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百九十話 やらかし結婚ルチルレート編②

メルみたいに抱きついてキス責めしなくてもアレクは分かってくれた。でも、やった。


席に戻ってくると、同時に暗部…バナナ組の屋敷付きが書物を渡して天井裏に戻っていった。書物は前世に関連する内容のもの…


スタンティーナ家にも前世を持つと言われる人間は時折現れている。祖先の中にも何人か居た。その手記や考察記をスタンティーナ家から持ってきてもらった。



「何を読んでるんですか?」


「実家の年寄りの日記…ラティーも見る?」


「…いいんですか、大事なものじゃ…」


興味津々のラティーに書物を一つ渡す。そもそも、これらは大事なものじゃないただのゴミ。


特に大した事も書いてない。ハーレムウハウハとか、女王様ブヒィとかロクでもないものが多い。読んだ人が口を揃えて言うのは、これはスタンティーナ家の忌まわし記。


アレクみたいに前世持ってても社会の為人の為にしたってのは居ない。むしろ、あの愚王子たちのような事ばかりしてた…もしかしたら、元弟もこれに悪影響を受けたのかもしれない。スタンティーナ家の伝統を作り上げた連中のものだし。


ラティーも中をパラパラ見て「うわぁ…」って声が漏れてた。忌まわし記はやっぱり忌まわし記。でも、アレクが喜びそうな事が書いてあるかもしれない…アレクの好きそうな下着の柄とかご飯の作り方とか。




暗殺部隊の隊長になって初めての任務はカノーラ辺境伯家の偵察だった。長男も次男も貴族学園はおろか、騎士学校に進学せず次代の辺境伯家への不信感が高まり、一部の貴族からは独立の兆しと捉えられた為の調査…場合によっては一族暗殺。


おあつらえ向きに長男・アーガイル(ゴリラ)の結婚式があり、僕は父の名代として赴く事になった。


そこで出会ったのは人形のように可愛い2人の女の子と…



「貴様、先程から何をしている。間者か…処すぞ?」


「なんなん、この子………え、暗殺に来たの。まさか、ミュゼットを?」


「貴様っ、何故暗殺の事を!」



すぐに僕が暗殺者と分かった茂みに隠れてバナナを食べていた男の子。


最初は僕と同じように派遣された他の貴族の息が掛かった間者だと思った。それならば話がつく…辺境伯領は僻地だけど、大昔は一国として栄えた豊かな土地。魔物が多い反面、倒せる力があればそれすら資源になる…それを羨む貴族は多い。


だけど、暗殺の事を知られたからには生かしておくわけにはいかない。太ももに括り付けてあったナイフを素早く取り出して斬りかかる…でも、相手はバナナで応戦してくる。ナイフ対バナナ…でも、弾かれて擦りもしない。


渾身の威力で放った一撃も脇腹を極浅く斬った程度……他の大人たちを押し退けて隊長になった威厳なんて吹っ飛んだ。明らかに格上の相手…



「何なんだ、貴様はっ…」


「俺か、俺は味噌っカスだっ! 水色縞パン処す子ちゃんっ!」


「………は?」



ナイフを素早く取り出した一瞬でパンツの柄まで見た動体視力……それで悟れた。圧倒的強者と相対する恐怖、それに恥ずかしさとこのままでは辱めを受ける恐怖とで、気付けば逃げ出していた。


そして、後で冷静になって初めて抱いたのは味噌っカスを自称する男の子への憧れ。つまりは初恋だった…




今思えば、アレクが変なのは前世があったからだと改めて思う。そして、ミュゼが居たからあの時でもあんな強さがあったのだと…


そもそも、ミュゼが誘拐されて居なかったら結婚式も小規模なもので僕が偵察に行く事もなくアレクと出会う事も無かった。そして何も思わずミュゼを殺していた……暗殺者としてはそれが正しいかもしれないけど、僕は今の自分も生活も満足している。


それにしても、忌まわし記には良い事何も書いてない…後でアレクにも読んでもらおう。

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