二百十五話 やらかし結婚式準備編3
結婚式に向けて、六月に入って次々と貴族連中が王都入りしている。それによるトラブルも急増…
ちょうど一年前の六月も大聖堂にて沢山結婚式あって大変だったわけですよ。その前も、そのまた前も……その原因は聖女。聖女に祝って貰えるなんて幸せって事ですよ……あれ、今度は聖女を祝うってので増えてる気もする。
…まあ、それも俺のせいなんだとは言わない。そもそも大半の貴族連中がロクデナシなのだ。切り裂き公爵とかペリドッドとかロクな事してない。
従って、第六分隊は王都巡回で忙しい。第一、第二分隊にも応援頼むくらいに…貸しとかほざいてるが、俺に対する借りの方が多過ぎるのよ。というか、通常業務だボケェ。
そんな借りの多い第一分隊。隊長はエンディゴ・サンバートンという仰々しい名前のオランウータンである。なお、右目に大きな刃物の傷痕がある……魔物と戦って出来た傷ではなく夫婦喧嘩でつけられた傷である。奥さんの方が騎士団入ってくれないかと思う。きっと最強格になれるもん。オランウータンに勝てるのはごく少数だから第一分隊率いてるんだし…
それを支える副隊長は類人猿。緑の帽子が似合いそうな面長髭野郎のジルート・オルディンである…見た目だけなら団長副団長でもいいかもしれないが、脳筋代表である。力はあるがいかんせん頭の中はキノコでも育成しているのか…あるいはお花畑か。
第一分隊の騎士連中も似たり寄ったり。だから、優秀な孤児院の子を従士に付けたい隊の筆頭…そんな脳筋連中に教会や王城の警護を任せた日には色々壊しまくって賠償で騎士団が経営破綻する。だから、通常業務で十分…むしろ、王宮騎士団の面汚しにならないよう大人しくしとけ。
「おいおい、それはないだろうアレ坊。ワシたちが活躍せんでどうする」
「うるさい、オランウータン。そこら辺の空樽でも投げてろ」
「ガハハハ」
オランウータンは言い返せないようだ。酒樽壊して回ったのコイツか…分かってたけど。むしろ、こいつしか居ない…隊長がこんなだから第一分隊がどうしようもないのである。
とりあえず、第一分隊には当日の王城周りを重点的に巡回。後、面倒な貴族に空樽を投げつける仕事を与えよう……むしろ、詰めて水路に流す方が楽か。配管工業務も押し付けよう(だって類人猿だし)
第二分隊は折れ曲がったカイゼル髭の隊長であるエフォート・プルアギス…髭野郎多い。時々、第一副隊長と間違えそうになる悪類人猿である。紫色の帽子が似合いそうなのは言うまでもなく…
一方、副隊長はくたびれたやる気なさそうな無精髭のイケおじ、ルイード・ブルテナーク…この数少ない比較まともな感じのする昼行灯おっさんが事務方やる分まだ手のかからない分隊ではあるが、悪類人猿が貴族プライドの塊。総合してクソめんどくさい。
正直、話したくもない…とつい先日までは思っていたが、今や俺の方が貴族としては格上。つまり、小言言う側になったのである…それもめんどくさいけど。
第二分隊は大教会周辺の警備に当てる事にした。貴族プライド高い分、他の貴族に揉まれる事も必要だと思う…群がって結婚式に入れないで騒ぐであろう強欲貴族との場外乱闘にご期待ください。
「という事で、第六分隊は通常の巡回。第一、二分隊はその補佐兼各所の巡回強化として動いてもらう。ここまでは異存無いな?」
「あったところで暴力で従わせるくせに…」
レシアはよく分かっている。むしろ、ほぼ通常業務しろと遠回しに言っているだけなのよね。六月は結婚式多いからこのような配置はいつも通りなのである…
問題はここから。特別に呼び寄せた第三、四分隊と残業の第五分隊の取り扱いである。緊急召集によって士気は低いのは仕方ない…が、大公爵襲名とか一大国事に不参加とかする方があかん。やる気に満ちてないのはいつもの事だが、たまには俺の為に働け単細胞である。




