二百三話 やらかし結婚シェリチェ編①
*
シェリチェ・ホーウェン。
王宮騎士団副団長の娘にして、ロデルルートの悪役令嬢。
但し、その攻略はミュゼットの体力を鍛えておけば簡単。「誰だ、育成要素なんぞ入れたのは…」がプレイヤーの共通認識。その変なシステムの犠牲者ともいう(なお、続編では育成要素は廃止された)
悪役令嬢とは名ばかりで、騎士学校ではなく貴族学園に進学したにも関わらず将来の騎士団長を自称するロデルに対して侮蔑している節があり、体力を上げて卒業までに認めらされたらクリア出来るお手軽ルート化している(但し脳筋キャラのロデルは人気薄)
また、父親が副団長ではあるが元は騎士団長の従者であり、成り上がりという事もあり悪役令嬢の中での地位は低く取り巻き臭もする(悪役としては見てないプレイヤーも多い)
ロデルルートグッドエンドでは、貴族学園を退学し未来の王都の平和を憂いて強力な力のある貴族の住む地へ旅立ったらしい。また、ノーマルは例の如くメルモニカとの友情エンド。
*
兄さんに朝ご飯を食べさせながら、責められとる……兄さんの予想通り、うちらの家庭教師は有能やった。おそらく前世持ちやったろうけど、確かめたわけでもないしきちんと家庭持っとるからかき混ぜるつもりも無いんで言わんけど…
まあ、うちかて四人の性格改善とか色々やったのは事実や。性格歪んでいく様を横で見せつけられるような事はしたくなかったし…
何より、原作以前にせっかく友人になったんや。性悪になって嫌われるより幸せになって欲しかったって気持ちはあった。相手が性悪になっていったんは予想外やったけど。
「とりあえず、ミスティアはんの縦ロールをやめさせたりするところから始まって、脅して脅して勉強に向き合わせたんは事実や。外見も中身も鍛えようとしたんは認める。でも、今のが素やで」
「…まあ、初めて挨拶するまで名前と顔が一致しませんでしたわ、ミスティア様は特に。その後の言動ですら驚きの連続でしたし…」
「その分、ミュゼットが悪役令嬢みたいな容姿になった件」
兄さんは余計な事言うてミュゼットはんにウインナー詰め込まれとる…口は災いの元やで。どう見てもイチャイチャしてるだけにしか見えんけど…
ウチかて、色々努力はした。レミルーファはんを見習って天パ気味の赤髪をケアして本来ただのロングヘアだったんをポニテにしたり、そばかす顔にならんよう肌の手入れとかやった。
それでも、あのチンパンジーはウチの事を下に見て婚約者としての心構えとか無かった……まあ、それは終わった事や。原作より早くある程度の見切りつけてたからこそ騎士学校に進んだんやし…
せやかて、ウチだってやってしもたって罪悪感は多少なりともあった。ミュゼットはんの障害になる面々をパワーアップさせてしもたと後悔もした…
そんな時、違和感を覚えた事件があった。第四王女襲撃事件や…あんまり表沙汰にはならんかったけど、それは王宮騎士団副団長の娘。コンプラも服務規程も守秘義務もガバガバやから家でも話題に上がった。
その時まで、自分と友人になった四人の事で手一杯で忘れてた事件……でも、それは未遂で終わった。ある騎士の活躍で…
それは言わずもがな、目の前に居る兄さんや。
「まあ、シスコンとブラコン拗らせて根底から全部台無しにしとる時点で原作も二次創作も無いで……だいたい、原作なら最長三年もあるわけやし卒業後に結ばれてハッピーエンドのはずが、たった一年ちょいで結ばれたわけやし」
「俺だって、それくらいの猶予期間あると思ってた……」
「わたくしたちの年を考えてくださいまし。小兄様と結ばれなければ各実家から見合いだの何だのとせっつかれますわ…あの機会があったからこそでしたけれど」
まあ、原作準拠なら逆ハーレムは初代には無かったわけやし、その逆でも二桁なんてのは王族ですら出来るか怪しかったわけやし…
それが出来たんも王女命…だけではなく、公爵でも王子でも木刀で躊躇いも無く殺すような兄さんを多人数で監視するって方便を使ったお陰なんやけど。




