二百十一話 やらかし結婚アン編
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アン。
原作未登場。以上。
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「なんですか、それは(ぷんすこ)」
ご主人様の片付けを終えて食堂に戻ったら、ご飯食べ終わってました…それはいいんです。どうしてご主人様がぐるぐる巻きにされてるのか問いただそうとしたら、そのままご主人様の膝の上に座らされて変な話をされました(ぷんすこ)
「だって、出てないもんは仕方ないべ。そもそもミュゼットが辺境のど田舎に行ったのもエルヴァカがやらかした所為で、俺と会う事すら本来無かったんだぞ?」
「そういう意味では、最後の最後にええ事したんやなあのバカ王子たち…」
ご主人様がアンは出てきてないから本来どんな風に生きてたか知らないって言いました……本来も何も、あの村でいいように弄ばれて死ぬか野垂れ死ぬか以外にないじゃないですか。
そもそもです。ご主人様が前世とか変な事を言い出しても、昔のご主人様の話なんて知らないわけですよ。そこに本来がどうとか、本当ならどうとか聞く必要ありますか?
ご主人様は何か勘違いしているんです。アンだけじゃなく、皆様にとってご主人様で旦那様なのは今のご主人様であって、他はどうでもいいんです。
そりゃあ、皆様の事は昔から知っていて助けたいって同情もあったかもしれませんし、自分の手垢付けたいって気持ちが何処かにあったかもしれませんよ。むしろ、手の届くところにあるんだから手を伸ばさないわけないじゃないですか。ご主人様が…
でも、アンは違います。同じ境遇の浮浪児や孤児だって沢山居たって聞きました。ご主人様が助けた人たちです…
それは全てご主人様の意思でやった事です。それを本来のご主人様がしていましたか。そんな話ありましたか?
そう捲し立てました。
「…アン、お前も転生者だったのか?」
「違います。でも、ご主人様より現実は分かってるつもりです(えっへん)」
「……世界のバグとちゃうか。アン…」
そんなよく分からないものじゃありません。アンはただ、ご主人様の悲惨な姿をこの前一緒に眠った時に夢で見ただけです。
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それは、王子命でご主人様が爵位剥奪の上、王都追放されミュゼット様たちが奪われた後の話です。
ご主人様は辺境伯様から男爵の爵位を得てカルン村周辺を治める事になった負け犬でした。そのお世話をする事になったのがアンです。
といっても、ご主人様はミュゼット様たちを奪われて気力も無い状態…カルン村の悪しき風習も正す事なく腑抜けたご主人様を沢山お世話して立ち直らせる夢でした…
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「何そのゼ◯伝的敗北ルート…オカリナ欲しいなら買うよ。あるかどうか知らんけど」
「兄さん錯乱すんなし…まあ、王子命が『ミュゼット、俺たちの女になれ』とかならあったかもしれん話やろ…抵抗出来ず純潔散らしたミュゼットはんらがどんな末路辿るかくらい想像出来るわ。その時にはこの王国滅びてるんやろうけど…」
ご主人様とシェリチェ様が変な事を話し始めましたけど、どうでもいいです。そんな空想するならきちんと休んでください。学校やお仕事に行ってください。
だいたい、ご主人様を縛り付けてお風呂にも入れないのはどういうつもりですか…やっとご主人様の匂いの良さに気付いたんですか?
そう伝えると、ご主人様は不思議な顔をされました…
「…アンって俺の体液の臭いが好きなの?」
「体液って何ですか…いつもオレンジみたいな良い匂いさせてるじゃないですか」
「……そっちですか。うん、そうだよな…体臭とかなわけないもんな。今度、同じ匂いの香水とか買ったる」
…ご主人様は女心分かってません。だいたい、匂いのするのならこの前くれたじゃないですか。マリアベル様には手を出さなかったのは分かりますけど、シルディナ様に手を出してどうしてアンには出さないんですか、このへこたれ(ぷんすこすこぷん)




