百九十七話 やらかし結婚クリスティーナ編①
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クリスティーナ・トリスタン
叔父を殺され犯人を探していたが、その犯人に襲われて片目を失った上、恐怖から黒髪が白化した悲劇の少女。
かろうじて犯人を退けたものの取り逃がし事件は迷宮入りとなる。
その後、心身に負った傷の影響もあり人との関わりを避ける為に男装をするようになる。
メルモニカが騎士団見学で負傷した際には、騎士の肩を持つ(主に次期騎士団長を自称するチンパンジーが貴族学園に行ったが為に、貴族学園の連中が騎士学校を見下していると思っていた為)が、やがてミュゼットとは誤解が解けて親しくなる。
原作屈指のイケメン男装大人気キャラ。その為、「どうしてクリス様の攻略が出来ないの」と一部の声が上がったとか。
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「…えっと、誰の話ですか。それは…」
「わんこじゃない一匹狼クリスの話……まあ、そんな事はいいんだよ。それよりも俺はクリスの叔父さんが殺された事を知っていた。それも事件が起きる前からだ……つまり、俺は見殺しにしたんだ…」
「アレクシール卿…」
セリーヌさんまでの普段通りの口調とは異なり、いつになく真剣に語るアレクシール卿が何故、前世の事を話したか……アタシだってバカじゃない。アレクシール卿はアタシに罪の告白をしたかったんだとすぐ分かった。
叔父さんの事をずっと気に病んでいるのは痛いほど分かっているから、その姿を見て怒りなんて当然湧き上がるはずもなく…
「ちょっと待ちいな…兄さんがそう思うのは仕方ない。でもなクリスティーナはん…原作でも資料集でもクリスティーナはんの叔父を殺した犯人はおろか、いつどうやって殺されたかなんて何処にも語られてなかったんやで。むしろ、結局は取り逃がして事件は迷宮入り…」
「…でも、知ってたのに見過ごしたのは俺の責任だ。ましてや、クリスが狙われるまで何も出来なかった…」
「…アレクシール卿。大丈夫ですよっ…アタシ分かってますから。あの時だったら恨んでたかもしれませんけど、騎士団の仕事を手伝うようになって、アレクシール卿が一番頑張ってたって知ってますし…」
事件当時に聞かされてたら恨んでいたかもしれない。でも、事前にでも見ず知らずの騎士に「前世があって知っている。この先いつか殺されるから外出するな」なんて言われても信じる人なんて居ない…
ましてや、いつ起こるかも分からない事だなんて……仮に四六時中護衛されていても商人にとっては醜聞にもなりかねない事。そして、犯人が公爵だなんて思いもしなかった。
事件の事は正直未だに憎い。でも、叔父さんが無事でアタシも関わらなかったらアレクシール卿は犯人に辿り着けたのだろうかと…
その疑問をぶつけてみた。
「…ですわね。いくら小兄様といえども解決出来たのはクリス様をストーキングしていたからこそでしょうし」
「ストーキングとか、ミュゼット酷くね?」
「事実じゃないですか。だいたい、今なお騎士団の連中は腑抜けが多いから苦労しているんでしょう。小兄様たち数名で回しているようなものでしょう?」
次第にアレクシール卿がミュゼットさんに罵倒されつつあるようになってきた……
3人が言う原作のアタシもミュゼットさんと仲良くなるようだし…この兄妹にアタシは色々救われたんだなぁって思う。
アレクシール卿が居なかったら、傷を負って両親をもっと悲しませていたなんて当然だし…
ミュゼットさんが居なかったら、第七夫人として傍に居られなかった。
きっと、原作のアタシもミュゼットさんに出会えて良かったと思ったんだろうけど、それ以上にアレクシール卿が居なかったら……
傷はともかく、とても残念な女の子になっていたんだろうなぁ…リテラさんみたいな理由もないのに男装はないよ。




