四十話 やらかし22歳期・隊長編⑨
王都に住む場所無し…その事実に愕然としたミュゼットたち。もうここに住もうじゃないかと諦めムード…かと思ったが、そうでもない。ここで稼いで王都に住む。俺らの戦いはこれからだムード…
まあ、あまりモタモタしてたらマリアベル様たちが群れて襲ってくるもんな。そう言ったら余計張り切り出した。さすがに戦争は回避したいか。
とりあえず、金や。金稼ぐんやー……どうやって?
「温泉とかですわね」
「温泉……混浴。レジオネラ菌…源泉使い回しの悪循環…」
「アレク兄様、変な事を言わないでとりあえず掘ってきてください」
ツルハシ渡された。手当たり次第掘れワンワン…せめて掘削機欲しかったわー。後、ダウジング用の棒。木刀と適当な枝で代用しよう…メルだって本気で言ってるわけじゃないだろうし…
アレクは七箇所の温泉を掘削した…うーん、どうしてそうなった? ちょっとピンクボールのミニゲーム風にメガトンツルハシで遊んだだけやで。枝が的確過ぎて草(むしろ木刀)
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ミュゼットさんが仕事した。具体的にはクソ親父に温泉七箇所の権利を売却。一つ当たり金貨四百枚…安いような高いような。
で、二千七百枚を家の購入資金に。百枚は俺が修道院に渡した分の補填にさせた。曰く「ああいうのは親が支払うのであって、小兄様は親じゃない」と…母親代わりで育ててきた俺、全否定された。ぐっすん…
領地の管理はクソ親父に丸投げ。「どうせ引退するんだから、湯治になるし良いでしょう」とミュゼットとメルが押し切った。まあ、俺も仕事あるし来るまで半月もかかる土地要らんわな。
という事で、王都帰還である…俺だけ。ミュゼットとメルとアンはクソ親父たちの所に寄って家の購入を確認してから帰るという。家選び俺だけでするのか…というか、使用人必要だと思うからメルかアンに着いてきて欲しかったが…俺のナイトソードがもつもたないの前に師匠が乗せないか。俺の愛駄馬、ワガママなのよ。
「では、小兄様。良い家を選んでくださいね」
「良い家って、具体的に言ってくれよ…」
「大きな家、部屋が沢山ある方が良いですわね。使用人の部屋も必要ですので最低でも15室くらいはないと」
それ、豪邸って言うんだぜ。辺境伯邸買い戻せって言ってるようなもんやん…足りるかな。足りない気もする。アスラーンに金借りよう…伯爵なら金持ってるだろ(そんなに親しくない)
まあ、ミュゼットの要望は叶えてやりたい……あれ、そういえば俺、将来の伴侶に誰選ぶか悩んでたんだった。どないしよ……
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復路半月…合計しておよそ二ヶ月の長旅だった。そして、未だに伴侶誰にするか決められへんヘタレである。
王都に戻り、元辺境伯邸を下見……売約済やん。オワタ\( ˆoˆ )/
まあ、売れたものは仕方ない。他の家ないか不動産屋に聞いてみよう。小さな家を買うのでしょう…ってくらいの物価高だけど、王都。
と、暴走気味に馬車が目の前を駆け抜けていく…と思ったら、急停止した。そこから降りてくるのはマリアベル様……ちょっと額赤くなってる。あんな急停止したら前のめりに倒れるわな。
「アレクシール様、おかえりなさいませ」
「ああ、はい…」
「辺境伯の別邸、きちんと押さえておきました」
あ、そうなのね…きっとミュゼットの差し金だと思う。手紙の方が早く着くからね。俺の愛駄馬遅いからね…調教しよ。
で、マリアベル様曰く代金金貨二千七百五十枚……足出てるやん。何とか足りたけど。残金金貨三十五枚……まあ、二千七百枚分はクソ親父の小切手だったけども。
マリアベル様が手続きしてくれるとの事で、その辺りはお任せした。好意は素直に受け取るタイプよ(単に面倒なだけの丸投げ)
「では、次期王宮騎士団長アレクシール・カノーラ侯爵様の邸宅として手続きして参りますね」
「…待って、何それ。情報量多い」
「次期王宮騎士団長アレクシール・カノーラ侯爵様」
何故繰り返すし…団長とか聞いてない。あ、あれか×ヶ×ヶ団的な。冒険が始まるドキドキが…あ、始まらないのね。
騎士団長が退任して、従騎士だった副長も退任…結果、空座を誰に任命するか。居ないから俺に押し付け…酷くない、それ。他の分隊長のイジメですやん。休んでる子にやっちゃダメな奴ですやん…どうして短編版より昇進してるねん(メタ)




