二十七話 やらかし21歳期・隊長編⑥
夏は過ぎアブラゼミ…セミファイナルの怖い季節がやってきた9月。貴族学園も騎士学校も再開し、新人研修も終わりに近づく日々…いかがお過ごしでしょうか。お元気ですかぁ?
さて、それはともかく今月末貴族学園で学園祭が行われるらしい。そんなイベントあったかしら、いや無かった。
メルが言うには、クソ王子たちが生徒会長に学園祭の開催を要望…そして強権発動。つまり、やらかした。
どうやら、騎士学校に通うシェリチェ嬢や入学前の聖女様を呼んで和気藹々したいとかいう煩悩に応えたとか…少なくともあのチンパンジー息子懲りてないな。
シェリチェ嬢は原作なら貴族学園に通っているが、どうやら転生者っぽいから騎士学校に通っているし、聖女は本来飛び級で入学しているはずなのだが入学していないらしい。ふむ…何故だ?(おそらく特級呪物のせいですね、分かります)
その為、生徒会長に声掛けられてミュゼットとメルは手伝いで忙しいとか…うーん。生徒会長の話とか原作に無かったから兄ちゃん不安…あ、女の子なのね。知り合いなのね…なら大丈夫か。今度差し入れ渡したる。
本来なら運動会も無ければ学芸会も音楽会すら無い。あるのは卒パくらいなものよ…まあ、貴族令息令嬢が通う場にホイホイ入る機会なんて警備的にも無いわな。今月担当の騎士団分隊の業務増えてそう…俺は応援するが応援には出ないぞ。
というのも…
「小兄様…これ、余りましたから仕方なくお渡し致しますわ」
「なぁにこれぇ?」
「学園祭の入場チケットですわ。勘違いしないでくださいませ…ノルマがあって、生徒はその数を配らないといけませんので仕方なくお渡しするだけですわ。来るか来ないかは好きにしてくださって結構です」
最愛の妹がそう言って渡してきたのだから行くに決まってらぁ。入学式に参加出来なかった恨みもあるし、借りもある。騎士団長は俺には逆らえんのだ。むしろ、チンパンジーが原因で開催するようなものだから率先して警備しろと進言しといた。結果は言うまでもないドン、もう一回叩けるドン。
*
学園祭当日である。よくよく考えれば華星の聖地巡礼である…アレク、わくわく!(絡み酒夫人の結婚式の事忘れてる)
それなりのドレスコードが求められるので騎士の正装でやってきた…マント暑い。まだまだ夏だぜ…
学園門で受け付けを済まし、中に入るとミュゼットが現れた。コマンドは無い…負けイベントかな?
「意外と早かったですわね、小兄様」
「どうした。まるで俺を待っていたかみたいに…」
「……そうですわ。卒業生以外を入れるなら在校生の付き添いが必要ですの。問題を起こさない為にも…残念ながら、小兄様はわたくしが案内しますわ。仕方なくですわよっ!」
メルは先に来たレシアたちを案内しているから、とも言う……マイシスターよ、チケット渡してきた時もそうだが、耳まで真っ赤にして言うと仕方なくとは思えないんだよなぁ…
まあ、ヒロインと聖地巡礼とか俺得だから良いんだけど……ミュゼットさんや、どうして俺の右腕を抱きしめるんですかね。当たってますけど…
「……当ててるんですわ…小兄様は少し目を離すと何処へでも行くでしょう?」
「…否定は出来ないが、当てる必要は…」
「ち、小兄様のナンパ避けですわ。仕方なく、仕方なくですわよっ……そんな格好良い姿で来るのが悪いんですわっ…」
ふむ、格好良い姿…単に正装着て髪にポマード塗りたくってかき上げてるだけなんだが。ベチョベチョになり過ぎて何回もやり直したわ…慣れん事はするもんじゃない。
ははぁん…さては、制服フェチだなマイシスター。俺は緋袴巫女が好きだ…この世界、そんな服無いけど。ぐっすん…
そういえば、先程から「キャーキャー」と周りが騒がしい。あれかな、チンパンジー逃げたりしてんのかな。シェリチェ嬢が追い回しているのかな……俺居ても居なくても問題起きてる気がする。




