二百四十一話 やらかし結婚式準備編・嫁⑥
久しぶりの我が家…まあ、今ではエレーヌさんの家だから我が家というには違う気もするけど、安心感があるというか落ち着いて眠れたのは慣れた空間だからなんだろう。
身の丈に合ってない仕事や生活環境…アレクシールが貴族であんなだからってのは分かってたけど、実際は優秀なくせに無能なフリしてるからロクでもない扱い受けてる。それの尻拭いとか……はバナナ組とかがしてくれてるけど小言はあたしの役目。
アレクシールは「レシアがストレス溜まってるから発散させてる」とか言うけど、どの口が言うか…
嫌われ役してる分、色々と労われているんだけどさ…第四夫人なんてかなり上の地位に据えられてるわけだし。なんだかんだでただの浮浪児が偉くなっているんだから贅沢な悩みってものよ…
とかって前に似たような事を愚痴ったらアレクシールからは朝まで溺愛されるし、他の面々にも気持ち悪いくらい優しくされたから言わないけど。
仕事でもアレクシールと一緒でズルいとかって言う子居ないのが逆に辛い…まあ、アレクシールも仕事中は真面目な時もあるし……
「っと、惚気てる場合じゃなかった…」
今日は貧民街の皆があたしやセリーヌの結婚を祝って色々としてくれるって言ってたっけ。
本来なら、披露宴にも全員参加させろなんて無茶言ってたけど……アレクシール、バカだもんなぁ…
さすがに平民がそんなところに行くなんて理由が必要。エレーヌさんだって尻込みしてるのをセリーヌの親ってのとあたしの親代わりの一人ってので説き伏せたわけだし。
あー…明日が憂鬱。今日はのんびりしよう…
*
朝からご近所さんたちが次々と祝いの品と言って料理を持ってくる……騎士になった時もお祭り騒ぎだったけれど。
それもこれも元を辿ればミリスベル様と先輩が手を差し伸べてくれたから…特に先輩はただ食べ物を与えるだけじゃなくて食べる術を教えてくれた。
ただただ施しをするのではなく、それが新しい職にも繋がっていく…今考えれば、ただただ先輩が食べたかったからって気もするけど、間違いなく悪意は無い……
無いんだけど…
「セリーヌ…そんなに食べるとまたドレス破れるわよ?」
「またって…前のは胸のサイズが小さかっただけで……」
「…嫌味か」
レシアが食事量を注意してくるけど、ウェディングドレスが破れたのは仮縫いの時の話だし、少し小さめに作られたって話していた……決っして、先輩に揉まれて大きくなったわけでは…
そもそも、自分を含め数人はあまり先輩から食べろと勧められていない。勿論、食べるなという事ではなく他の面々が成長盛りであるにも関わらず食が細いのが原因だと思う…自分が一番食べているのも原因だけれど。
先輩が料理を作って食べた人が笑顔になる…その喜びを教えてくれたのは自分や他の子だったと語ってくれた事がある。今は限度があると思えるけれど……太らせる気満々だから。
まあ、そうでもしないと先輩の愛情を十全に受けられないと思う……今のところ、そういうプレイをしてくれるのは自分だけなので。
だからこそ、公式の場でなければ未だに「先輩」と呼ぶ事を許してくれている……むしろ、「ゴブアレクでもいいのよ?」と冗談抜きで言われた事も…
街の人たちにも好き勝手呼ばれているけれど、本来なら不敬罪で処罰されるくらいの大事なのだけど……
時間が経てば経つほど増えていく料理の山……それだけ先輩が慕われている証拠である。けれど、この量どうしよう…
「…さすがに貴族の家になんて持っていけないんだから、騎士団の連中に差し入れすれば?」
「いや、自分たちも一応貴族…」
「成り上がりでしょうが、あたしたち…」
そこはせめて、もっと別の表現にしようよ…事実だけど。




