三十話 やらかし21歳期・隊長編⑨
公爵家に到着し、中に入ると既に参加者は集まっていた。え、俺ら主賓みたいな感じなんですけど…え、主賓なの。マリアベル様の方が明らかに身分上なのに…挨拶しなきゃいけないの。あ、そういうパーティーじゃないのね。身内だけなのね…身内とは?
ミュゼットとメルはそそくさと離れていった…まあ、恥じらいかな。兄と妹が密着しっぱなしってのもな。仕方ない。
すぐ目に入った数少ない男の参加者、フィネット公爵とアスラーンに挨拶する。セリーヌやレシアを捕まえて婿を紹介とか言ってるし…俺の部下と情報屋を引き抜こうとするのヤメテモラエマスカネ?
その意図を把握してかアリスベル様も参戦して二人を引き離す。フィネット公爵はともかく、アスラーンなんかに緊張しなくていいから。白い結婚疑惑がまだ続くヘタレだからと言い聞かすアリスベル様…身内でもそう思うか、当然だ。
そんな話を聞いてるレシアとセリーヌはミリスベル様の昔のドレスを仕立て直したものを貰ったらしい…恩着せがましい。
未婚時代の衣類を結婚しても持ってるとか無いだろ。売り払って酒代にしてるはずだろ。だいたいレシアはまだしもセリーヌの方が背は高いし大きいから合わんだろ…と思うが口には出さない。
セリーヌはクリーム色のスレンダーラインのドレス…絶対ミリスベル様のものじゃない。アリスベル様のっていうのなら納得する。
同じ様式のドレスを纏っているから…但し濃紫だから色の好みが違いすぎる。何が言いたいかは悟れ…並んで話す姿とか破壊力高いなぁ。アリスベル様、あれで経産婦なんだぜ…まさに魔性。
一方のレシアはイエローのプリンセスラインのドレス…何がとは言わんけど、育ったなぁと思う。長い付き合いだからだろうか、大人っぽくなった姿に少し違和感というか何というか…
「アレクシール、どうよ?」
「くるくる回るな、はしたない…大人しくしておけば上位貴族の令嬢にも見える美少女なんだから慎みを持て」
「びしょ……うん、次から気をつける…」
この前、成人したばかりというのに…レシアは相変わらずである。まあ、そういう関係が心地いいんだけど。というか、真っ赤になって…酒飲んだか?
レシアをソファーで休ませ、マリアベル様とシルディナ嬢へ挨拶に行く。
「アレクシール様、お久しぶりです」
「お兄様…どうして最近来てくださらないんですか?」
「あー…それは…」
怒っていらっしゃる…忙しさもあるが、シルディナ嬢の身体の傷がプールでほぼ目立たなくなっていたってのをレシアに聞いたからってのもある。勉強も頑張っているようだし邪魔しちゃいけないってのも…
いいえ、ごめんなさい。シルディナ嬢がわざとらしく膝の上で身動きしてくるのがもう限界なんだす。ナイトソード抜刀しそうなんだす…
二人揃ってベルラインのミニ丈のドレス着て誘ってやがるとしか思えん。シルディナ嬢は水色、マリアベル様は緑色の可愛いドレス着て…
だからといって手を出したら□イヤルハートブレイカーである。斬首刑間違い無しだわ。
まあ、悲しそうな目をするシルディナ嬢には勝てん。はよファールカップ用意せねばと誓うのであった。
上手い事言って逃亡した。逃亡先にはラスボスが待っていた。黒のマーメイドラインドレスのクリスティーナ嬢である。髪も普段のツインテールではなく盛ってる。何処ぞのキャバ嬢みたいに盛ってる…そしてダイナマッ!
「アレクシール卿……って、何処行くんですかっ!?」
「キジ撃ちに行ってきまーす…」
「キ、キジ?」
ダッシュでその場を逃げ出した。あかん、あれはあかん…綺麗とか可愛いって言葉じゃない。魔性とか小悪魔なんてレベルでもない…女神や、性欲の女神や。二人っきりだったら押し倒してた。オッキシタ(静まれ)
さすが、人気者。凄いぞ、天才的だぞ。将来楽しみだー……ちょっと走ってこよう。というか、プレゼント忘れてたので走って家まで戻って取ってこよう。それまでに賢者モードになれるか、俺?




