は勝ち取れない。でも、二人はアレクに愛されてる。僕はそのご相伴にあずかるだけ」
「…公爵令嬢なのに側室でもいいと?」
「アレクのものになれるなら愛妾でもいい。僕はそういう女」
なんか、敵に回してはいけない気がする……それにアレク兄様の事をパンツ見られたってだけで責任取らせようとする人だ。しかもお妾さんでいいとまで言う…逆らったら権力で潰される。ガクガクブルブル…
「わ、分かりました…」
「ミュゼちゃん、いいの?」
「ミュゼット、メルモニカ…僕たちはアレクを好きになった人同士。アレクの悲しむ事はしない。アレクを悦ばせる事をする…その為なら、手段は惜しまない。三人でアレクと幸せになる」
「…信じていいんですよね?」
「YES.るっちー嘘つかない」
メルちゃんもルチルレート様を信じ、三人で同盟を結んだ。後になって思えば、とんだ悪魔の契約だったような気もする。
その後、ルチルレート様はゴリラ兄様に、アレク兄様宛ての手紙を渡し、王位継承者の命でアレク兄様に手紙を届けるように命じた。それを公爵家の人が追って居場所を特定する為に。
そして、私たちにはアレク兄様を陥落出来るよう家庭教師をしてくれる事になった……地獄の始まりだった。公爵家怖い…




