二百三十九話 やらかし結婚式準備編・嫁④
私めは仕事を終えた後で久方ぶりに王城の自室で過ごす事となりました。とはいえ、他の方々と同様に家族との団欒を行うにも、お父様…もとい国王陛下は外国からの参列者方との懇親会が忙しいわけですので無理なのです。
その懇親会にはミリスベルお姉様やリテラ様は参加出来ても未成年である私めは参加出来ない……というのは建前で、アレクシール様と結婚するにあたり強権を振るった事を咎められないよう遠ざけられたというのが事実です。
他国の賢しい王子たちとかが破棄を叫んでゴタゴタになる可能性がある……アレクシール様がまた成敗して終わるのは目に見えていますが、そんな事になれば結婚式は延期間違いない。
ただ、その他国の賢しい王子たちって甥っ子なんですけど…お父様が孫を可愛がりたいだけなのか、何処かから漏れたアレクシール様たちの話(次回作の攻略キャラ)を懸念しているのか………まあ、誰かの二の舞にならないようにだとは分かっているのです。
ただ、コニーちゃん曰く「初期設定のバッドエンドでは王位争いで片方もしくは両方が処されるんだよ」と……忘れよう。
「マリアベル…失礼しますわよ」
「え……クロスリンデ王妃殿下…」
「テレサベルお姉様と呼んで欲しいものですわね」
突然、部屋に押し掛けてきたのは香水臭いお姉様……もっとも、物心つくかつかないかで嫁いで年に一度会うか会わないかなのでお姉様という感覚は無いのです。
とはいえ、血を分けた姉妹……かつ反面教師。ケバケバしい化粧にだけは手を出さない…クリスティーナ様にお勧めの化粧品を教えてもらっていなければ将来こんな姿になっていたのでしょう……
それはさておき。クロスリンデ王妃殿下もといテレサベルお姉様は沢山のお小言を投げつけてきたのです…
曰く、王女が第五夫人でどうするだの、アレクシール様は兄殺しなのにいいのかだの、このまま王太女になる道もあるだの……内政干渉なのです。
それに、そんな事は散々アレクシール様たちと話し合いました。そう告げると驚いた表情をしていました……アレクシール様が王位を狙うような俗物に見えているんでしょうね…
時折、そう見えるような振る舞いをしていますが王位にはこれっぽっちも興味が無ければ、むしろヴォイドくんが王位に就くまで私めが女王になるような事があれば王配として頑張るとまで仰ってくださっていると伝えると逆に驚かれた…
「あの騎士……お父様が認めた通りの傑物ですのね。繋ぎで王配を名乗る覚悟…欲があるのならすぐにでもマリアベルを推してそうなれるというのに…」
「テレサベルお姉様。アレクシール様は単純なのです…自分が大切だと思うものに対しては親身に接し敵対するものを排除する。口では嫌々仰っていますが、ミリスベルお姉様と王都の治安回復に貢献して聖人認定までされている方なのですよ」
「…確かに、ここ数年アレモニア国の王都は活気付いていますわね。あの騎士がそこまで関与していたとなると……大公爵に値するのかもしれませんわね」
むしろ、アレクシール様が大公爵でなければ誰が大公爵になるんですか…アレクシール様の実母は私めたちの親類だそうですし魔神の血を継ぐ者だと言ったら呆れられました。まあ、荒唐無稽と笑われるのは目に見えてましたけれど…
ですが、この世界の創造主みたいなもの(アレクシール様の説明)のコニーちゃんが言う事ですからそうなのです。
単身で辺境の魔物を粗方討伐して、王都近郊の森も同様に…そして何より殺されかけた私めを助けてくださっているのです。いくら強いといえど近衛より数でも実力でも上であった暗殺者集団(現バナナ組をかつて離反した一派)を数秒で壊滅させた……
それが数年前。今では書類業務で体が鈍ったと言いつつ、毎日団員たちを打ち負かして金貨を大量に縫い付けた服を着て平然としている……上に少し前までは夜の営みをほぼ毎日複数人としていたと伝えれば「あの騎士は人間なの…」と返されました。だから魔神じゃないんですか?




