百八十四話 やらかし結婚編119
ミュゼット曰く、「辺境伯の直系唯一の孫であるコニーちゃんが嫁に出るわけないでしょ」との事…そりゃそうだ。俺たちみたいなのが特殊で、あくまでも貴族社会なのだから当然である。杞憂に終わったならそれでええ…おそらくメガネのところの子と結婚するんだろうさ。メガネのところの子、居るか知らんけど(実家に興味無かった不幸者)
そんな無駄話した後、胃もたれしそうなバターたっぷりおからのパンケーキの夕食も終え食後の運動という名のダンスタイムである。やっぱりマーガリン派だわ、俺…後、パンケーキだけじゃ足りない。目玉焼きとベーコン、ソーセージくらい欲しかった。
「まったく…ミリスベルお姉様にも困ったものです」
「まあ、マリアも酒を飲み出したら分かるさ……誕生日にはとびきりの酒用意しておいてやる」
「お酒より、私めはアレクシール様の寵愛を賜りたいです」
マリアとダンスの練習…練習はファーストダンスに含まないという謎理論である。まあ、身長差が著しいので、ぶっつけ本番は無理ですわ。
理想的なダンスには程遠い…リテラが男装しても違和感無いくらいそれなりに身長高いのも比べる要因にはなってるのだが。野性の野猿が高身長なのが一番悪いんですけどねー…
それはさておき、まだ寝てるミリスベルに怒っているマリア。ミリスベルから酒取り上げたら何も残らないんだから困ったも何も無いと思う…だってそうだろ。アスラーンの事を別にしても、学生時代は酒場に入り浸り。王都で炊き出しはしていたが、その分王族としての書類仕事をやっていた形跡無し…
その炊き出しでさえ、今やミリスベル無しでも回る程の一大事業になっていて、伯爵夫人としても結局ロクな事していない。原作とも大きく乖離しているただの酒飲み夫人である。
最近、やっとこさ王族として仕事復帰してはいるがティアたちが有能過ぎて何処まで汚名挽回出来るか分からないし……返上は無理。酒飲み夫人から酒飲み王女に返り咲くという意味での挽回である。
「ですが、まずはミリスベルお姉様とリテラ様を寵愛してください。アレクシール様は幼い方が好きかもしれませんけど…」
「…まあ、婚期とかあるのは分かってる。でもな、出産適齢期とか考えたらミリスベルたちでもまだ早いんだぞ」
「それでも、アレクシール様はレシア様にも手を出されましたよね?」
そこを言われると痛い……でも、出さなきゃ出さないで怒るやろ。この世、子孫残せたらとかいう思想も強いのよ。だから王妃も俺の義母も故人なわけだし…
無論、そんな事俺は認めない。でも、ゴリラ嫁の出産直後に助けようとしたら当人にぶん殴られた記憶……コニーちゃんを片親にしたくなかった俺の親切心は見事に砕かれた。下顎と共に…すぐ治したけど、年上女性に対するトラウマになったわ。
そんな早生まれの俺よりちょっとだけ年上で妹にも心配されるミリスベルだが、もう覚悟は出来てる。むしろ、全部暴露してる分、拒否された時の俺のダメージまで考えてる。その時はアンだけ連れて傷心旅行する予定…
暴露とか隠して、やんわりとマリアに伝えてみた。
「その時は、アンだけでなく私めやシルディナ様も連れて行ってください。癒しくらいにはなります」
「…癒しじゃなく卑しになりそうだからアンのみにしたいねん」
「そうしていただきたいから尚更です…もっとも、ミリスベルお姉様やリテラ様が拒むなどあり得ないと思いますよ。14人も嫁が居て、不利な立場でも婚姻を望んだんですから」
分かってる…こんな俺の嫁になりたいという少女たちの強さは。普通なら忌諱する人殺しって分かっているわけですよ…ましてや立場も立場。
傷心旅行じゃなく、新婚旅行が考えなきゃいけないよなぁ……纏まった休み取れるかな。三ヶ月くらい…各所と相談しよう。
帰省が無理なら海に行こう。海産物楽しもう…地元民に干物の技術伝えよう。




